で、ロードショーでは、どうでしょう? 第2072回。
「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」
『メタモルフォーゼの縁側』
BL漫画をきっかけに孤独な女子高生と老婦人が出会い、友情を育んでいくドラマ。
鶴谷香央理の大ヒット漫画を実写映画化。
主演は、『パシフィック・リム』の芦田愛菜と『マルサの女』の宮本信子。
監督は、『青くて痛くて脆い』の狩山俊輔。
物語。
佐山うららは、地味な高校生。自分に自信が持てず、進路に悩む17歳。
市野井雪は習字教室の先生をする品のよい75歳。
雪は、うららがバイトする本屋で絵に惹かれ、あるBL漫画を手に取る。
雪は漫画の続きが気になり、続きを買いに行くが見当たらず、店員うららに尋ねる。
うららは、BL漫画を堂々と尋ねる老婦人にとまどう。うらら自身もBL漫画が好きだったが、どこか気恥ずかしさを抱えていた。だが、好きが零れて、雪の無邪気な質問に丁寧に説明を始めてしまう。
そんなうららを見て、雪が言う。
「わたし、誰かとこの漫画の話をしたかったの。よかったら、お茶でもしませんか」
原作:鶴谷香央理 『メタモルフォーゼの縁側』(KADOKAWA)
脚本:岡田惠和
出演。
芦田愛菜 (佐山うらら)
宮本信子 (市野井雪)
高橋恭平 (河村紡)
汐谷友希 (橋本英莉)
伊東妙子 (佐山美香)
古川琴音 (コメダ優)
生田智子 (花江)
菊池和澄 (ちまき)
光石研 (沼田)
大岡周太朗 (まさき)
スタッフ。
製作:沢桂一、鳥羽乾二郎、長澤一史
エグゼクティブプロデューサー:伊藤響
プロデューサー:河野英裕、谷戸豊、大倉寛子
制作担当:宇佐美晴久
助監督:保母海里風
記録:黒木ひふみ
撮影:谷康生
照明:白鳥友輔
美術:小池寛
美術デザイン:内田哲也
装飾:寺原ゴイチ
スタイリスト:三好マリコ、宮本茉莉
ヘアメイク:金山貴成
編集:木村悦子
録音:高島良太
音響効果:佐藤祥子
音楽:T字路s
美術デザイン:内田哲也
主題歌:うららと雪 (芦田愛菜と宮本信子)『これさえあれば』
劇中漫画:じゃのめ、鶴谷香央理
『メタモルフォーゼの縁側』を鑑賞。
現代日本、BL漫画好きの老婦人と地味な女高生が58才差の友情を育むドラマ。
鶴谷香央理の大ヒット漫画を実写映画化。
岡田惠和の脚本は得意のマンガ世界に、ある程度、温かい空気を吹きこむ。ややムードに肩入れしすぎたか。説明が多くなり、薄味に。そこがリアルさととらえることもできるかな。劇中漫画をがっつり見せるが、原作通り、激しいカットはないです。急に心の声とかぶち込むなど、語りに統一感がなかったり。テレビのスペシャルドラマを見に行くつもりで行くと作品の身の丈に合うかも。
日常の喜びを映画にしたら、これぐらいの具合が見やすいとも言える。
いい意味で、小品のラベルが似合う。まさに、気楽に見られる。
芦田愛菜の絶妙な地味さ、宮本信子のコミカルな品の良さ。二人のコンビが立体として人物に息を吹き込んでいる。周りもいい人だけの優しい世界を飾る、少々毛羽立ってはいるけど。伊東妙子が少ないながらも際立つ。
友だちと好きを分かち合うシーンの幸福感は充分。この心地よさはなかなかないです。これ、30分ドラマで見たいなぁ。
撮影は過不足なく。突然エモを狙ったショットが浮くが、青春的凸凹のスパイスとも受け入れられる。
美術は予算がなかったあのだろうけど、上手くカバーしている。
音楽が思いに肩入れ。出演者による主題歌がいいね。昔のキャラソンっぽい感じだけど。そこのゆるさも作品の魅力を足している。
好きで応援することがエネルギーをくれ、心がふわっと形を変える。そのメタモルフォーゼで推しが背中を押してくれる。
このご時世の気分を吹き飛ばして、快くしてくれる、オススメしたい一本。
年の差なんて好きと勇気でヒョイの舟作。
おまけ。
2022年の作品。
製作国:日本
上映時間:118分
映倫:G
配給:日活