菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

日々の悶々を、はらはらほろほろ。

クリスマスプレゼントは、呪い。 『グリーン・ナイト』

2022年12月13日 00時00分43秒 | 映画(公開映画)

で、ロードショーでは、どうでしょう? 第2155回。


「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」

 

 

 

 


『グリーン・ナイト』

 

 

騎士になれていない王の甥が緑の騎士の呪いに挑むダーク・ファンタジー・アドベンチャー。

『指輪物語』のJ・R・R・トールキンが現代英語訳したことでも知られる14世紀の叙事詩『サー・ガウェインと緑の騎士』(作者不詳)を映画化。

 

監督・脚本は、『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』、『さらば愛しきアウトロー』、『ピートと秘密の友達』の異才デヴィッド・ロウリー。

 

主演は、『スラムドッグ$ミリオネア』、『ホテル・ムンバイ』のデヴ・パテル。
共演は、『リリーのすべて』のアリシア・ヴィカンダー、『華麗なるギャツビー』のジョエル・エドガートン。

 

 

物語。

アーサー王の甥サー・ガウェインはその地位に甘んじて、自堕落な日々を送り、戦功もなく、冒険もせず、正式な騎士になれずにいた。

クリスマス、王の元に円卓の騎士たちが集う。
そこに異形の植物の怪物である緑の騎士が現れる。
彼は、王に狂気のゲームを申し出る。
ルールは、「この体に剣で一振りだけ加えよ。だが、一年後のクリスマスに、同じ一振りをその者に返す」というものだった。
つまり、その一振りで小さな傷をつければ力の無さと臆病であること示し、その名は地に落ちる。大きな傷をつければ緑の騎士は生き残り、一年後に同じ傷を負い、命が落ちかねない。
ゲームを逃げれば、怪物が何をしでかすか分からない。
つまり、その一振りで、この怪物を仕留めなければならないのだ。
これぞ騎士となる機会、と王は挑戦者にガウェインを指名し、名剣エクスカリバーを託す。

 

 

出演。

デヴ・パテル (サー・ガウェイン/貴族)

アリシア・ヴィカンダー (エセル/レディ)
ショーン・ハリス (アーサー王)
ケイト・ディッキー (女王)
サリタ・チョウドリー (モーガン・ウフェイ/ガウェインの母/王の妹)
エメット・オブライエン (魔術師)
ドナッチャ・クロウリー (僧侶)
ジョー・アンダーソン (パリス)

バリー・コーガン (盗賊)
エリン・ケリーマン (ウィニフレッド)
ジョエル・エドガートン (城の主人)

ラルフ・アイネソン (緑の騎士)

 

 

スタッフ。

製作:トビー・ハルブルックス、ジェームズ・M・ジョンストン、デヴィッド・ロウリー、ティム・ヘディントン、テリーサ・スティール・ペイジ
製作総指揮:エドマンド・サンプソン、トーマス・“ダッチ”・デカイ、アーロン・L・ギルバート、マクダラ・ケレハー、オーウェン・イーガン

撮影:アンドリュー・ドロス・パレルモ
プロダクションデザイン:ジェイド・ヒーリー
衣装デザイン:マウゴシャ・トゥルジャンスカ
音楽:ダニエル・ハート

 

 

『グリーン・ナイト』を鑑賞。
中世イギリス、騎士になれていない王の甥が緑の騎士の呪いに立ち向かうダーク・ファンタジー・アドベンチャー。
今作はこの時期ぴったりの裏クリスマス映画。だって、贈り物は呪い、って話だもんで。
14世紀に書かれた叙事詩、奇譚『サー・ガウェインと緑の騎士』を『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』、『さらば愛しきアウトロー』の異才デヴィッド・ロウリーが監督・脚本で、異色のファンタジー騎士物語に仕立て上げた。
ベースは6世紀頃に書かれた、あの名剣エクスカリバーを抜いたアーサー王と円卓の騎士。そのスピンオフで、怪奇なるおとぎ話。
劇中で重要な呪いは、狂気のゲームとして発生する。ゲームは「緑の騎士の体に剣で一振りだけ加えよ。だが、一年後のクリスマスに、同じ一振りをその者に返す」というもの。つまり、その一振りで小さな傷をつければ力の無さと臆病であること示し、その名は地に落ちる。大きな傷をつければ緑の騎士は生き残り、一年後に同じ傷を負い、命が地に落ちかねない。ゲームを逃げれば、緑の騎士が何をしでかすか分からない。さぁ、どうする? ということ。
主演は、『スラムドッグ$ミリオネア』、『ホテル・ムンバイ』のデヴ・パテル。この腐った貴族的な顔立ちがこの映画を軽くする。若きアダム・ドライバーという感じ。インド系イギリス人であることは一つの仕掛けにもなっている。さて、この仕掛けにあなたは気づけるかしら。
脇を『リリーのすべて』のアリシア・ヴィカンダーは映画に色と涙の花を飾り、『華麗なるギャツビー』のジョエル・エドガートンはその威厳を見せ、バリー・コーガンがその自在ぶりで腑をえぐる。
その顔顔顔がこの映画に挿絵を添える。
植物の怪物グリーン・ナイトの造形もいいのよね。この名自身が仕掛けでもあったり。
そう、これけっこう謎解き遊びなのよ。
なにしろ、呪いはゲームとして行われるから。遊びのはずなのに、本気でやる命がけの状態になる。呪いは誰も見てないし、しょせん遊びなのだし……でも、それを本気で守れるのか、騎士道の高潔さと愚かさを同時に描き出している。約束(大きいのと小さいのと)について話でもある。
美術の素晴らしさは、やっぱ映画の花よね。それを暗さギリギリの幽静かつ幽艶なるルックで撮影し、中世魔術の時代へ時間旅行をさせてくれる。
ファンタジックな外連味の映像はオープニングからバシバシ。
そうそう、溝口健二の世界がオマージュされていたり。
映画の持つ広がりを暗闇と余白でヒタヒタに浸らせてくれる贅沢。
映画館のスクリーンと向き合うってこういう幽境に至る楽しみよね。
中世騎士物語で怪物や魔法、盗賊や幽霊は出てきますが、剣で戦うシーンはほんのちょっぴりしかないけどね。知恵と勇気と覚悟で切り抜ける。
大人のRPG、重要アイテムは、緑の帯。さて、これをくれたのは誰だったか、これが仕掛けのヒント。
血や火で始まり、白い世界が緑の森や怪物に染められていく。赤と白と緑。この配色もクリスマス。
なんて、ダークで素敵なクリスマスプレゼントなんでしょう。
お見事!
その手だけが知っている頭作。




 

おまけ。

原題は、『THE GREEN KNIGHT』。
『緑の騎士』。

 

2021年の作品。

 

製作国:アメリカ / カナダ / アイルランド
上映時間:130分
映倫:G

 

配給:トランスフォーマー 

 

A24製作による本格的ファンタジー映画なので、そのブランド力がこういうじっくりアートなジャンル映画を送り出せるのだろう。

 

 

 

 

グリーン・ナイト の映画情報 - Yahoo!映画

映画『グリーン・ナイト』ネタバレ!海外が絶賛したエンディングと感想「人生の糧となる名作である」 - EIGASKI

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圧倒的な映像美と壮大な世界が広がる『グリーン・ナイト』特報映像 | cinemacafe.net

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ややネタバレ。

中盤の頭探しは、溝口健二の『雨月物語』へのオマージュだろうね。

 

原作は、けっこう話が違うそう。
サー・ガウェインは、かなり有名な騎士。
(これはアーサー王の円卓の騎士を知っていると分かります)
彼はゲームの呪いを受け、最後、緑の騎士の前で命乞いをいて助かる。
命を守るお守りである緑の帯は、恥をさらすことを示すものとなり、その後、ガウェインは緑の帯を巻き続けることになるという、騎士なんてしょせんそんなものブラック・コメディ寄りの話だそう。

 

ウィニフレッドも人物としては出てこないそう。
他の伝説には出てくる人物で、原作には地名で出てくるので、そこからインスパイアされてつくったシーンだそう。

 

緑の騎士も特殊メイクだったり、マットペインティングや遠近特殊撮影などのアナログ手法をCGと組み合わせて、かなり使っている。

 

 

 

 

 

 

ネタバレ。

デヴ・パテルのキャスティングは、ガウェインの母、魔術師である王の妹の出自を示すものよね。先代の王が冒険で見染めた側室ってとこだろう。
もしかしたら、ロマなんじゃないかしら。
つまり、すべては魔術師の母が息子の心を入れ消させる、王にふさわしい者へと変わってもらうための仕掛けだった。
だから、ゲームと儀式が、交互にクロス・カッティングされる。
呪いは母からのプレゼント。

ガウェインの母は、緑の騎士を召還したのか、緑の騎士にお願いしたのか。

キツネは母かしら?

モーガン・ウフェイは原作では叔母で魔術師だそう。

裏を読めば、王は、この中で一番いらなくて指名できるヤツ、あ、いた!ガウェイン!! という状況だったり。

王族の暮らししかしてこなかった甘ちゃんガウェインは、逃げて一から自分だけで生活することに加えて、国を滅ぼしたかもしれない(首を落としても死なない化け物ですから)罪悪感を抱えていくのは、最悪の地獄だと思い、いよいよ自殺するかないかぁ、という地獄道中に出るしかない。
(みんなが劇で知ってるから町を出ないとならない状況だし)

まだ、緑の騎士との約束守って殺されれば、母は守れるか、ぐらいの選択肢ぐらいしかない。

 

原作の皮肉から、クリスマス話として、説教譚や成長譚にしたんだろうね。

 

血についての話でもある。
そのふるまいで王となれぬ外の血を、そのストーリーで王に求めさせれば、その地は頂へと至る。
最後、王冠で遊ぶ子は、ガウェインの子だろう。
それは円環する。
映画内で、回転するカメラで時間経過を示すように。

 

頂き、頭についての話でもある。
緑の騎士が頭を落とされた状態は、ガウェインの現況でもある。
王冠が降りてくるところから映画は始まる。

頭はこの映画のモチーフ。

そして、持つということも、この映画のモチーフ。
持てない状態にもなる。

緑の帯も手で握るなど持る仕草を示される。

この緑の騎士はクリスマス・ツリーと見ることもできるはず。
だから、斧を持ってくる。
ガウェインは斧=自らを殺すものを持っていく。
それを奪われる。
だが、骸骨を手に入れ、取り戻す。

最後、幼子は王冠をもてあそぶ。

緑の騎士がクリスマスツリーでもあり、王冠はクリスマス・ツリーの星でもある。

ちょうど、『ガーディン・オブ・ギャラクシー ホリデースペシャル』でも、グルートがクリスマスツリーになるシーンがある。

はたして、ガウェインが最後見たのは『最後の誘惑』と同じあり得たかもしれない世界なのか、真面目に生きてればあり得たかもしれない世界なのか。
それとも、実際、これから生きていく未来を見るということなのか。
ラストの王冠をもてあそぶ子供を見ると、最後の未来を知って生きることで、悔い改めて、刹那の快感ではなく、積み重なる喜びを築き上げていく(最後、自分は殺されるが、周りを生かすことは出来る可能性がある)
ガウェインよ、これはプレゼント(それは、短い栄光と最後のプレゼントを用意させてやる)という皮肉とも取れる。

 

 

 

 

 

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