日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

世界の原発建設で日本の経験は生かされない!

2019年01月19日 09時46分15秒 | 日々雑感
 経団連の中西宏明会長が今年元旦に行った年頭会見で、電力会社が利益を上げられていない商売で設備納入業者が利益を上げるのはすごく難しく、今後原発をどうするか真剣に一般公開の討論をすべきだと思うとの主旨の発言をした。

 また、今月15日の会見では、東京電力福島第1原発事故後に停止している原発について再稼働をどんどんやるべきだと述べ、原発の新設や増設も認めるべきだとの認識を示し、エネルギー政策の在り方を巡り国民的な議論を呼び掛けたそうだ。

 これらの発言を聞くと、原発は電力会社や設備納入会社の利益のために、どんどんやるべきだと聞こえる。中西会長は日立製作所の会長でもあり、日立は日本の代表的な設備納入業者だ。日立の会長としては当然の発言かも知れないが、経団連の会長の発言としては将来展望抜きの近視眼的言い分だ。

 原発の存続に関してはこれまでかなりの議論はあったが、お互いに水と油の主張を繰り返すばかりで、まとまる気配は無い。中西会長が呼び掛けたところで進展は無いだろう。

 安倍政権は、福島第1原発原事故の後、日本国内での原発事業の低迷打開と日本の原発技術の維持を目的に原発の海外展開を目指し、成長戦略と位置づけた。

 さて安倍首相は今月10日英国を訪れメイ首相と会談した。そこで3月末に迫る英国の欧州連合(EU)離脱をめぐり、合意なき離脱の回避を目指すメイ氏に対する支持を表明したが、日立が英国で手掛ける原発の新設計画は今回の首脳会談では取り上げられなかったようだ。

 この計画は原発2基の新設であるが、原発の安全基準見直しで総事業費が最大3兆円程度に膨らむ見通しになったが、英国政府の追加支援を期待できないと、日立は計画の中断を検討しているのだ。

 追加支援に関しては、担当者レベルで交渉が進められていた筈であるが、会談で話題にならなかったと言うことは、交渉が旨く行っていないとの意味であり、英国での原発中止は決定的であろう。

 原発の輸出計画は、当初、トルコ、べトナム、台湾等、新設の計画が持ち上がり大成功と思われたが現在いづれも中止に追い込まれている。建設費の高騰が主原因であり、トルコの場合4基2兆円計画であったが、福島第1原発事故の経験を踏まえた安全確保のため2倍の建設費となり断念となった。

 一方、ロシアは、2017年にパラグアイ、ザンビア、カンボジア、バングラデシュ、ウズベキスタンの5カ国と協力の枠組み協定を締結したそうだ。また昨年7月時点で全世界の原発建設分野のシェア67%となる35基の原子炉建設契約締結しているとのことだ。

 中国においては、国内原発は花盛りであり、2030年までに100基を超える原発の稼働を計画し、同時に原発の輸出も積極的に進めている。中国はパキスタンに原発を建設しているほか、昨年はケニアとエジプトとの間で原発の輸出に関する覚書に署名したそうだ。また、ルーマニアやアルゼンチンからも注文を取り付けており、中東やアフリカ地域の市場を集中的に開拓しているとのことだ。

 韓国では、2009年に受注したアラブ首長国連邦の原発1号機が昨年3月に竣工した。サウジアラビアは2040年までに17.6GW規模の原発16基を建設するという長期プロジェクトを始めたそうで、韓国のプロジェクト参加への期待は大きいようだ。

 日本の全ての原発輸出計画が頓挫する一方、世界はロシア、中国、韓国の安価な原発が占めようとしている。世界一大きな原発事故を経験した日本の反省は何処にも生かされない。福島第1原発事故は想定外の特異例として忘れ去られる運命だ。このままでは近い将来福島を上回る事故が何処かで発生するであろう。2019.01.19(犬賀 大好-513)

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