日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

日本の労働組合の衰退が止まらない

2023年09月24日 10時12分20秒 | 日々雑感
 今年8月31日、そごう・西武労働組合がストライキを実施した。ストライキと言えば賃上げ要求かと思っていたら、セブン&アイ・ホールディングスによる傘下の百貨店の売却に反対するストライキであった。日本におけるストライキは現在死語になる程、久しく行われていない。かってストライキは春闘につきものの年中行事であり、元々春闘と言う言葉自体が1955年に行われた”春季賃上げ共闘総決起大会”の略称であり、賃上げが主目的だったのだ。

 さて、1989年の頃、12月29日の証券取引所の年内最後の取引日には日経平均が史上最高値を付け、バブル経済の真っただ中であった。”日本を売れば米国が買える”と言われるほどの異常なバブル状態にあり、長く続くことはなく崩壊した。すなわち、1991年から1993年頃にかけ、株価や土地の値段が暴落したのだ。

 1997年には、日本の三大証券の一つである山一証券や北海道拓殖銀行が破綻した。破綻の主原因はバブル崩壊による収入の落ち込みであったと言われている。大企業や都市銀行の破たんは地域経済にも深刻な影響を及ぼしたばかりでなく、経営者やそこで働く労働者に多大な影響を与えた。大企業であっても潰れるとの意識は労働者に広く浸透し、この頃から賃上げのためのストライキは影を潜め、経営者には内部留保の傾向が浸透していったのではないかと推測する。この傾向を更に決定的にしたのは2008年9月のリーマン・ブラザーズ・ホールディングスの経営破綻ではないかと思われる。

 兎も角、これらの事件を契機に労働者の意識の変化もあった。同じ会社で一生過ごす意識が薄くなり、能力重視の風潮が強くなってきたのだ。これと共に一律賃上げを求める春闘は低調になり、労働者の平均賃金は上がらず、逆に政府が産業界に対し賃上げを求める「官製春闘」が2014年の春闘から始まった。労働組合の衰退もこの頃からであろう。

 さて、連合は1989年に結成された加盟組合員が約700万人の日本最大の労働組合の連合体であるが、そこの芳野友子会長は、2023春季生活闘争方針をGDPも賃金も物価も安定的に上昇する経済へとステージを転換することが必要だとした。日銀植田総裁も日頃、物価も賃金も安定的に上がっていくことが重要と語っており、労働組合と政府が同じ方向を向いていることになり、一見好ましい風潮のように見える。

 しかし、経営側の経団連が一体となって自民党を支援するのに対し、連合は立憲民主党系と国民民主党系、または総評系と同盟系と政治的な考えの違いで分断されており、両者が次期衆院選に向けて連携する兆しは見えない。

 労働環境を良くするには、働く人や生活者の立場に立った政治勢力の団結が重要であるとの主張は、誰もが納得できるだろうが、連合は分裂状態なのだ。しかも最近、自公政権に、国民民主党を加える「連立」構想が政界を賑わしているようだ。更に国民民主党の参院議員だった矢田稚子氏の首相補佐官起用の方針が明らかになり、一層真実味を帯びてきた。労働組合の衰退は更に進みそうだ。2023.09.23(犬賀 大好ー948)


コメントを投稿