2022年2月22日、ロシアのプーチン大統領はウクライナ領土である東部2州の独立を承認した。これまで、ウクライナの国境近くに20万人近い軍隊を配置し、ロシアがすぐにでもウクライナ全土に侵攻すると匂わしていたが、まず手始めに独立承認をしたのだ。独立国として承認した上で、国としての安全を確保するためにそこに軍隊を派遣すると宣言している。西側諸国は国として認めておらず、軍隊を駐留させるとなると正に侵略そのものとなる。
大統領は24日、テレビ演説でウクライナ東部への軍事作戦を実行すると発表した。ロシアの複数の国営通信社は「ロシア軍は、ウクライナの軍の施設や飛行場を高性能の兵器によって無力化している」と攻撃開始を明らかにしたが、東部だけではなくウクライナ全部に攻撃を仕掛けたのだ。
日本のロシア専門家も当初、ロシアの軍事侵攻は、合理的な理由が無く、起こりえない、という見方をしていた。プーチン大統領はNATOの拡大阻止を口実にして、20万人近いロシア軍をウクライナ国境付近に動員していたが、全土への侵略はリスクが大きすぎる為単なる脅しと理解していた。
一方、米国バイデン大統領は近日中に侵攻を始める筈としばしば発表していた。大統領は単にロシア牽制のために発表しているのと思っていたが、24日ウクライナのあちこちで侵略が始まったのは意外であった。
侵略は、まず国外からミサイル等によりウクライナの軍事施設を破壊して制空権を確保し、次に兵員をヘリコプターで移送する段取りのようだ。もしウクライナがNATOに加わっておれば、西側諸国から反撃があったであろうが、プーチン大統領はこのことをちゃんと計算に入れていたのだろう。
それにしてもプーチン大統領のこの決断はロシア国民にとって何のメリットがあるのだろうか。大統領は他に選択肢が無かったためと演説し、ウクライナ国内のロシア人保護とか、NATOの拡大阻止とか、主張しているがどれもロシアの国の為というより、自分の為との感が強い。大統領支持率が上がったとの情報もあるが、ロシア国内でも戦争反対のデモが起き、これを必死に鎮圧しているようだ。
今回の戦争はハイブリッド戦争と称されるそうで、武器を用いた殺し合いの他、情報戦が激しいとのことだ。ロシア国内では政府批判の声はほとんど禁止されているのであろうが、情報は国境を越えて周辺の国からいくらでも入る。
プーチン氏個人にとって都合の良い情報をロシア国民が疑うようになった現実を何とか変えるためには、外敵を作るのが最も良いとの焦りの判断が、他に選択肢が無かったとの表現になっているのではないだろうか。2022.02.26(犬賀 大好ー793)