菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

日々の悶々を、はらはらほろほろ。

白鯨は吠える? 『ザ・ホエール』

2023年04月21日 00時00分15秒 | 映画(公開映画)

で、ロードショーでは、どうでしょう? 第2225回。


「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」

 

 

 

 

 

『ザ・ホエール』

 

 

 

絶望から引きこもりと過食で体重200キロ超となった中年男が娘との絆を取り戻そうするドラマ。

アカデミー賞にて主演男優賞を受賞。

主演は、『タイムトラベラー きのうから来た恋人』、『原始のマン』、『ハムナプトラ』シリーズのブレンダン・フレイザー。
共演は、ホン・チャウ、タイ・シンプキンス、セイディー・シンク、サマンサ・モートン。

 

監督は、『レスラー』、『ブラック・スワン』のダーレン・アロノフスキー。

 

 

物語。

国語講師チャーリーは、ある出来事から過食を繰り返し、200キロを超える肥満体となり、彼の心臓は危ないところまで来ていた。
チャーリーが頼りにする看護師の友人リズの言葉ももはや彼には届かない。
彼は離婚した8歳以来疎遠となって17歳となった娘エリーとの関係を修復しようとする。

原作戯曲・脚本:サミュエル・D・ハンター

 

出演。

ブレンダン・フレイザー (チャーリー)

セイディー・シンク (エリー/娘)
ホン・チャウ (リズ/看護師)
タイ・シンプキンス (トーマス/宣教師)
サマンサ・モートン (メアリー/妻)

 

 

スタッフ。

製作:ジェレミー・ドーソン、アリ・ハンデル、ダーレン・アロノフスキー
製作総指揮:スコット・フランクリン、タイソン・ビドナー
キャスティング:メアリー・ヴァーニュー、リンジー・グレアム=アハノニュ

撮影:マシュー・リバティーク
プロダクションデザイン:マーク・フリードバーグ、ロバート・ピゾーチャ
衣装デザイン:ダニー・グリッカー

編集:アンドリュー・ワイスブラム
音楽:ロブ・シモンセン

 

 

 

 

『ザ・ホエール』を鑑賞。
現代アメリカ、絶望から過食と引きこもりで極度の肥満症となってしまった中年男が娘との絆を取り戻そうするドラマ。
変奏モンスター映画でもある。だが、モンスターはこの肉の塊となった男だけではないところが、肝。
監督は、『レクイエム・フォー・ドリーム』、『ブラック・スワン』のダーレン・アロノフスキーなので、『π』、『レスラー』でも近い題材を扱い、体を蝕む心、心を蝕む体と、何度も描いてきたテーマを、増殖させ、その肉に映し上げた。
アカデミー賞にて主演男優賞を受賞したのは、まさに復活劇を果たした、『ゴッド・アンド・モンスター』、『ハムナプトラ』シリーズのブレンダン・フレイザー。モンスターと向き合ってきた彼だからこその表現といえるのではなかろうか。「ごめん」と謝りながらゆっくりと自分を追い詰めていく。
『ザ・メニュー』のホン・チャウが素晴らしく、重みのあるキャラクターの複雑さを体現する。短いながらサマンサ・モートンが針を刺す。若手はタイ・シンプキンス、セイディー・シンクは悪くないが、大人キャストがうますぎて、その力の差が少し見える。物語を見てる分は邪魔しない高いレベルなのだが、周りが上手すぎるのよ。
元の戯曲と脚色もしたサミュエル・D・ハンターが国語教師だった自分を入れ込み(自伝ではないそう)ながら書いた物語をアロノフスキーが10年かけて、ようやく実を結んだそう。ただかかったのはキャスティングだそうですから。
そして、それを見せつけ続ける特殊メイクの素晴らしさに息を飲む。アカデミー賞でメイクアップ賞を受賞している。
ほぼ室内だけで進むのは、戯曲の映画化だからだが、だからこその部屋の外に感じる空間と回想での広がりで息をつかせるし、その肉体と映画的な画面づくりが映画にする。撮影は名手で『π』からの盟友マシュー・リバティーク(『アイアンマン』シリーズなど)。
内容的には、これまた戯曲が原作の『The Son 息子』の反転ともいえるし、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』ともつながる。
だが、そこに在るのは、強烈な宗教的な要素、そこに潜っていくメルヴィルの『白鯨』への言及。劇中でエッセイになって語られるので、必要な部分は説明してくれます。くれますが、『白鯨』がもつ西洋キリスト教社会へのメタファーがなかなかに興味深い。特に鯨の持つ神聖さが関わってくる。単純に200キロ超の肥満男チャーリーが鯨であるならば、話は簡単なのだが。もちろん、その部分もある。だが、エッセイでは、チャーリーを二つのものに例えているように読み取れる。片足を喰われたエイハブ船長にも白鯨にも。(チャーリーの海での過去もあるしね)
映画的には、チャーリーの部屋も鯨に見える。それは[ピノキオ』とピノキオとゼペットじいさんが飲み込まれた鯨の腹の中にも見えるのだ。
部屋の撮影が素晴らしく、画面はスタンダードサイズなので、息苦しくも対象が絞られ、ミステリアスさを醸し出す。船の中にいるようにも感じてくる。
今作は、それぞれが二つの意味を持つように語られているとも言える。
ちなみに、小説『白鯨』の原題は初版(1851年)英国版が『The Whale』、米国版が『Moby-Dick; or, The Whale』だったりする。(現在は『Moby-Dick; or The White Whale』=『モビーディックまたは白鯨』が普及している)
曜日で、章立てされています。この曜日ってところもキリスト教要素。
黒い画面とホワイトフェイドも意味深いよね。だって、冒頭があれから始まるものね。
実際の海とネットの海も重なる。
あまり言及されているのを見ていないが、がっつり人に見られることと神に見られることについても描いていく。やはり醜に向き合うものを日本では二の足を踏ませるからだろうかね。
そのために娘と若者は美的なキャストを配されているんじゃないかな。
吠えるホエールの後悔と航海、呵責と過食の皿作。



 

 

 

おまけ。

原題は、『THE WHALE』。
『その鯨』。

 

2022年の作品。


製作国:アメリカ
上映時間:117分
映倫:PG12

 

配給:キノフィルムズ  


 

『ギルバート・グレイプ』のお母さんを思い出すよね。

 

 

 

 

 

ザ・ホエール | あらすじ・内容・スタッフ・キャスト・作品・上映情報 - 映画ナタリー

ザ・ホエール : 作品情報 - 映画.com

The Whale (2022) - Posters — The Movie Database (TMDB)

The Whale' de Darren Aronofsky. Nuevo póster y trailer.

daytona 🦭🏄‍♂️ on Twitter:

The Whale' Poster by Kurizura Art | Displate

The Whale' Poster by Bo Kev | Displate

The Whale – The Savoy Theater

The Whale Movie Poster the Mummy Inspired High Quality - Etsy Canada

 

 

 

 

ややネタバレ。

ゲイと中華系と部屋だと、『ノック 終末の訪問者』とも重なる。

 

 

 

 

 

 

ネタバレ。

白鯨とゲイの響きが重なった偶然は日本人にだけ少し違うイメージを見せるよね

過食と呵責の響きも。

 

チャーリーは食べることにより、緩やかな死を試みているようにも見える。

 

エイハブ船長が乗ったピークォド号は日本沖でモビィ・ディックを発見している。

 

鳥の餌皿を割ったのは誰か?


 

舞台版のダイジェスト映像CM
MONTAGE: The Whale
https://www.youtube.com/watch?v=5701Zhte3-w

 

 

 

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