菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

日々の悶々を、はらはらほろほろ。

映画におけるリアリティ・ラインはy、ドラマティック・ラインはx。

2021年10月20日 00時00分07秒 | 映画のあれこれ

映画にはリアリティ・ラインというのがある。
これは物語内での現象においての現実レベルの度合いのことで、簡単にいえば、神話はリアリティ・ラインが低く、現代の実話は高い。
人力でどのぐらい高さまで飛べるかという感じ。
ジブリなら『耳をすませば』は高く、『ハウルの動く城』が低い。
これは、劇中で変化することもある。(『千と千尋の神隠し』の現世とトンネルの向こうや『火垂るの墓』は大きな事実が明かされたことによって変化する)
語りの状態において変わることもある。(『おもひでぽろぽろ』の現在の大人と子供の頃と空想)
描写の仕方でも変わる。(『ホーホケキョ となりの山田くん』はシーン内でもころころと変わるし、通常シーンは高いが、アクションは低いということもある)
要素で違うこともある。(『シン・ゴジラ』でゴジラ自体は低いが描写は高い。時代設定などもそう)
エピソードの起因(偶然や密接な相関)と結果(不幸の解消、死、成功、ハッピーエンド)にも存在する。(ご都合主義はリアリティ・ラインが低くなる)
モラルや信仰や文化によっても変わる。
ディティールによっても関わる。
中でも人物のリアリティ・ラインは難しい。

そして、もちろん、アニメより実写の方が高い。
CGが難しいのは、この部分と関わるから。

漫画は漫画の、アニメはアニメの、演劇は演劇の、映画は映画の、それぞれのメディアによって独自のリアリティ・ラインを持っており、そこを理解しないで、実写映画化するとおかしなことになることが多い。

 

映画には、ドラマティック・ラインというのもある。
これは、劇中で出来事の度合い(数と激しさ)のこと。
ジブリなら『海が聞こえる』は低く、『もののけ姫』は高い。
アート系の映画は、これが穏やかなことが多い。
大人しいと激しい、濃いと薄い、多いと少ない、と表現してもいい。
キャラクターにもある。(これはリアリティ・ラインと区別するのが難しい部分もある)
ジャンルやスタイルにもある。児童向け、YA(ヤングアダルト)やエルダーなどになると観客のイメージと日常的に触れているメディアのスタイルに左右される。例えば現代であれば児童向けでもYouTube的な速度と数を上げてドラマティック・ラインを高める場合もありえる。
青春を題材にした場合にも現在進行形かノスタルジーとして描くかでドラマティック・ラインは変わる。

エピソードの有り様にも存在する。エピソードの起因(偶然や密接な相関)と結果(不幸の解消、死、成功、ハッピーエンド)にある。(ご都合主義はドラマティック・ラインが高くなる。ご都合主義は使い方次第でリアリティ・ラインも変化する)
設定の場合もある。(『火垂るの墓』は戦時中で戦争という劇的な出来事の中に物語全体がある。加えて最後に明かされる事実がドラマティックの度合いを変える)

このドラマティック・ラインはバランスがとてもとても難しい。

これらは、現実の事件や情報の認知度の高さに左右される。
コロナ禍前に、現代に感染症の世界的なパンデミックを描くとき、スペイン風邪の流行があったので、リアリティ・ラインはやや低くなり、ドラマティック・ラインは高めの設定であったが、現在においてはどちらも度合いが変わる。
医療ドラマが人気と数が増えたことで専門用語の羅列や細部を描いてもリアリティ・ラインは高くならない。刑事ドラマやその中における科学捜査の描き方なども同様。ジャンルの隆盛や発展にもそれはある。

リアリティ・ラインが縦軸(y軸)、ドラマティック・ラインが横軸(x軸)となる。
どちらにも属する要素もある。

では、厚み(z軸)はなんになるか?
まずは、隠喩や引用など、映画独特の技法、現実の反映、時代性や話題性やテーマなどだろう。
この奥行きの部分に、演出、撮影、編集、音楽が深く関わってくる。

そして、演技のリアリティ・ライン、ドラマティック・ラインがある。
これが実はとても重要。

 

なにより、リアリティ・ラインとドラマティック・ラインのどちらもにも見る側のもつ知識が関わってくる。

あと、映画独特の技で現実には見たことはないが映像では見たことがあるものが、長年の熟練を経て、リアリティを持たせられることもあるよね。
飲み物を吹き出すとか、壁ドンとか、ビンタとか、ここにもこのxとyがあるよね。
炭酸が噴き出すのとか、液体を人にかけるのとか。

 

 

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