厚労省が公表した統計では2023年の出生数が大きく落ち込み、今年6月ごろにまとめる「合計特殊出生率」でも過去最低タイとなった前年の1.26を下回る可能性があるとのことだ。日本出生率低下の主な原因としては、・未婚化や晩婚化の進展、・育児に対する経済的負担が大きいこと、・育児や家事に対する女性の負担が大きいこと等、が挙げられている。
岸田首相は異次元と称する少子化対策の必要性を就任当初から訴えており、昨年6月に閣議決定した「こども未来戦略方針」において、2024年度から2026年度までの3年間で年3兆円台半ばの予算を投入し、児童手当の拡充等に充てることを明記した。しかし日本の財政難の折り財源の確保に苦労しており、紆余曲折がありそうだ。
日本は少子高齢化がじわじわと進んでおり対策の本気度が今一見えないが、隣の国韓国は日本以上に深刻な様子だ。韓国では去年、出生率が0.72と過去最低を更新し、少子化に歯止めがかからない状況が続いているとの報道があった。
韓国の人口は2022年の夏の時点で5167万人で、試算によると出生率が0.6から0.8程度で推移した場合でも、2072年には人口が3017万人となり、4割以上減少するとしている。また、平均寿命は今後も伸びて高齢化率も増加していくとみられ、先述の出生率が続いた場合、65歳以上の高齢者の割合は2072年に51.2%となり、国民の半数以上が高齢者になると試算している。すなわち、50年後には3千万人の人口となり、その内半数が高齢者となる予想だそうだ。韓国の超少子化は、国の安全保障を脅かす事態にもなっている。2040年には20歳の男性の人口が半減するとされる中、成人以上の男性に兵役義務がある韓国では、国防に当たる兵士が不足すると見られているのだから、深刻な状況だ。
韓国で出生率が低下している要因の1つとして、日本と同様に結婚をしない人の増加や晩婚化が進んでいることが指摘されているが、その理由として韓国特有の事情もあるようだ。すなわち結婚に伴って住宅の購入が必要という考え方が根強くあるそうで、この背景には男尊女卑の考えがまだ強く残っているからだそうだ。また、賃貸住宅も、日本円にして数百万円から数千万円をまとめて支払う韓国特有の保証金の制度があり、結婚を考える若い世代には大きな負担となっているようだ。住宅の購入や保証金制度の問題は政治で何とかなりそうであるが、結婚に対する若者の考え方の変化は日本と同様に政治だけでは如何ともし難いであろう。
少子高齢化は先進国の一般的傾向であるが、ドイツは1994年には1.24まで落ち込んだ出生率が、その後は上昇傾向に転じ2021年は1.58に回復したそうだ。ただ、上昇の背景は近年のシリア難民受け入れなど、移民政策が要因とされ、手放しで喜べない状況だ。
韓国では、ドイツを見習ってか外国人労働者の誘致に熱心であるが、最近日本でも技能実習制度の改善等、積極的な姿勢に変化しつつある。日本と韓国は世界的に見れば同質であり外国人労働者はどちらの国を選択するであろうか。2024.03.09(犬賀 大好ー990)