日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

トランプ人気を支える人々

2017年06月14日 09時25分43秒 | 日々雑感
 6月8日、連邦捜査局(FBI)元長官のジェームズ・コミー氏が上院・情報特別委員会の公聴会に出席した。コミー氏は、ロシアとの関係をめぐって辞任したマイケル・フリン前大統領補佐官について、トランプ大統領から ”この件は放っておいて欲しい”などと言われたとし、これを ”大統領からの捜査中止の指示だと受け止めた”と証言した。これによりトランプ大統領は司法妨害をしたとして窮地に追い込まれた。

 この出来事が無くても、トランプ大統領の支持率は低迷している。トランプ氏が選挙運動中に約束したことを大統領令として矢継ぎ早に交付したが、大くが頓挫しているのも原因であろう。例えば、オバマケア撤廃の命令は議会の承認を得られていない等である。

 ロイター通信などが5月19日に発表した世論調査によると、トランプ米大統領の支持率が38%となり、1月の就任直後も低かった支持率を更に下げたそうだ。支持率は歴代大統領の中でも最低と言われている。しかし、逆に、選挙運動中に公約したことに対しても、大した成果を上げられないのに、それでも国民3人に1人以上が相変わらず支持しており、驚くべき現象である。背後には熱烈な支持者がいると思われる。

 トランプ氏の人気は特に米国のラストベルトと呼ばれる地域で高いそうだ。ラストベルトとは、アメリカ合衆国の中西部地域と大西洋岸中部地域の一部に渡る領域を表現する呼称であるとのことだ。この地域ではオハイオ州、ケンタッキー州等が有名であるが、石炭の産地であったことから、その昔鉄鋼業で大繁栄した。しかし、現在この工業地帯の経済が悪化したことによりこの名称、すなわち錆びついた地域、ラストベルトが幅広く使われるようになったのだ。

 これは、1970年代、国際競争が激しくなり、鉄鋼業関連の製造業者はこれらの地域からアメリカの他の地域やメキシコに工場を移転してしまったのが原因だ。現在これらの地域では、工場閉鎖にともなって、多くの人々はこの地域を去り、残された人々は貧困と薬物汚染に苛まれているとのことだ。

 しかし、多くの政治家はこの地域のこの問題に関心を払わず、ヒラリー候補の関心も低かったとのことである。しかし、トランプ氏は、少なくとも問題の所在や深刻さを理解していたとのことだ。この地域の人々は、トランプ氏の ”米国を再び偉大に”の演説に、昔の栄華を思い出し歓喜したことであろう。

 トランプ氏の成否の鍵は、雇用を生み出し、日常的な貧困、薬物依存から脱却させることが出来るかであるが、少なくとも大統領当選直後、製造工場をメキシコから呼び戻したり、新設したりする企業が話題となり、雇用拡大の希望があった。

 実際に雇用の拡大はあったのか、あるいは今後雇用拡大の計画はあるのか、不明であるが、他に希望を抱かせる政策が無ければ、トランプ氏に縋るより他がないだろう。米国全体では人気の低いトランプ氏であるが、ラストベルトの地域の人々を救う処方箋を示せる政治家が他に居ないのだ。

 時代の流れ、技術の流れは誰にも変えられない。昔の鉄鋼業の繁栄の再来は確実に無理である。最近、この地域で頭角を現している技術としては、液体水素燃料電池の開発、ナノテクノロジー、バイオテクノロジー、情報技術および認識技術があるようだ。しかし、昔鉄鋼業に従事した年寄りには適さない。この意味でもお年寄りの未来は暗い。

 また、トランプ氏は大富豪であり、また政策的にもオバマケアの廃止等、必ずしも弱者の味方のようには思えないが、それでも人気が衰えないのだ。米国では「うまくやってのけた人を責めるのではなく、それを許した仕組みを責めろ」と言われるのだそうだ。この言葉の真意はよく理解できないが、トランプ氏の個人的な金儲けは全く問題なく、社会の仕組みを上手に使った手腕は褒められるべきとの意味であろうか。兎も角トランプ氏の個人の力を大いに評価しているに違いない。

 余談であるが、わが国では集団の力が話題になっている。加計学園問題では従来の規制に風穴を開けると称し、獣医学部新設の4条件には目を瞑り、内閣府と文科省の忖度集団の大活躍である。個人の力による独裁体制か、集団の力による翼賛体制か、どちらにしても ”過ぎたるは及ばざるが如し”である。2017.06.14(犬賀 大好-346)

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