温室効果ガスの内二酸化炭素は放出量が格段に多いことから地球温暖化の最大の原因と見なされているが、メタンガスはその陰に隠れた悪者だが実体はよく分かっていないようだ。
米環境保護団体の環境防衛基金(EDF)は今年4月、世界の主要なメタンガス発生源の観測を行うため、人工衛星を打ち上げると発表した。発生源には、産出量全体の約80%を占める50カ所の油田・ガス田地域に加え、家畜肥育場やごみ処理施設などが含まれるそうだ。まず実態を把握することが最優先であろう。
大気中のメタンガス濃度は1.7ppm程度で、炭酸ガスの350ppmと比較すると遥かに低いが、1分子当たりの温室効果で比較すると、炭酸ガスの約20倍の影響力を持っているとの話しだ。
それでも、温暖化に対してまだ1/10程度の影響力しかないが、炭酸ガスが植物や水に吸収されるのに対し、メタンガスを吸収するものがない。その上メタンガスの大気中寿命は12.4年で、一旦放出されると少なくとも10年間は大気中に留まり悪さをする化学的に安定なガスである。
メタンガスは、無色、無臭で有機物が腐敗することによって生じ、濃度が高ければ自ら燃焼し、水と炭酸ガスになる。石炭や石油と同じように植物や動物が材料となって生成されるので化石燃料と見なすことも出来るが、今なお植物、動物から生成されている点で大きく異なる。
米国ではシュールガスは1990年代から新しい天然ガス資源として重要視されるようになった。当初シェールガスは石油、石炭より温室効果ガス排出量を減らすことができると希望を持たせたが、その後従来の天然ガスや石油よりも影響が大きくなるとの指摘が学会から上がるようになった。
メタンガスは油田・ガス田から多く排出されるが、自然湿地からのメタンの発生量も多いとも指摘される。しかしその量をどう推定するかという問題がある。人為的な発生や密度の高い発生源については評価は比較的正確であるが,自然湿地からのメタンの生量の推定値には不確定さが大きい。
理由は、湿原からのメタンは単位面積当たりの発生量は少ないけれども全面積が膨大であるという特徴を持っているからである。
更に、季節はもちろんのこと、数m離れた測定点で発生量が数倍異なるなど、個々の測定から全体量を推定することが難しい状況にある。そこで大気中濃度を測定することにより,平均的な発生量を求める手法が有効ではないかと考えられ、衛星打ち上げとなったのであろう。
また、水は高圧下でハイドレートと呼ばれる氷状の結晶になり、その結晶中にメタン分子を含む物をメタンハイドレートと呼ばれるが、シベリア等の永久凍土や世界各地の海底に広く存在するのだ。
日本は、石炭、石油などの地下資源が乏しいが、メタンハイドレートは日本周辺水深1キロメートル程度の深海底、地層内に分布し、四国沖、御前崎沖なで膨大な量の存在が確認されている。
地球温暖化により凍土が緩んだり、海水温度の上昇により海底のメタンハイドレートが融解すると、メタンガスが放出され温室効果を加速する懸念が生ずる。これは温室効果の正のフィードバックと呼ばれる最悪の筋書きである。
以上は、過去に蓄積され埋蔵されたメタンガスであるが、今なお作り続けられるメタンガスもある。日本のメタン発生量は2015年で3300万トンであり、その中で割合として最も多いのが稲作で44.4%、牛のゲップの23.4%などであり、あわせると農業で75%を占めるそうだ。日本が発生する温室効果ガスの中での影響力は現時点ではさほど大きくないと思われる。
しかし、羊や牛といった反芻動物が出すゲップ中に含まれるメタンガスが、地球温暖化の大きな原因となっているとの、ニュージーランドの研究者がまとめた報告もあるとのことであり、今後メタンガスが大きな問題となりそうである。
2018.10.27(犬賀 大好-489)
米環境保護団体の環境防衛基金(EDF)は今年4月、世界の主要なメタンガス発生源の観測を行うため、人工衛星を打ち上げると発表した。発生源には、産出量全体の約80%を占める50カ所の油田・ガス田地域に加え、家畜肥育場やごみ処理施設などが含まれるそうだ。まず実態を把握することが最優先であろう。
大気中のメタンガス濃度は1.7ppm程度で、炭酸ガスの350ppmと比較すると遥かに低いが、1分子当たりの温室効果で比較すると、炭酸ガスの約20倍の影響力を持っているとの話しだ。
それでも、温暖化に対してまだ1/10程度の影響力しかないが、炭酸ガスが植物や水に吸収されるのに対し、メタンガスを吸収するものがない。その上メタンガスの大気中寿命は12.4年で、一旦放出されると少なくとも10年間は大気中に留まり悪さをする化学的に安定なガスである。
メタンガスは、無色、無臭で有機物が腐敗することによって生じ、濃度が高ければ自ら燃焼し、水と炭酸ガスになる。石炭や石油と同じように植物や動物が材料となって生成されるので化石燃料と見なすことも出来るが、今なお植物、動物から生成されている点で大きく異なる。
米国ではシュールガスは1990年代から新しい天然ガス資源として重要視されるようになった。当初シェールガスは石油、石炭より温室効果ガス排出量を減らすことができると希望を持たせたが、その後従来の天然ガスや石油よりも影響が大きくなるとの指摘が学会から上がるようになった。
メタンガスは油田・ガス田から多く排出されるが、自然湿地からのメタンの発生量も多いとも指摘される。しかしその量をどう推定するかという問題がある。人為的な発生や密度の高い発生源については評価は比較的正確であるが,自然湿地からのメタンの生量の推定値には不確定さが大きい。
理由は、湿原からのメタンは単位面積当たりの発生量は少ないけれども全面積が膨大であるという特徴を持っているからである。
更に、季節はもちろんのこと、数m離れた測定点で発生量が数倍異なるなど、個々の測定から全体量を推定することが難しい状況にある。そこで大気中濃度を測定することにより,平均的な発生量を求める手法が有効ではないかと考えられ、衛星打ち上げとなったのであろう。
また、水は高圧下でハイドレートと呼ばれる氷状の結晶になり、その結晶中にメタン分子を含む物をメタンハイドレートと呼ばれるが、シベリア等の永久凍土や世界各地の海底に広く存在するのだ。
日本は、石炭、石油などの地下資源が乏しいが、メタンハイドレートは日本周辺水深1キロメートル程度の深海底、地層内に分布し、四国沖、御前崎沖なで膨大な量の存在が確認されている。
地球温暖化により凍土が緩んだり、海水温度の上昇により海底のメタンハイドレートが融解すると、メタンガスが放出され温室効果を加速する懸念が生ずる。これは温室効果の正のフィードバックと呼ばれる最悪の筋書きである。
以上は、過去に蓄積され埋蔵されたメタンガスであるが、今なお作り続けられるメタンガスもある。日本のメタン発生量は2015年で3300万トンであり、その中で割合として最も多いのが稲作で44.4%、牛のゲップの23.4%などであり、あわせると農業で75%を占めるそうだ。日本が発生する温室効果ガスの中での影響力は現時点ではさほど大きくないと思われる。
しかし、羊や牛といった反芻動物が出すゲップ中に含まれるメタンガスが、地球温暖化の大きな原因となっているとの、ニュージーランドの研究者がまとめた報告もあるとのことであり、今後メタンガスが大きな問題となりそうである。
2018.10.27(犬賀 大好-489)