日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

中国の経済減速を想う

2015年10月07日 08時43分45秒 | 日々雑感
 中国経済の先行きに不安が高まっている。習近平国家主席は先日の米国訪問の際にも、「米中両国は世界の2大経済国として国際経済をリードして、国際金融の安定を守る責任がある」と力説するが、強がりにしか聞こえない。
 “変調する中国経済”と題する朝日新聞オピニオン(9.30)によれば、中国経済の見通しは甘くない。余永定(元中国人民銀行通貨政策委員)氏は、リーマン・ショック後の景気対策が過剰な投資を招き、生産力が需要を上回って、デフレ状態に陥っていると指摘し、対策は、企業の集約を進めて過剰な生産を解消し、成長力のある産業を育てる政策を採ることだと主張する。しかし、前者は雇用問題、後者は不確実性が高いとも言っている。日本は過去20年、デフレ脱却を出来ないと同様に、中国のデフレ脱却は容易でない。
 茅于軾(マオユイシー)(北京天則経済研究所名誉理事長)氏は、中国の経済成長はイノベーションを起こせるかどうかにかかっているとし、イノベーションを生み出す基礎となる、個人や市場の力を発揮できる社会に向けて改革に踏み出すべきだ、と主張する。
 成長戦略やイノベーション、規制緩和の必要性はどこかの国とそっくりである。急激な中国の経済発展は日本を追い越したと喜んだのも束の間、発展後の行き詰まりでも日本に追いついてしまった。デフレ脱却で日本は苦労しているが、規制緩和に関しては日本以上に抵抗勢力が強く困難を極めるだろう。しかし、中国はもっとしたたかな戦略を立てているようである。
 青山瑠妙(早稲田大学教授)氏は、習近平政権は、「新シルクロード経済圏構想」に力点をおく、と言う。鉄道や港湾、プラント、電力設備などを国外で建設することを通じ、インフラ輸出や企業進出を図り、国内で過剰な生産能力を国外に移転しようとする戦略である。
 日本もインフラ輸出は行っているが、中国のやり方はもっと徹底している。日本では到底真似が出来ない。先日、インドネシアにおける高速鉄道建設を中国の企業が受注した。高速鉄道計画を巡ってインドネシア政府が要求していた、・政府に財政負担が生じない、・融資に対する返済保証を政府は行わない、等の点について、中国側が要求に応じる考えを伝えたことから、急遽決まったとの報道である。長年、日本は中国と高速鉄道建設受注を争ってきた。日本が受注を失したことに対し、菅官房長官は常識では考えられない旨を発表したが、相当なえげつなさを感ずる。
 一見、この鉄道建設は中国の何の得にもならないように見えるが、中国本土における過剰な生産能力を持て余している結果とも勘繰ることが出来る。しかし、間違いなく「新シルクロード経済圏構想」の一環との位置付けであろうし、中国はもっと将来のことを考えた上での布石を行っているのであろう。多分賄賂も横行していると勘繰られるが、その点でも日本は真似が出来ない。
 一方、インドネシアにとっては一見得と思える話であるが、これを機会に中国資本がどっと押し寄せる懸念がある。インフラ建設は中国人労働者が専ら行い、インドネシア国民は指を加えて見つめるだけにならなければよいと思うが。       (犬賀 大好-170)