日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

VW社の不正ソフト問題を考える

2015年10月24日 16時44分48秒 | 日々雑感
 独メルケル首相は、ギリシャ問題、難民問題、ここに来てフォルクス・ワーゲン社(VW)の不正問題と体が休まる時が無い。VWは独の一自動車企業に過ぎないが、世界を代表する企業であり、独の技術の高さと信頼性の高さを象徴する企業であるからだ。また独の経済の好調さを支える主要な企業であるためメルケル首相としても一企業の問題として放っておくわけにはいかないだろう。
 不正発覚のきっかけは、米国ウエストバージニア大学の研究だ。2012年非営利組織「クリーン輸送のための国際会議」(ICCT)の依頼で、ディーゼル車の排気ガスに含まれる窒素酸化物を測定することになった。目的は欧州車がいかに環境性能に優れているかを立証するのが目的であった。
 ディーゼル車の排気ガスにはガソリン車に比べ窒素酸化物が多く含まれる。このため、排ガス浄化装置を付加し、窒素酸化物を除去することが行われる。しかし、この付加により燃費が損なわれることになる。そこで、排ガス浄化装置を検査時には動作させるが、一般走行時には休ませるというのが不正の内容である。最近の車はコンピュータで制御するため、すなわちソフトウエアで制御するため不正ソフト問題と称されるわけだ。
 アクセルやブレーキの動き、速度の変化、ハンドルの動きを検出し、検査時と一般走行時の違いを人工知能で判断していると思っていたら、単にハンドルの動きの違いで判断していたようであり、ある意味がっかりした。最近の人口知能の発展は目覚しく、ついに車にまで適用されるようになったかと一人合点していたが、とんだ勘違いであったようだ。検査時にはハンドルの動きが無いというだけだった。
 ディーゼル社への米国での排ガス規制はガソリン車と原則同レベルと厳しい。「燃料に関わらず、有害物資の排出は一律に規制する」は、シンプルを好む国民性の表れだとのことだ。
 VW社の排ガス規制をめぐる不正問題で、歴代経営陣が関与した疑いが深まっている。独DPA通信は関係者の話として、VWの開発部門が2005年~2006年に導入を決めたと伝えた。苦戦していた米国で、コストを抑えながら厳しい環境規制に対応するため検討されたという。米国では2008年以降に不正ソフトが搭載されていた。
 ドブリント独運輸相は、10月15日、独国内の不正車両約240万台のリコールを命じた。不正車両のうち排気量2ℓのディーゼル車は「不正ソフトの修正だけで十分」、それ以下の排気量の車はエンジンの部品交換などが必要と指摘した。ヨーロッパでは、米国に比べ基準がゆるいためそれでよしとなるのであろうか。
 米国におけるリコールの内容は報道されていないが、不正ソフトの交換だけで済むはずが無い。走行時にも安定して機能する浄化装置があるのだろうか。開発済であるならば、交換で済むが、無ければ車自体を廃棄しなくてはならなくなる。
 不正が疑われる販売車両は世界で1100万台にのぼるらしい。費用は膨大な額になるだろうが、それより絶大なる独の信頼性を失墜させた影響がはかりしえない。(犬賀 大好-175)

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