で、ロードショーでは、どうでしょう? 第1789回。
「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」
『AK-47 最強の銃 誕生の秘密』
史上最も大量に製造・拡散されたアサルトライフル"AK-47"を開発者ミハイル・カラシニコフが開発するまでを描いた伝記ドラマ。
主演は、『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』のユーリー・ボリソフ。
監督は、コンスタンティン・ブスロフ。
物語。
1941年、独ソ戦争(大祖国戦争)下のソ連。
戦車ナビゲーターの一兵卒ミハイル・カラシニコフは戦闘中に被弾し、重傷を負う。
前線から撤退する。その撤退の警護をする士官の背中に新しいアサルトライフルを見る。
撤退中に独兵と遭遇するが、戦闘中に、その銃の欠陥を目にした彼は、病院で新しい銃のスケッチを描く。それはまだただのアイディアに過ぎなかった。
脚本:セルゲイ・ボドロフ、アナトリー・ウソフ
脚本協力:アレクセイ・ボロダチョフ
原案:セルゲイ・ゴルボノフ、
出演。
ユーリー・ボリソフ (ミハイル・カラシニコフ)
オルガ・ラーマン (エカテリーナ)
アルトゥール・スモリアニノフ (リューティ)
ディミトリー・ボクダン (スダエフ)
マクシム・ビットゥコフ
バレリー・バリノフ
ビタリ・カエフ
アレクセイ・ベルトコフ
アナトリー・ロボトスキー (グルコフ)
スタッフ。
製作:コンスタンティン・ブスロフ セルゲイ・ボドロフ
撮影:マキシム・シンコレンコ、レヴァン・カパナツェ
美術:エヴァンジェリー・カチャノフ
編集:マルガリータ・スミルノヴァ
音楽:セルゲイ・スターン
『AK-47 最強の銃 誕生の秘密』を鑑賞。
40年代ソ連、史上最も作られ、半世紀経っても現役の名銃"AK-47"開発者ミハイル・カラシニコフを描く伝記戦時ドラマ。
開発もの。主人公の人格や内面も描かれる。定番の現在と少年時代の回想の二層構造。不思議なもので、回想の入り方にもロシア味がある。特に描いている時代のせいではあるが。
兵器であることで、心がぞわぞわし続ける。そこには批判性がないからだが。実際、構成的には『風立ちぬ』と変わらないのだから。でも、こちらはプロパガンダに思える。名銃であることになんの疑いもないことや象徴化がなされないがゆえ。とにかくまっすぐ、いいモノを作りたいという男に寄り添い続けるから。この描き方で犯罪ものとかつくったらどう見えるかな。銃のイメージアップがされなくもない。
ユーリー・ボリソフの顔が強くていい。脇キャラ愛がそこそこある。
一番の見どころは銃を作ることの難しさ。そこを描く美術の素晴らしさ。
ロシアの広さに慄く。
いいものを作るときに見いだされる哲学、洗練していく様にはグッと来てしまう。
正しく作られたものが正しく機能することの美しさ。
題材との向き合い方に心がグラグラする弾作。
おまけ。
原題は、『Kalashnikov』。
『カラシニコフ』。
国際題は、『AK-47』。
製作国:ロシア
上映時間:104分
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
「のむコレ2020」(20年10月9日~/東京・シネマート新宿、大阪・シネマート心斎橋)上映作品。
ユーリー・ボリソフは、『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』の装填手イオノフ役。
なので、最初の戦闘で、装填手が死んでのは、ちょっと笑ってしまった。
ややネタバレ。
もちろん、映画には出てこないが。
カラシニコフは、AKが犯罪、テロリズム、紛争で用いられることが多い事実について、「祖国を守るために銃を作っただけだ。AK-47のせいで人々が死んでいる原因は政治家にある」と述べている。
日本の漫画で少女が銃を持っているのを見て、「子供に銃を持たせちゃいかんよ!」とコメントしている。
ネタバレ。
偉人をクリーンに描くのは昔からあるが、これもその一本。
カラシニコフは婚外子がいたり、親はシベリア送りにされていたり、かなり厳しい人生を歩んできた。
周りがいい人でしたレベルでやっていけたみたいになってるし、ユーモアで隠しているけど、かなりやばい思考の持ち主、でなければ、そこまでの成果を残してないのに開発をし続けられるわけもなし。
兄も一瞬で終わりで終わりだしね。
開発ものとして、具体的な問題と解決もほぼ描かれず。
機械的な興奮もう薄め。
ある意味ですごく普通のドラマ。
ただ、戦闘シーンがしっかりしていたり、銃の描写の丁寧さ、恋愛の小ネタなどで、誰でもわかるところで補足しているので、見ていられる。
すごくよくできた2時間ドラマ。
ただ、現代にここまでまっすぐなプロパガンダ的な作品を観ることで生まれる、心のざわつきを逆に反転させて、興味深かった。
AK-47について。
最初にカラシニコフが作るのはカービン銃。
薬量を抑え反動を軽減した中間弾薬の一種である新型弾薬7.62x39mm弾を用いるセミオートマチック・カービン。
競技会で不採用となり、最終的にセルゲイ・シモノフの設計案が残り、SKSカービンとして採用される。
アサルトライフルの設計に移行し、1946年にAK-46設計案が最初の審査に合格。
さらに1年を費やし改良を進め、1948年に最優秀設計案として限定先行量産が決定した。
軍での試験運用を経て、1949年、制式採用された。
戦車兵下士官だったカラシニコフは設計の専門教育受けていなかったため、AK-47設計の際も正しい設計図面を描けなかった。彼に代わって図面を描いたのは、後に妻となる女性技師エカチェリーナ・ヴィクトロヴナ・モイセーエワ(Ekaterina Viktorovna Moiseyeva)。
当初の制式名称は「7.62mm アフトマート・カラシニコバ」。「AK-47」の呼称は、後にいくつもの改良型が登場したため、それらと区別するためのもの。1947年制だからか、46の改良型だからか。
現在は、さらにカラシニコフ自身が改良したAKMが主流。(AK Modernizirovannyj、「近代化カラシニコフ自動小銃」の意)
AKMは1959年から正式採用。
初期の7.62mm弾の威力が高いため、初期型も今も一部で使われている。(現在のAK-47の弾は5.45x39mm弾を使用するため)
カラシニコフはカラシニコバを設計するにあたって、開発当時、専門教育・高等教育を受けていない新兵達にも取り扱いが容易な様に、彼らの気持ちになって様々な工夫をしたと述べている。
映画などで見かける短いタイプは銃床が折りたためるAKS-47で、Sは「Skladnoy」の略で「折り畳みの」という意味。環境が厳しいところの軍に配備された。
アレクセイ・イヴァーノヴィチ・スダーエフが死亡したのは1946年で32才。
彼が設計したのはPPS(短機関銃)とAS-44(自動小銃)。AS-44は重さのために、最終的には不採用になっている。その機構の一部はAK-47に用いられている。
(Wikiより)
余談だが、フョードル・ヴァシーリエヴィチ・トカレフは、1933年 - 開発に携わったTT-33拳銃が正式採用された。ヤクザものなど出て来るのは、東欧や中国、北朝鮮でライセンス契約されて大量に制作されていたのと安全装置がないなど過酷な自然環境でも作動するように構造がシンプルなため、壊れにくく、修理しやすかったためなどの条件による。
その後継機であるマカレフは、ニコライ・フョードロヴィチ・マカロフによるもので、1951年にソ連軍に正式採用されている。
しかし、銃は開発者の名前をそのままつけることが多いんだよなぁ。
ウィンチェスターとか。