日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

技術の変化の速さを「シャープ」に見る

2016年02月13日 09時35分29秒 | 日々雑感
 経営不振に陥っている「シャープ」は、経営再建を日本の官民出資の投資ファンド 「産業革新機構」に委ねるか、台湾の大手電子機器メーカー「ホンハイ精密工業」に委ねるか検討してきたが、2月4日台湾メーカを優先させる方針を決めたとのことだ。「産業革新機構」への道を残しつつ、今後一ヶ月を目途に正式決定するそうだ。もしこれが実現すると、7000億円を超える規模の資金で、台湾の大手電子機器メーカーに買収されることになる。シャープは、10年ばかり前、液晶テレビで世界の亀山モデルとして名を馳せたが、今やその面影も無い。経営上のミスがあったかもしれないが、その背景に技術の流れの変化の速さを感ずる。

 シャープは、1912年に早川徳次氏が創業した。1915年に「早川式繰出鉛筆」を発明し、これが「シャープペンシル」になり今でも広く使用されているが、この他、鉱石ラジオや電卓を世に送り出し、常に日本の技術を先導してきた。液晶テレビも電卓で培った液晶技術を更に発展させた結果であろう。シャープの没落は直接的には、液晶に対する過剰投資であると言われているが、その裏には電子技術が行き着くところまで行ってしまった運命的なものを感ずる。

 電子技術の発展は、1949年のトランジスターの発明からであろう。トランジスターがIC(IntegratedCircuit)になり、LSI(LargeScale IC)となり、集積密度が飛躍的に上がり、それに伴い周辺の電子部品も小型化され、一方では電子機器を制御するソフトウエアの飛躍的な進歩があった。そしてそれらが適用される電気、電子商品、所謂デジタル機器も日常生活の中に溶け込んでいった。シャープはこの技術の流れに乗り、常に時代の先端を走ってきた。

 電化製品のお陰で人々の生活は便利になり、日常生活においてこれ以上必要とされるものが見当たらなくなってしまった。”必要は発明の母”であるが、必要が無くなれば、発明の意欲も薄れ、大きな技術の進歩や変革は望めない。電子技術は小型化や高速化を目的に進歩してきたが、目標を見失い変革意欲が薄れると、必然的に技術の停滞に陥ってしまう。

 家庭用電気製品の電子部品に限れば、これまで以上の小型化や高速化は必要ないのだ。技術の停滞は、技術的な困難さより意欲の喪失にあるだろう。トランジスターが発明されてから、高が60~70年しか経っていないのに、早くも行き詰るとは、技術の変化の流れが何と速いことか。

 その昔、 企業の寿命30年説が流行ったことがあった。この説は1983年に日経ビジネスが企業の資産総額のランキングを基に唱えた説である。この一番の根拠は商品のライフサイクルにあると思われるが、シャープの場合商品を色々と変えたが、家庭用電子機器の点においては首尾一貫していた。

 家庭用電子機器と言えば、炊飯器からテレビまで多種多様であるが、それでも限界があるのだ。電子機器は家庭用以外の分野で、例えば医療用検査機器等の分野で今後も進歩していくのであろうが、量的には家庭用に遠く及ばない。

 この限界は、これまで家電製品を作ってきた、東芝、日立、ソニー等の大手電子機器メーカにおいても見られる。今や家電製品は大量生産による低価格化でしか生き残りを図れない。アップル社のiPhone も技術の停滞はいずれやって来る。いやもうそこまで来ているかも知れない。2016.02.13 (犬賀 大好-207)

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