で、ロードショーでは、どうでしょう? 第2270回。
「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」
『プチ・二コラ パリがくれた幸せ』
親友同士でもある原作ゴシニと絵のサンペの人生と、彼らが生み出した『プチ・ニコラ』の物語を交えて語るコメディ・ドラマ・アニメ。
フランスで50年以上愛され続ける児童書『プチ・ニコラ』を初アニメ映画化。
原作のイラストレーターであるサンペがグラフィッククリエイターとして参加。
2022年アヌシー国際アニメーション映画祭で最高賞にあたるクリスタル賞を受賞。
物語。
60年代のパリ。
イラストレーターのジャン=ジャック・サンペと作家のルネ・ゴシニは、ニコラという少年のキャラクターに命を吹き込む。
いたずら好きなニコラがクラスメイトたちと織り成す愉快な日々を描きながら、サンペは自分が得られなかった幸せな少年時代を追体験していく。
一方、物語を書くゴシニも、ある悲劇を経てきていた。
原作:ルネ・ゴシニ、ジャン=ジャック・サンペ
脚本:アンヌ・ゴシニ、ミシェル・フェスレール
出演。(オリジナルキャスト)<日本語吹替>
ルネ・ゴシニ (アラン・シャバ)<堀内賢雄>
ジャン=ジャック・サンペ (ローラン・ラフィット)<小野大輔>
シモン・ファリ
二コラ <小市眞琴>
ママ <井上喜久子>
パパ <三上哲>
スタッフ
監督:アマンディーヌ・フルドン、バンジャマン・マスブル
アニメーション監督:ジュリエット・ロラン
製作:アトン・スマーシュ、リリアン・エシュ、セドリック・ピロ、クリステル・エノン
音楽:ルドビック・ブールス
『プチ・二コラ パリがくれた幸せ』を鑑賞。
1960年代フランス、原作者2人の人生と彼らの『プチ・ニコラ』の物語が交錯するコメディ・ドラマ・アニメ。
フランスで50年以上愛され続ける児童書『プチ・ニコラ』を初アニメ映画化。(すでに実写映画『プチ・ニコラ』はある。監督はローラン・ティラール)。
いわば、『サザエさん』と長谷川町子の人生を重ねたような感じです。
今作は、2022年アヌシー国際アニメーション映画祭で最高賞のクリスタル賞を受賞。
物語担当ルネ・ゴシニと絵担当ジャン=ジャック・サンペのそれぞれの人生の始まりと児童書『プチ・ニコラ』の誕生とを重ねていく実に凝った構造。二人の人生のアニメと『プチ・ニコラ』を原作としたアニメ、そして、ニコラが二人の日々に混じっていくアニメの三層の構造がシームレスかつなめらかに繋げて、子供でも理解できる、作品の精神を引き継いでいる。(『おもひでぽろぽろ』っぽい感じです)
それは、二人の大人の難しい政治的状況、戦争や貧しさを寓話のように見せる。
よく出来たアニメはそのスタイル自身が物語を担っているもの。今作はその点でも非常に優れている。『プチ・ニコラ』部分は独特の表現になっており、画面の余白が多い。『かぐや姫の物語』の方向に近い。そこに色が垂らされて、動くいていく様は美しくてうっとり。色が動くアニメーションはアートな短編でしか見たことがないですが、それがとても自然に物語に主張せず、空想世界ということを表現している。
ささやかな日常とその日常を壊す政治的出来事が地続きに並べられているのに、全体としては、賑やかで静かな繰り返される日々のドラマとなっている、この語りの素晴らしさ。
その空気に、シンプルな笑いが沁みて、劇場も笑い声が包んでいた。
子供に見せたいという送り手の意図が86分に詰め込まれています。
宮崎駿の影響をよく見かけますが、今作には高畑勲の影響を感じます。
本当に小さくなったニコラが二人の日々に入り込むことで、驚きのアニメーションで飽きさせない。
サンペが音楽家志望だったので、音楽も快い。
ことさら、その功績を広げず、ただ事実として描くところもよいです。
二人の友情、ニコラの幼い友情がキラキラと流れる。
物語も事実も絵となることで永遠になる机作。
おまけ。
原題は、『Le petit Nicolas: Qu'est-ce qu'on attend pour etre heureux?』
『小さなニコラ:幸せになるために何を待っているの?』。
2022年の作品。
製作国:フランス
上映時間:86分
映倫:G
配給:オープンセサミ、フルモテルモ
ややネタバレ。
元は実写とアニメを混ぜて作られる予定だったそう。