2023年IMF(国際通貨基金)が発表した2022年の世界各国のGDP(国内総生産)は、第1位は米国で、中国、日本、ドイツと続く。GDPの大きさをもって国力と言えるかどうか分からないが、一つの目安であることは間違いないであろう。中国のGDPは日本の4.4倍であるが、一人当たりのGDPとなると中国は人口が日本の約10倍と多いため遥かに低くなるが、人口も潜在力と見れば中国の国力は非常に大きいかも知れない。さて、2023年のGDPは日本がドイツに抜かれて世界第4位になるのは確実とマスコミが大騒ぎしている。
GDPがドイツに抜かれるとなると、日本の国力がドイツより沈下していると見る人も多いからだ。企業の値段を示す株式時価総額の世界ランキング(2023年3月末)で、上位100位以内に入った日本企業はトヨタ自動車(39位)のみだったことから見ると、確かに日本の技術力は世界的に下がっているようだ。バブル経済の絶頂だった1989年には10位以内だけで日本から7社が占めており、現在”失われた30年”とも表現される日本経済の長期停滞は確かなようだ。
技術力の低下と言っても、ガソリン燃料自動車等の個別の技術は相変わらず世界1であろうし、ただ技術の変遷に後れを取っているのだ。先のランキングでも、1位のアップル社を筆頭に、マイクロソフト社、アルファベット(旧グーグル社)が上位を占めており、いづれも情報処理の企業だが、日本の企業は現在も尚ハードウエアが中心であり、世界の技術の流れから取り残されてしまったのだ。
我が国は、例えば、青色発光ダイオードの発明によるLED照明の普及化、iPS細胞の樹立による再生医療の実用化への展開など、科学技術・イノベーションに関わる多くの分野で世界に誇れる数多くの成果を上げているが、ソフトウエアの世界では見るべきものが無い。
問題は今後の状況だ。今後は現在の研究力に負うところが大きい。文科省が纏めた科学技術指標(2021)によれば、前年から続いて日本の研究開発費、研究者数は主要7か国中第3位、パテントファミリー数では世界第1位だそうだ。只、これらの指標において、ソフト、ハードの分類がなされていないのは残念である。
また、研究力を測る主要な指標である論文数に関しては、国際的な地位の低下が続いており、文科省も認識しているようだ。国は、2004年大学の活性化を図るために大学の独立法人化を実施した。独立法人化の成果の一つが論文数に表れている筈だが、これに関する限り独立法人化は失敗であったと言える。
2000年代前半以降の日本の大学の論文数の停滞要因として、教員数の伸び悩み、博士課程在籍者数の停滞、研究費用の停滞、等の要因が挙げられるとのことだ。日本の将来を示唆する論文数に関しては上記の有様であるが、文科省は、これらの要因を充分に分析し改善する意思があるのであろうか。2024.01.18(犬賀 大好ー976)