日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

イランの将来を考える

2016年02月17日 09時38分44秒 | 日々雑感
 欧米など6カ国とイランによる核協議の最終合意を受け 、経済制裁を解除すると1月16日に発表された。国際原子力機関(IAEA)が核開発施設の縮小や濃縮ウランの搬出の終了を確認したからだそうだ。経済制裁解除によりイランからの石油輸出が増大し、世界には石油が一層過剰に出回る恐れが出てきた。こうなると石油価格が暴落するそうで、一般庶民は安くなるに越したことはないと気楽に構えているが、黒田日銀総裁を始めとする経済界は戦々恐々のようだ。

 つまり石油価格の暴落は、石油輸出国はその儲けが減るため世界への投資資金を減らし、結果世界経済の低迷を招くことに繋がるからとの話である。石油が安くなれば、それで活発化する企業もあるはずである。モノの価格は、供給と需要のバランスによって決まるのであろうから、バランスが取れるまでの混乱期と見れば、時間が解決する問題であろう。

 イランは、石油の埋蔵量世界4位の、天然ガスは1位の資源大国であり、人口7850万人と先進国から見ると将来性のある市場である。しかも、観光資源となる古代歴史遺跡の宝庫でもある。何しろ紀元前500~300年ごろ栄えたペルシャ帝国の中心であった。日本企業の期待も大きく、昨年10月に投資協定を結ぶことで合意したそうだ。

 このような有望な市場を目指して、日本ばかりでなく世界各国は動き出している。今年、1月末には、習近平中国国家主席がイランを訪問した。恐らくアジアインフラ投資銀行 を介して、膨大な資金をインフラ整備に投資する計画であろう。中国は、米国や日本が経済制裁を強めている間も積極的にビジネスを進めていたそうで、既に自動車から日用品まで中国製品があふれているとのことだ。

 一方、イランのロハニ大統領はイタリア、フランスを初外遊し、先月28日帰国した。フランスでは航空機118機(3兆円)を発注したとの話である。また、独は、鉄道事業でシーメンスが大型受注を決め、ソ連は、地対空ミサイルシステム「S300」の輸出を再開するそうだ。中国経済が低迷する中、世界各国は先を争って、イランに食指を伸ばし始めている。今後、イランの経済に華々しく発展するであろう。

 欧米による経済封鎖が解除される一方、昔から仲の悪いイスラエルは警戒心を緩めてはいないようだ。イスラエル首相府が発表した声明は、「イランは核合意締結後も、核兵器取得への野望を放棄していない。同国は国際公約に違反して、中東の安定を損ない、世界中にテロを拡散し続けるだろう」と警戒感をあらわにした。

 イスラエルは、西暦70年にローマ帝国によって滅ぼされ 1948年に再度建国するが、首都エルサレムは昔々のユダヤ教の聖地との名目で、周辺のイスラム教徒を押しのけて建国した。しかも、今日イスラエルは核保有国として暗黙の承認を受け、現在もパレスチナ地区で着々と領土を拡大し、磐石な国家を築きつつある。これをイランを始めとする周辺国家は快く思っていない。長年自分たちの土地だと思っていた所を異教徒が占拠し始めたのだから当然であろう。従って、イスラエルはいつ奪い返されるかも知れないとの懸念を持つことももっともである。

 欧米は、今後8年間に核協議の合意が破られた場合、再度経済制裁を科すと決めているようであるが、肝心なのは合意の内容がどこまで詳細に決められているかである。多分問題が発生した場合、核協議の合意内容の文言を巡って、争うことになるだろう。その間もイランは国力を着々と増すであろう。当然原子力発電にも手を出すであろう。原発技術は核兵器の技術を紙一重である。その内、核保有国となるに違いない。北朝鮮より国土は広く、人材・資金も豊富だ。このとき、核兵器は最大の抑止力として働き、イスラエルとイラン両国は少なくとも表面的には仲良く出来るのであろうか。
2016.02.17(犬賀 大好-208)

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