政府の国家戦略特区諮問会議は車の自動運転の実現を急ぐため、指定する神奈川や仙台の特区で運転手がいない状態で車を走らせる実験を認める方針を固めた(5月18日)。来年を目途に特区の公道で自動走行の実験が出来るようにするとのことである。
自動運転のレベルは一般的に4つのレベルに分類されるが、運転手がいない状態で走らすことが出来るのは究極の自動運転、レベル4である。 IT 企業のグーグル社が、2020年までにレベル4の車の市販を目指す構えだとのことであり、日本政府としても手をこまねいている訳にはいかないとの決意であろう。何しろ自動車産業は日本を支える基幹産業だ。将来の車を他人の手に渡すわけにはいかない。
車の自動運転は、使用条件が限定されれば技術的に可能であるが、問題は限定されないところにある。例えば、一番低レベルの自動運転システムは、加速・操舵・制動のいずれかを自動で行うシステムであるが、このレベルにおいても、あらゆる場合に安全運転支援システムとなるかというと疑問である。
最近、ブレーキとアクセルを踏み間違えて、暴走する事故がしばしば報道されるが、運転者の意思に拘わらず、車が障害物を検知した場合、自動ブレーキを作動させれば、非常に有効な手段と思われる。ただし、車を駐車場に止める場合に有効であっても、一般道での走行中は問題が多い。
駐車場に止める場合、車は低速であり、進行方向には大抵何らかの障害物が存在するので検知し易い。しかし、一般道で走行する場合、例えば時速30km以上で走っている場合に人の飛び出しを検知して、急制動をかけると後続の車が追突する危険が生ずる。これを想定し、自動ブレーキは作動しないようにシステムを組むのが一般的らしい。しかし、飛び出した人が無事であれば、追突による運転手の怪我はエアバック等で対処できるとの考え方もある。すべての車に自動ブレーキシステムが装着されればこの問題は解決されるかも知れないが、過渡期には混在することは免れない。
走っている車は凶器であり、人間が車に衝突されればひとたまりもない。やはり、高速走行時にも自動ブレーキシステムは働かせたい。車の前方にいる大人の人間を検知することは、技術的にはさほど難しくは無いであろうが、子供や犬、猫ほどの小さな物体となると、紙ごみや落ち葉の類と区別できるのであろうか。ごみを検知して、急制動がかかり、エアバックが動作したのでは、問題が多過ぎる。
人口知能(AI)の発展により、近い将来には人間、動物やごみの区別が出来るようになるであろうが、急制動しても後続の車が追突しないような車間距離の維持等、社会・交通システムが整備されるには、時間を要するであろう。
今後ドライバーの高齢化により、また疾病や危険薬物が原因で暴走する事故は増える傾向にあるため、車に装着を義務付ける動きもある。米国では、今年3月、米国運輸省、国家道路交通安全局、および道路安全保険協会は、2022年までにメーカー20社が製造する全新規車両で、自動緊急ブレーキが標準装備になるであろうと発表した。この場合の標準装備の仕様は不明であるが、条件は限定されるに違いない。
日本でも、自動ブレーキシステムの開発はかなり進んでおり、商品化も始まっているようであるが、メーカーや車種によっても性能にかなりの差があるようだ。これも、どのような事故を想定するかが、システムの仕様決定に大きく影響するからである。
日本として車に装着を義務づける場合、メーカ毎に異なるシステムをいかに標準化するか、更に、システム装着に拘わらず事故が発生した場合、責任は誰にあるかの法整備が必要となろう。これは、技術的な問題ではないだけに、簡単には決まらないであろう。
2016.05.21(犬賀 大好-235)
自動運転のレベルは一般的に4つのレベルに分類されるが、運転手がいない状態で走らすことが出来るのは究極の自動運転、レベル4である。 IT 企業のグーグル社が、2020年までにレベル4の車の市販を目指す構えだとのことであり、日本政府としても手をこまねいている訳にはいかないとの決意であろう。何しろ自動車産業は日本を支える基幹産業だ。将来の車を他人の手に渡すわけにはいかない。
車の自動運転は、使用条件が限定されれば技術的に可能であるが、問題は限定されないところにある。例えば、一番低レベルの自動運転システムは、加速・操舵・制動のいずれかを自動で行うシステムであるが、このレベルにおいても、あらゆる場合に安全運転支援システムとなるかというと疑問である。
最近、ブレーキとアクセルを踏み間違えて、暴走する事故がしばしば報道されるが、運転者の意思に拘わらず、車が障害物を検知した場合、自動ブレーキを作動させれば、非常に有効な手段と思われる。ただし、車を駐車場に止める場合に有効であっても、一般道での走行中は問題が多い。
駐車場に止める場合、車は低速であり、進行方向には大抵何らかの障害物が存在するので検知し易い。しかし、一般道で走行する場合、例えば時速30km以上で走っている場合に人の飛び出しを検知して、急制動をかけると後続の車が追突する危険が生ずる。これを想定し、自動ブレーキは作動しないようにシステムを組むのが一般的らしい。しかし、飛び出した人が無事であれば、追突による運転手の怪我はエアバック等で対処できるとの考え方もある。すべての車に自動ブレーキシステムが装着されればこの問題は解決されるかも知れないが、過渡期には混在することは免れない。
走っている車は凶器であり、人間が車に衝突されればひとたまりもない。やはり、高速走行時にも自動ブレーキシステムは働かせたい。車の前方にいる大人の人間を検知することは、技術的にはさほど難しくは無いであろうが、子供や犬、猫ほどの小さな物体となると、紙ごみや落ち葉の類と区別できるのであろうか。ごみを検知して、急制動がかかり、エアバックが動作したのでは、問題が多過ぎる。
人口知能(AI)の発展により、近い将来には人間、動物やごみの区別が出来るようになるであろうが、急制動しても後続の車が追突しないような車間距離の維持等、社会・交通システムが整備されるには、時間を要するであろう。
今後ドライバーの高齢化により、また疾病や危険薬物が原因で暴走する事故は増える傾向にあるため、車に装着を義務付ける動きもある。米国では、今年3月、米国運輸省、国家道路交通安全局、および道路安全保険協会は、2022年までにメーカー20社が製造する全新規車両で、自動緊急ブレーキが標準装備になるであろうと発表した。この場合の標準装備の仕様は不明であるが、条件は限定されるに違いない。
日本でも、自動ブレーキシステムの開発はかなり進んでおり、商品化も始まっているようであるが、メーカーや車種によっても性能にかなりの差があるようだ。これも、どのような事故を想定するかが、システムの仕様決定に大きく影響するからである。
日本として車に装着を義務づける場合、メーカ毎に異なるシステムをいかに標準化するか、更に、システム装着に拘わらず事故が発生した場合、責任は誰にあるかの法整備が必要となろう。これは、技術的な問題ではないだけに、簡単には決まらないであろう。
2016.05.21(犬賀 大好-235)