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菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

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彼女の唇は震えていた。 『ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択』

2022年04月16日 00時00分14秒 | 俺は好きなんだよ!

【俺は好きなんだよ】第1542回

 

『ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択』(2016)

 

原題は、『CERTAIN WOMEN』。
『或る女たち』。

 

製作国:アメリカ
上映時間:106分

 

スタッフ。

監督:ケリー・ライカート
製作:ニール・コップ、ヴィンセント・サヴィーノ、アニシュ・サヴィアーニ
製作総指揮:トッド・ヘインズ、ラリー・フェセンデン、クリストファー・キャロル、ネイサン・ケリー
原作:マイリー・メロイ
脚本:ケリー・ライカート
撮影:クリストファー・ブロヴェルト
プロダクションデザイン:アンソニー・ガスパーロ
衣装デザイン:エイプリル・ネイピア
編集:ケリー・ライカート
音楽:ジェフ・グレイス

 

 

出演。

ローラ・ダーン  (ローラ・ウェルズ)
ジャレッド・ハリス   (ウィリアム・フラー)
エデレン・マクウィリアムス (フラーの妻)
ジョン・ゲッツ (保安官ローレス)
ジェームズ・ジョーダン (人質交渉スペシャリスト)
ジョシュア・T・フォノカラフィ(アミトゥアーナ)
アシュリー・アトキンソン (秘書)

ミシェル・ウィリアムズ  (ジーナ・ルイス)
ジェームズ・レグロス  (ライアン・ルイス)
サラ・ロディエ   (ガスリー・ルイス)
ルネ・オーベルジョノワ   (アルバート)

リリー・グラッドストーン  (ジェイミー)
クリステン・スチュワート  (エリザベス(ベス)・トラヴィス)

 

 

 

 

物語。

現代、アメリカ北西部モンタナの田舎町。

弁護士ローラ・ウェルズは、頭を抱えていた。
クライアントのフラーが自分の説明に納得してくれなくて、もう八か月になる。
ローラはフラーの訴訟案件は無理だと伝えるが、納得してくれないのだ。

ジーナとライアンは平原に一から自分たちの家を建設していた。
土地の産物である砂岩を使いたいが、所有者は売ってくれるだろうか。夫妻は交渉に向かう。

牧場で冬の間の季節労働に就くジェイミーは、学校の夜間クラスが気になり、黙って入ってみる。
それは全く分からない法律の授業だったが、そこで初めて教える若い弁護士エリザベスが気になる。

 

アメリカの田舎で、3人の女性のそれぞれの日々を描く群像ドラマ。

 

マイリー・メロイの3つの短編小説『Tome』(『トォーム』〔大きくて重い〕学術書、研究書の意味)、『Native Sandstone』(『地産の砂岩』)、『Travis B』(『トラヴィス・B』ベス・トラヴィスの意味)をオムニバスとして映画化。

監督・脚本は、『ウェンディ&ルーシー』のケリー・ライカート。

 

パッケージでは、クリステン・スチュワート、ローラ・ダーン、ミシェル・ウィリアムズがメインのようになっているが、実際は、ローラ・ダーンの弁護士が主人公の話、ミシェル・ウィリアムズの妻を主人公にしたジェームズ・レグロスの夫との話、リリー・グラッドストーンを主人公にしたクリステン・スチュワートと知り合う話の空間と季節で繋がった三章とその後のそれぞれのエピローグで構成されている。

賞などでも、リリー・グラッドストーンは助演扱い(映画のトップクレジットのローラ・ダーン以外助演という扱いのよう)だが、堂々たる主演で、映画テレビで活躍し続けている。パッケージは売らなきゃいけないが、さすがに主演は知られていないとはいえ立てるべきだろう。
しかも、彼女はこの映画の演技で多くの賞を受賞している。
この後のケリー・ライカートの『First Cow』にも出演している。
今作での、彼女の表情は素晴らしく、この映画の印象のすべてをもっていってしまう。

 

アメリカの田舎の女性の立場をその風景と会話であぶりだす。風と寒さが刺さる。それぞれに味わい深く、独特のユーモアと胸に迫る瞬間の宝庫。
その分断を描くために、音楽はほぼなく、環境音が飾る。
最後に陽の光を感じる。

 

小説的な味わいの三本すべてに、繊細な人物描写があり、女性の立場の微妙な部分をしかkりと描きあげており、ケイリー・ライカートの評価をさらに高めた一本となっている。
アメリカの現実の一面が風景と相まって、丁寧に丁寧に写し取られており、その指の一本一本、血管の一本一本の感触まで感じる。
この時点でのケリー・ライカートの3種のドライフルーツのような滋味深い物語を堪能できる。

もしかしたら、このローラ・ダーンを見て、ノア・バームバックは『マリッジ・ストーリー』に起用したのではないか。

 

 

 

受賞歴。

2016年のボストン映画批評家協会賞にて、BSFC Award 最優秀助演女優賞(リリー・グラッドストーン)を受賞。
2017年のウーマン・オブ・アライアンス・映画ジャーナリスツにて、EDA Female Focus Award 最優秀女性脚本家賞(ケリー・ライカート)を受賞。

 

 

 

 

ややネタバレ。

オープニングの長い貨物列車が女性の人生をワンカットで隠喩しており、こういう画を見つけて、映画の冒頭に置ける作家は信用できる。

 

 

 

 

 

ネタバレ。

好みの台詞。

「男だったらよかったら。依頼人も簡単に納得してくれて、お互いストレスもない」

「じゃあ、動物たちが待ってるから」

「俺がこんなになって(刑務所に入って)、あいつ(元妻)はワイオミングの囚人と文通を始めたそうだ。仮釈放になって、今は一緒に暮らしているらしい」

「手紙ってのは救いになるんだ」「どう書いていいか」「特別なことは書かなくていい。短くても、内容はなんだってかまわない。天気のことだっていい。なんでも書いて、ポストに入れてくれればいい」

「さらに寒くなります。たぶんね。服を重ね着してください」

 

最後のルーシーは、ケリー・ライカートの飼い犬で、彼女の作品にちょくちょく出ていた。
亡くなったのかもしれない。

 

これは、映画は女性であるがゆえに届かない言葉についての映画ともいえる。
最後には女性と犯罪者となった男の状態が重ねられる。

刑務所に入って初めて自分の言葉が届くようになる。

夫は「妻がボスだ」と言いながら、妻を下に見ている。
石は何も話さないが、その存在を示し続ける。

動物たちとなら、言葉も交わさず、一緒にいられるのに。

 

ドアのフレーム、窓、鏡、建築物を使って、画面設計がされており、フレーム内の人物が分断されているのを視覚的に表している。

 

 

 

 

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