日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

石油輸出国機構(OPEC)の復権はあるか

2016年01月09日 14時15分30秒 | 日々雑感
 ガソリンの価格がこのところ120円以下となり、消費者は大喜びである。これは世界的な原油供給過剰に原因がある。石油製品の値下がりは庶民にとって有難いが、デフレ脱却を願う政府関係者は頭の痛いことであろう。特に日銀の黒田総裁は物価上昇率2%を目標に異次元緩和を続けているが、一向に達成する目途が立たない。IMFのイエレン総裁は、同様な目標を掲げていたが、石油価格の予想外の低下が無ければ目標は達成された筈と、金融緩和中止を決断した。黒田総裁は、そんなことは理由にならないとばかり、金融緩和を続行するつもりのようだ。

 この原油価格の低下は、これまで石油の供給量をコントロールしてきた石油輸出国機構(OPEC)の影響力が低下したためであろう。OPECとは、1960年にイラク、イラン、クウェート、サウジアラビア、ベネズエラの5か国によって結成された。 現在は、カタール、インドネシア、リビア、アラブ首長国連邦、アルジェリア、ナイジェリア、ガボンの7か国が加わり、12か国の組織になっている。ほとんどが中東の国である。

 さて、2012年の石油輸出量の上位3国は、サウジアラビアが625万バレル/日、ロシアが487万バレル/日、カナダが247万バレル/日であり、何と、2位、3位は非OPECである。これでは、OPECが石油価格を支配できない。生産国は、なるべく高い値段で輸出したいが、そのための減産では収入が減るとのことで、意見の統一が出来ないのだ。資本主義、自由経済主義の世の中当然の話だ。

 4~50年前には、石油の枯渇問題が深刻になり、現在のような供給過剰状態になるとは夢にも思わなかった。2012年末時点で、世界の石油確認埋蔵量は1兆6,689億バレル(オイルサンドを除く)であり、これを2012年の石油生産量で除した可採年数は53年となる。1970年代のオイルショック時には30年後には石油は枯渇するとの説まで流布した。それから早くも45年経ったが、枯渇どころではない。

 その後、掘削技術、回収率の向上や新たな石油資源の発見によって、1980年代以降、可採年数はほぼ40年程度の水準を維持し続けてきた。最近では、米国のシェールオイルやベネズエラやカナダにおける超重質油の埋蔵量が増大していることもあり、可採年数はむしろ増加傾向にある。特にOPEC以外の国における埋蔵量の増加が目立つ。

 最近、石油輸出国機構(OPEC)は、将来の見通しを発表した。2014年は、一日当たりの生産量が、OPECは3千万バレル/日であったのに比べ、非加盟国は4270万バレル/日であり、非加盟国の方が上回っていた。しかし、非加盟国の供給量が10年後の4440万バレル/日をピークに減少する見込みであるのに対し、OPECの埋蔵量の多さから生産が伸び、2040年には4070万バレル/日と、逆転するとのことである。そうなればOPECの復権となるとの楽観的見込みのようである。

 しかし、つい先日、3日にOPECの主要国、サウジアラビアとイランが国交断絶をした。これを受けて、原油価格が下がったとの報道もあった。OPECの復権はまず両国の和解が前提であろう。

 世界の推定石油埋蔵量は調査機関によって大幅に異なり、明確でないが、グリーンランド自治政府は、グリーンランド領域内には、少なくとも推定埋蔵量が1 兆100億バレルにのぼる油田があると予想している。地球温暖化の影響でグリーンランドを覆う氷が解け、そこに埋蔵する石油が取り出し可能になるとの背景があるようである。北極海の海底油田も同様であり、本当であるならOPECにとって地球温暖化は、この意味でも防止すべき課題である。2016.01.09(犬賀 大好-197)