現在日本は労働者不足が問題となっているが、世界の先進国でも同様な問題が起こっているようだ。ドイツの多くの分野の企業は必要な労働者の確保が困難であり、状況は益々悪化しているそうだ。国の輸出市場の大きな推進力の一つであるドイツの機械産業を見てみても人手不足は同じ状況で、ドイツ機械工業連盟もこの分野の企業の70%以上が深刻な人手不足に苦しんでいるとのことだ。
そうした状況に直面して、ドイツ政府は移民が解決策の一つであると考え、2022年7月、移民制度を改革して熟練労働者にとってより魅力的な国づくりを目指す方針を明らかにした。同国は労働者不足などによるインフレ高進に直面しているが、熟練労働者は他の富裕国に流れる傾向が見られ、米国やカナダ、オーストラリアのような国と争奪戦を演じているのだそうだ。
しかし、昨年3月、経済協力開発機構(OECD)の調査によると、ドイツは海外からの熟練労働者誘致で加盟国中15位に後退したとのことだ。2019年に実施された前回調査ではドイツは12位だった。OECDは、ドイツの経済状況は悪化していないものの、他国は熟練労働者の状況改善に向け対策を講じていることで差がついたと分析している。好条件の国として上位を占めたのはニュージーランド、スウェーデン、スイス、オーストラリアだそうだ。
これらの国における海外労働者の獲得条件の違いは定かでないが、ニュージーランドにおける外国人の在留には、目的や滞在期間により、就労ビザ、学生ビザ、訪問者ビザ、居住ビザなどの様々な形態があり、入国やビザ申請の条件は頻繁に変更されているそうで、各国の競争の激しさを一端を表しているのだろう。
日本は移民を認めていないが、技能実習制度等の様々な改革を試み、在留期間が無期限になる事実上の永住権制度も設け、移住者を呼び込もうとしているが、海外の高度人材からは見向きもされていないようだ。
それどころか、最近日本の若者に海外出稼ぎの傾向があるのだそうだ。記録的な円安や長年上昇しない賃金の問題を背景に、日本を出て海外で働いてお金を稼ぐ若者が増えているそうだ。世界各国が経済成長にともなって賃金が上がっていく中、日本は過去30年間で実質賃金の伸び率が0.1%とほとんど増えていないのが大きな原因であろう。しかし、彼らの声を聞いてみると、その理由はお金だけで無いのだそうだ。年功序列や、性別による格差、長時間労働など、日本の労働環境そのものに対するあきらめや不満も背景にあるようだ。
日本は様々な改革により海外労働者を呼び込もうとしているが、移民制度がある国との競争は極めて困難であり、それどころか逆に日本の若者が海外に出ていく有様だ。現在国会は裏金問題でコップの中の嵐を演じているが、この議員の先見性の無さも若者が日本を見放す一因であろう。
2024.02.14(犬賀 大好ー983)