日経平均株価が先日、3.8万円台をつけ史上最高値(3.8915万円)に迫り、バブルの再来とマスコミを賑わしている。かってバブルと称され日本中が株価と地価の高騰に沸いたのは、1986年のことだった。日経平均株価は85年から89年末までに約3.3倍、東京、大阪、名古屋など6大都市の商業地の地価は、ほぼ同期間に4倍に急騰した。不動産会社は金にまかせて欧米の有名ビルまで買いあさった。メーカーさえも本業を忘れ、資金を借りてまでして財テクに血道を上げた。しかし、その狂乱も長続きせず、1991年から1993年頃、バブルは崩壊し、失われた30年が始まり、今日に至っている。
今回のバブルでは、今現在土地価格の高騰は路線価格を見る限り見られない。土地価格の高騰と言えば、北海道では世界的なスノーリゾートである倶知安町やニセコ町といったニセコ地域の2023年の基準地価が、バブル期の1990年の価格を大きく上回っていることぐらいだ。背景には外資系企業による開発があるが、日本人は余り踊っていないようだ。
今回のバブルで特徴的なのは、株価の高騰である。今年、2月中にはバブル期の最高値を更新するのでないかと経済素人でも感ずる。株高の背景には、好調な企業業績、賃上げ、新NISA(少額投資非課税制度)が上げられているが、ピンと来ない。また、日銀の内田副総裁が「マイナス金利の解除後もどんどん利上げをしていくようなパスは考えにくく、緩和的な金融環境を維持していくことになると思う」との見解を示したことの方が、影響が大きいと感ずる。現在の企業が好調な原因は日銀の金融緩和策が影響していると思うからである。
また、株式相場の活況を見越した海外投資家が日本株を大きく買い越しからだとの報道もある。一方、日本の個人投資家は海外株を買う傾向が強いそうだが、これも日本人は日本企業の将来に余り期待していないからではないだろうか。
諸物価値上げで庶民感覚では既にインフレ状態だと感じているが、今年の春闘で去年を上回る大幅な賃上げが実現して、賃金と物価の好循環が生まれ、日本が長く続いたデフレから脱却出来るとの識者の声もあるが、どこか庶民感覚とずれている。
一方、中国市場は不動産不況で株安が続いているようだ。景気の先行き不安を背景に、上海市場や深セン市場は今年に入り急落しているようで、特にこれに反応しているのが海外の投資家で、積極的に日本株を買っていることも、日本の株価の急騰の一因であろう。
現在のバブル状態は1980年代のバブルとは原因が異なるが、実体経済とかけ離れていり点では同じである。先のバブルの崩壊は日銀の金融政策の失敗が原因だったとの指摘もあるが、先の内田副総裁の金融緩和策の続行はこの反省を踏まえているのだろうか。また失われた30年の反省を踏まえているのだろうか。2024.02.17(犬賀 大好ー984)