日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

G7のテロ対策は北朝鮮対策か

2017年06月24日 09時24分38秒 | 日々雑感
 2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件は、当時の米ジョージ・ブッシュ大統領がウサマ・ビン・ラディン率いるイスラム系過激組織 ”アルカイダ” の犯行と断定し、アフガニスタン戦争やイラク戦争の開始の口実となった。

 そして、アメリカをはじめとする多国籍軍はアフガニスタンやイラクをテロの温床とみなして攻撃したが、イスラム過激派はますます欧米諸国に敵意を燃やして、より激しいテロ活動を繰り広げるようになった。

 2013年1月には、アルジェリア南東部の天然ガスプラントがアルカイダ系武装勢力によって襲撃され日本人10名を含む多数の人間が殺害されることも生じた。

 当初はイスラム系過激派と先進国との対立の図式であったが、最近は様子が変わってきた。今年6月始め、イランの首都テヘランの初代最高指導者の故ホメイニ師をまつる廟が武装集団に襲撃された事件で、イランの革命防衛隊はテロにサウジアラビアが関与していると非難した。

 イランは9割がシーア派であり、サウジアラビはスンニ派が多く、両国は現在国交断絶状態である。このテロ事件はイスラム過激派の白人攻撃ではなく、イスラム教徒の中でのテロ事件だ。

 また、今月19日未明には、ロンドン北部でイスラム教のモスク(礼拝所)近くにいた歩行者にワゴン車が突っ込む事件が起きた。英国のメイ首相はテロと断定し、警察は47歳の白人をテロ攻撃や殺人未遂などの容疑で逮捕した。イスラム過激派による相次ぐテロを発端に、憎悪の応酬が宗教、民族に関係なく激しくなってきた。

 テロ発生の根本要因は経済的な貧困だと確信するが、経済格差も見逃せない。先進国と途上国との格差だけでなく、先進国内の格差も深刻化しており、貧困生活者の不満と敵意がテロに転化していくのだ。イスラム教圏は、概して自然環境が厳しく、経済的にも貧しい。貧しさから発生したテロが次第に憎悪となり、世界中に広がりつつあるのだ。

 もうひとつ技術革新の影響も大きい。インターネットはテロ組織のネットワーク化と新たなテロリストの勧誘に大きく貢献しているようだ。こうした環境の変化がテロの激増につながっているのは間違いないだろう。しかしこの要因はテロ活動を増幅させる二次的役目であり、あくまでも貧しさが根本原因だ。

 5月27日閉幕した先進7カ国(G7)首脳会議は、「テロ及び暴力的過激主義との闘いに関するG7タオルミナ声明」を開幕初日に採択し、国際組織犯罪防止(TOC)条約をはじめとするテロ対策の実施に向けた協力強化を打ち出した。

 声明では「テロと過激主義への対策は、G7にとって引き続き主要な優先事項だ」と強調し、テロを未然に防ぐため、当局間の情報共有や途上国などでの水際対策の取り組みを強化することを盛り込んだ。テロリストの資金源を絶つため、テロリストを支援するネットワークに狙いを定め、G7が連携して金融制裁を実施するとした。

 しかしこの声明は、始めにテロ集団ありきであり、そのテロ集団を撲滅すればすべて解決するとの立場である。テロの根源は貧困であり、世界のあらゆるところに根源があるとの視点が欠けている。

 貧困がテロの温床になっているとはずいぶん昔から指摘されているが、それは解消されるどころか、グローバル化の進展と共に、ますます悪化している。テロ撲滅を叫ぶのであれば、グローバル化がもたらす負の影響、すなわち貧困の拡散をまず議論すべきであろう。

 どうもG7の首脳には北朝鮮の国家によるサイバーテロが意識され過ぎているような気がする。5月21日のロイター通信は、 北朝鮮の主要な工作機関にはサイバー攻撃を専門に行う特殊部隊が存在し、既にサイバー攻撃の一部を実施した可能性があると、指摘している。

 国家が主導するテロは影響も大きく撲滅対象であることには当然であるが、犯人は特定されており、解決手法も明確である。しかし、貧しさが原因となるテロは根が深く、犯人は不特定多数である為、解決も簡単ではない。しかし、G7の首脳であれば、何らかの言及はすべきであろう。

 折りしも、イラク北部のモスルで過激派組織の「イスラム国」(IS)の崩壊が間際に迫り、組織の戦略がテロの拡散に変更されたとの話も聞かれる。貧しさがあればそこはテロの温床となる。2017.06.24(犬賀 大好-349)

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