日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

中国における政策の大変更は簡単だろうが

2023年06月03日 16時50分02秒 | 日々雑感
 森林を保護する環境政策として始まった「退耕還林」は、洪水や土壌浸食など深刻な環境問題の対策として1990年代末に始まった政策である。春先、毎年のように日本にも飛来する黄砂は、洗濯物や自動車を汚し迷惑を被っているが、北京では日本以上に被害を受けていることだろう。黄砂の発生源はモンゴルのゴビ砂漠と言われているが、中国本土の農地からも舞い上がっていることだろう。この為中国政権は、砂漠地帯の植林や農地を林に戻して、砂被害を防止しないと共産党政権の基盤が崩れるという危機感が背景にあり、退耕還林を進めたのだった。

 しかし、最近それとは真逆な「退林還耕」政策に切り替えたようだ。これは森林等の緑地を農地に戻すことであるが、習近平総書記が変更した背景には国際情勢の変化がある。すなわち中国の食料安全保障だ。

 中国は農業大国だが、食糧輸入大国でもある。中国の食料自給率は、2000 年代以降ほぼ 100%で推移してきた。2012 年以降安い外国産の大豆等の輸入の拡大によりこの値は低下しているが、2015 年は 97.9%と、依然として高い水準を維持しているようだ。政府の発表する統計は常に政治的な思惑を含むため本当の所はよく分からないが、中国の最近の穀物自給率は80%~95%程度と見るのが一般的だ。

 日本の2020年度の食料自給率は37%でしかないので、これと比べると中国はかなり高い自給率だ。それにも拘わらず食料の自国生産を言い出したのは、自国の食料安全保障の為だ。西側諸国との関係の悪化や、特にロシアによるウクライナ侵攻や新型コロナウイルス禍は人口大国の中国に強い危機感を与えているからであろう。いつの日か起きる台湾武力統一のための準備も、重要な目的と推測されているそうだ。

 この中央政府の方針に対し、地方官僚はすべては中国共産党中央政府に従わねばと、また自分の地位を守るためにも現状を無視し行き過ぎた行動までして自分の手柄とするのだそうだ。中国全土で公園等をコメや小麦などを作る耕作地へ切り替えたり、育てたバナナ等の作物を収穫を待たずに強制的に廃棄されるなど、各地でトラブルも起きているとのことだ。

 習近平総書記の鶴の一声が地方にまで徹底されるのは一党独裁体制の賜物である。下の官僚や政治家は盲目的に従っておれば無事出世出来る為政策は一層徹底されることになるのだ。この例は最近の新型コロナウイルスの感染対策のゼロコロナ政策においても見られる。

 中国のゼロコロナ政策は徹底しており、取り締まり関係者の大活躍により一般庶民は不自由な生活を長期間強いられたようだ。そのお陰で無事コロナ感染の終息を迎え、この政策は大成功だったとの話だが、これは政府発表の話であり、現在コロナ感染が本当に終息しているのか、懸念するところもある。本来はこの政策の費用対効果等の面より検証すべきであろうが、例え検証したとしてもその結果は公表されないであろう。

 前述の退耕還林から退林還耕への政策変更にしても、結果がどうとなれ大成功の結果となろう。2023.06.03(犬賀 大好ー920)


コメントを投稿