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菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

日々の悶々を、はらはらほろほろ。

耳に念仏。 『バーバリアン怪奇映画特殊音響効果製作所』

2013年11月02日 00時03分56秒 | 映画(公開映画)

で、ロードショーでは、どうでしょう? 第491回。


「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」







『バーバリアン怪奇映画特殊音響効果製作所』




ジェラルメ国際ファンタスティカ映画祭(前身はアヴォリアッツ国際ファンタスティック映画祭)と並ぶ世界最大の怪奇映画祭、シッチェス・カタロニア国際映画祭。
略して、シッチェス映画祭として知られるが、そこで評価を得た6作品をシッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション2013として、公開した、その中の一本。


タイトルがいい。
長いし、そのまんまって感じですが。
でも、中見ると、まんまじゃないんですよね。
そこが残念。
実は、特殊音響製作所ではない。
原題は『Berberian Sound Studio』なので、『バーバリアン音響スタジオ』だけ。
蛮人を意味するバーアバリンの綴りは“Barbarian”なので、地名なのかしら?
イタリア語とかラテン語なのか?

このスタジオが主役とも言えます。
デザインがいいのよ。
美術は、サラ・フィンレイ。





内容は、あるイタリアの怪奇映画のSEとアフレコをやることになったイギリス人録音技師のお話。
スタジオの名前がバーバリアン・スタジオ。
遠慮がちなイギリス人が言葉の通じない上に、イタリアのB級映画のスタッフに強く言えずに困るので、ちょっと親近感が浮かびます。
しかも、どうやら、この録音技師は怪奇映画が得意なわけじゃない。
その細き仕事ぶりを買われて監督が抜擢したらしい。

『バートン・フィンク』の録音技師バージョンという雰囲気。

 

少し前のヨーロッパ、イギリス人録音技師ギルデロイが、初めて訪れるイタリアのバーバリアン音響スタジオに到着する。ジャンカルロ・サンティーニという風変わりなイタリア人監督に腕を見込まれ、サウンド・ミキシングを依頼されたのだ。
彼の新作『呪われた乗馬学校』は、残虐な魔女が復活して女子生徒たちを血祭りにするホラー映画で、ホラーが初めてのギルデロイは知らされておらず面食らってしまう。
高圧的態度のプロデューサー、高尚なことをまくし立てる女好きのサンティーニ、不機嫌な美人秘書、ギルデロイはろくに英語も通じない彼らに翻弄され、孤立を深め、極度の精神的混乱に陥り、映画と現実の境を曖昧にしていく、というホラー・サスペンス・ドラマ。

 



監督はイギリスの新鋭で脚本も手がけたピーター・ストリックランド。

途中からのアッと驚く映画的な展開が見もの。




60~70年代の映画の空気を捉えた画面の色彩、セピアとエンジ色が入った感じがすごく良いです。
ニック・ノウランドの仕事で、クエイ兄弟の『ピアノチューナー・オブ・アースクエイク』や『ベニャメンタ学院』とかの撮影をしてますね。
アレクサはデジタルカメラの中でも、こういうのが一番合いますね。
この映画の一番は撮影の良さ。
これが映画を引っ張り続ける。
ピーラー・グリーナウェイっぽいモチーフなんかも実によい。







もちろん、リアル・カジモドでありつつジェントルマンもこなす怪優トビー・ジョーンズのバツグンのパフォーマンス、その気持ちの悪さもかなりの割合を占めるのだけど。

あ、ほかのキャストもいい造形と技で良い胡散臭さ。
コジモ・ファスコ、アントニオ・マンチーノ、 ファトゥマ・モハメド、サルヴァトーレ・リ・カウジ、 キアラ・ダンナ、トニア・ソティロプールーなど。


みな、顔がいいのよ。
個性的で、女性たちもね。
音をつけているのは魔女の映画だし。
あ、目を引く美女も出てきますよ。





音響は誰がリーダーか不明だけど、とにかくこの仕事ぶりに拍手を送りたい。

英語にイタリア語にラテン語に歌に特殊音響にアフレコにと音が主役と言っていい作品ですからね。


なにしろ、この映画の一番の凄いところは、残酷シーンがほぼないこと。
でも、全編残酷シーンとも言える。
実は、ほとんどが音をつける作業なので、写っても音がないし、もしくは音だけで、ずっと怪奇シーンを扱っているから。
つまり、雰囲気と状況で恐怖を醸し出していく。


代わりに、バラバラ、ミンチ、カットなど、野菜の残虐シーンはいっぱいあります。


とにかく、『ラジオの時間』のホラー版ではないのです。








かなりいい音響施設で見ないと怖くないかもね。


世にも珍しい映画を見たというその気分と雰囲気に酔える90分強。
怪奇と新奇と映画の音作りに興味があれば、ぜひ。
























おまけ。

ネタバレ。

録音技師の仕事ぶりが今ひとつなのが、ちょっと残念。
0じゃないんですけどね。
音作りはマッシモ&マッシモがいるし、機械の専門家はジョバンニがいるし、ミキサーも。
もうちょっと仕事を見たかったなぁ。

なんでか、プロデューサーが演出しているのは、ダメな映画の感じでもあると思うんでいいのだけど、せっかくのいいキャラの監督がいるのに使いこなさないし。

雰囲気がいいだけにもったいないところ多いのよね。

スタジオから、あるシーン以外、あえて出て行かないのも、たぶん、ギルデロイが呪いか死んだせいで、綴じ込ま得られているって話なんだと思うんだが、あまりにもヒントがないのはどなのかなぁ。
狙いなのはわかるんだけど。
もうちょっと狂気的なところに陥らせて欲しかった。

いいシーンがあるんだけど、使い捨てられていくかのように短くしかないのがもったいない。


近いのは、ジュゼッペ・トルナトーレの『記憶の扉』とかかな。








『呪われた乗馬学校』という邦題はいまひとつな気がする。
あえて、邦題はこうでした、実際にある感じで、狙っているのはわかるけども、怖いけど普通の映画にも勘違いするタイトルをつけないと、ギルデロイが間違えたり、サンティーニ監督の狙いが出てこない気もするんだが。
原題はどうなのかな?
オイラが付けるとしたら、『乗馬学校の魔女』(東洋の魔女的な感じ)とか『馬のいななく夜』とかかな。

でも、この映画中映画のタイトルバックは秀逸でした。
本編もうちょっと見たかったなぁ。





ギルデロイは魔女の呪いによって、映画に取り込まれたのかもしれない。
となると、出てきた中に魔女もいたのかも。



あのイタリア語になったあたりのシークエンスの感じがもうちょっと見たかった。



意外と、録音がモチーフの映画ってちょこちょこあるよね。

『ミッドナイトクロス』、『リスボン物語』、『春の日は過ぎゆく』など。
まぁ、映画関係の職業の中では、主役になる職業としてはあまり多いほどではないけど、妙に印象的な映画が多いです。
邦画にも一本あった気がするなぁ、タイトルが出てこないけど。

近いようで全く違う、ラジオDJってのは、かなり多いんだけどね。







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