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菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

日々の悶々を、はらはらほろほろ。

プレッシャー 『プッシャー』

2014年08月26日 00時01分52秒 | 俺は好きなんだよ!
【俺は好きなんだよ】第688回は、『プッシャー』(1997)


原題も、『PUSHER』。
『麻薬の売人』て意味ですね。
VHSでのソフト代は、『プッシャー/麻薬密売人』


上映時間:105分
製作国:デンマーク


スタッフ。
監督:ニコラス・ウィンディング・レフン
脚本:ニコラス・ウィンディング・レフン/イェンス・ダール
撮影:モーテン・ソーボー
 
 
出演。
キム・ボドゥニア
マッツ・ミケルセン
ローラ・ドライスベイク
ラウラ・ドラスベァク


物語。
デンマークのコペンハーゲン。
麻薬密売人(=プッシャー)フランクは、ボスのミロから受けた仕事を相棒のトニーと組んで、商売をしていた。
恋人の娼婦の足抜けもさせてやりたいが、ミロに借金もあり、ままならない。
ある時、フランクは前の仕事仲間から、急な大口の取引をもちかけられる。
ここが勝負どころとばかり、ミロにさらなる借金と取引の話を持ちかける・・・。







デンマークの新鋭ニコラス・ウィンディング・レフンの初監督作品で、麻薬の密売人が闇に落ちていく様を描いたサスペンス・スリラー。




DVDはレンタルでも特典が多く、メイキングに加えて、『プッシャー2』と『プッシャー3』の製作におけるドキュメンタリー映画『ギャンブラー ニコアス・ウィンディング・レフンの苦悩』、短いボリウッド版リメイクのイメージ映像、日本公開時の三部作の予告編が入っている。


『プッシャー』には、イギリス版リメイクもあるが、このボリウッド版が変更されたのだろうか?




『ギャンブラー ニコアス・ウィンディング・レフンの苦悩』は映画製作におけるリアル版『プッシャー』になっており、見ごたえがある。
これは改めて紹介します。




メイキングの中で、低予算映画だったと皆がもらす。
製作予算は600万クローネかかっているそうで、これ日本円で現在のレートだが、1億円にあたり、新人のデビュー作でもこのぐらいはかけるからこそ映画産業が成り立っているのを感じます。
しかも撮影は6週間。

邦画界では、一億円で一ヶ月半はメジャーの標準の映画レベルです。

そりゃ、日本から、なかなか世界に出ていく人がいないわけです。
新人の低予算レベルでしか中堅とかでも作らせてもらえない国ですから。
もちろん、アメリカと比べたら、なん十分の一のレベル。

逆に言えば、それで世界と戦っているコストパフォーマンスの高い技術力のある国ともとれますけどね。

『プッシャー』は金をめぐる話なので、金の話題になるということで。
今の日本で観るからこそ、非常に臨場感ある怖い話になってます。





これは、同名タイトルの短編を長編化したもので、これが流れていたのをたまたまプロデューサーが見かけて、局に電話し、電話番号を教えてもらい、連絡を取り、制作されたという作品。

自国デンマークでヒットし、カンヌでも評判を取ったが、日本では忘れらた映画になっていた。
90年代の流行りのヴァイオレンス映画と新人監督という潮流にうまくはまったとも言えるが、決定的な視点がある。
それは、男のどうしようもなさと女の思いのすれ違い。
しかも、それを環境が阻む。
(相棒に娼婦が恋人でいいのかよ、とからかわれる、と、ほかにも恋人入ると千代ガルが、男は女に惚れ込んでいる。そそいて、女もまた男を頼るがゆえに・・・)

日本のアウトロー映画的な要素でもある。
それがこの若さ(当時27歳)で描き出しているのは渋い。
今作では切羽詰ったヴァイオレンスの方を強調され、その男女の関係はエッセンスだったが、『ドライヴ』ではその男女の関係を前面に出していることで、男女関係を描くのがあまりうまくないというかああまり興味がない、同系統のタランティーノやロドリゲス、ガイ・リッチーと一線を画している。
どちらかというと、ロジャー・エイバリーに近い。
そこに加えて、その強烈な色彩感覚(色盲によるものだと自身が分析している)とレイアウトが、はじめから力のある撮影監督を起用しつつ、変わっても、強烈に主張し続ける強みがある。
モーテン・ソーボー、キューブリックと組んできたラリー・スミスを起用が多い。
『ドライヴ』のみ、ベテランのニュートン・トーマス・サイジェルが撮影しているが。

モーテン・ソーボーの時は、荒々しく躍動感あるカメラワークで闇を見せ、ラリー・スミスの時はかっちりした構図とカメラワークに、見惚れるような照明。
ニュートン・トーマス・サイジェルは夜の美しさと動くカメラの安定感と煌く色彩が素晴らしい。


『プッシャー』トリロジーは生々しさが狙いなので、カメラワークも躍動的で、色味にもどぎつさがある。


独特のリズム感も魅力で、特に音楽でもリズムを強調しています。
使っている80年代アメリカのハードロック的な曲も、ループ感があり、独特のリズムがある。

安っぽい裏社会の生々しいヴァイオレンス、動き回るかmらとどぎつい色彩、80年代アメリカ的ロックと、下手な合わせ方をするとダサくなる要素ばかりなのだが、それを絶妙のセンスでまとめあげているあたりが驚嘆。

なにより、マッツ・ミケルセン(『プッシャー』でデビュー)、トム・ハーディ(『ブロンソン』で初の主演男優賞を受賞し、躍進)、ライアン・ゴズリング(別企画のために会って、意気投合し『ドライヴ』を作る)と男優運の強さが半端じゃない。
ほかにも、今作の主演のキム・ボドゥニアはデンマークでは実力派で、休もうとしたところを口説き落として、主演に起用できることになり、2作目の『ブリーダー』でも『プッシャー』コンビを起用している。
3作目の『Fear X』ではジョン・タートゥーロを起用しており、レフン作品は男優を見る楽しみが常にあり、脇にもそれが反映される。
当然、それに絡む女優の面白さも際立つ。
『プッシャー3』は連続撮影なので、ミロ役のズラッコ・ブリッチが主演。
彼を2作目『ブリーダー』でも起用しており、『2012』、『堕天使のパスポート』などの大作、話題作に出演しています。

撮影は順撮りらしく(『ドライヴ』は違うらしい)、俳優の演技と存在感をかなり重視(『プッシャー』トリロジーや『オンリー・ゴッド』では地元の実際の人々を起用している)していることも俳優たちが生き生きしている要因の一つだろう。

知的かつ好漢であることもある。
これは次に紹介する『ギャンブラー ニコラス・ウィンディング・レフンの苦悩』を見るとよくわかる。
実は、オイラは『ドライヴ』の来日時に、合同インタビュー二酸化させていただき、わずかながら本人と話したが、次作『オンリー・ゴッド』の準備中でタイからの来日で強行軍だったのに、丁寧な受け答えと映画的なことへの反応の鋭さにかなりの好感触だった。








小さい話だからこそのひりひりした焦燥感、デビュー作ならではのざらっとした熱量が、実にいい佳作です。








トリロジーで見ると、裏社会の生き残りと金の問題が浮かび上がってきて、大河的な流れも感じさせてくれる。
3部作域に見れる喜び、同時に、ドキュメンタリー『ギャンブラー』を見れて、実に感慨深い映画鑑賞になる。




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