goo blog サービス終了のお知らせ 

菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

日々の悶々を、はらはらほろほろ。

わたしはあなたでいられない。 『私、オルガ・ヘプナロヴァー』

2023年06月08日 00時00分58秒 | 映画(公開映画)

で、ロードショーでは、どうでしょう? 第2250回。


「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」

 

 

 

 


『私、オルガ・ヘプナロヴァー』

 

 

 

70年代、チェコ最後の死刑囚オルガ・ヘプナロヴァーが、なぜ罪を犯したのかを追うドラマ。

チェコ国内で大きな反響を呼んだロマン・ツィーレクのノンフィクションを基に、実在の22歳の女性死刑囚オルガ・ヘプナロヴァーの心の軌跡を丁寧に描写していく。

ベルリン国際映画祭のパノラマ部門に選出。

 

主演は、『ゆれる人魚』、『マチルダ 禁断の恋』のミハリーナ・オルシャニスカ。

監督は、本作が長編デビューとなるコンビ、トマーシュ・ヴァインレプ&ペトル・カズダ。

 

 

物語。

経済的に恵まれた家庭に育った22歳のオルガ・ヘプナロヴァーは、1973年7月10日、チェコの首都プラハである事件を起こした。
オルガは社会に罰を与えると声明文を書いていた。
心に傷を負った彼女は、自らを「性的障害者」と呼んだ。
何が彼女をそう動かしていったのか。

原作:ロマン・ツィーレク
脚本:トマーシュ・ヴァインレプ、ペトル・カズダ

 

 

出演。

ミハリーナ・オルシャニスカ (オルガ)

マリカ・ソポスカー (イトカ)
クラーラ・メリスコヴァー (母親)
マルチン・ペフラート (ミラ)
マルタ・マズレク (アレナ)

 

 

スタッフ。

製作:トマーシュ・ヴァインレプ、ペトル・カズダ、ヴォイチェフ・フリッチ、マルチン・クレク、シルヴェステル・バナーシュキェウィッツ、マリアン・ウルバン
撮影:アダム・シコラ
編集:ヴォイチェフ・フリッチ
音楽:マリアン・ヴァルガ

 

 

 

『私、オルガ・ヘプナロヴァー』を鑑賞。
70年代、チェコ最後の死刑囚22歳の女性がなぜ罪を犯したのかを追うドラマ。
不理解な社会、利己的な人々へ、募っていく不満、それにより壊れていく一人の女性とも見えるし、同じような女性も彼女だけではないが、なぜ彼女は凶行に手を出したか。
ここに答えはないが、事実がある。
チェコ国内で大きな反響を呼んだロマン・ツィーレクのノンフィクションを基に、実在の22歳の女性死刑囚オルガ・ヘプナロヴァーの心の軌跡を丁寧に描写していく。
一人の個人を描くのだが、フィクションになる一人のシーンは極力なくし、誰かといた姿で素早く細かく描写していく。加えて、成人してからの数年だけに焦点を当てて、細かく素早く、シーンを積み重ねていく。
方法論は真逆だだ、殺人事件の行為だけに焦点を当てた『静かなる叫び』と方向性は似ている。白黒だしね。二作の源流に『鬼火』があるのではないかしら。今作の方は『モンスター』(2003)からの影響も感じます。
監督と脚本は、本作が長編デビューとなるコンビ、トマーシュ・ヴァインレプ&ペトル・カズダで、抑制的に描いたスタイルはなかなか珍しい。このスタイルはこういう題材を扱うのにとてもクレバー。ナレも無いのに、当時の感じがつかめてくる、シーンの選択が実に的確。2016年の映画だが、70年代的雰囲気を映画そのものにも組み込みつつ、その題材と意図により現代映画になっている。次はどういうスタイルで来るのか楽しみ。
タイトルロールで、とても難しい役であるオルガを演じたのは、『ゆれる人魚』、『マチルダ 禁断の恋』のミハリーナ・オルシャニスカ。その野生的な美貌が狂気を際立たせる。現実のオルガも美貌の持ち主だったりする。事実は映画より映画的と言いたくなる。
不寛容と孤独、性的なものが人を壊していく。突き放しもせず擁護もせず。
白黒フィルムを感じる画質(カメラはRed One MX)でカメラワークも70年年代的にしている。方向性は違うけど、リアルな70年代映画の『WANDA/ワンダ』も思い出したわ。
美術の再現も素晴らしく、まるで、当時の実録映画を見ているよう。
説明は少なめだが、ソリッドな編集で、断片を細かい積み重ねることで、説明に変えていく。これにより映画的に心情が見えてくる。もちろん、見る人によってその見え方の角度が変わる。
音楽も最小限。
今作は、観客の目に委ねていく。実際どうだったかの事実は、たぶん原作を読めば出てくるだろうしね。
事件も彼女もそうだが、2016年の映画が今公開されているのも発掘。
現代の目で見ることで距離を持って痛みを見つめる窓作。

 

 

 

おまけ。

原題は、『JA, OLGA HEPNAROVA』。
英語題は、『I, OLGA HEPNAROVA』。
『私、オルガ・ヘプナロヴァー』。


2016年の作品。


製作国:チェコ / ポーランド / スロヴァキア / フランス
形式:B&W
上映時間:105分

 

配給:クレプスキュール フィルム

 

 

受賞歴。

2016年のソフィア国際映画祭にて、最優秀監督賞を受賞。
2017年のチェコ・ライオンにて、最優秀女優賞 (Zenský herecký výkon v hlavní roli)(ミハリーナ・オルシャニスカ)を受賞。

ほかに8つの賞を受賞。

 

 

 

私、オルガ・ヘプナロヴァー : 作品情報 - 映画.com

新作商品 私 オルガ ヘプナロヴァー ミハリナ オルシャニスカ マリカ ソボスカー チラシ zppsu.edu.ph

私、オルガ・ヘプナロヴァー

私、オルガ・ヘプナロヴァー (2016) - 映画やドラマの評価・レビュー情報見るならWATCHA PEDIA

私、オルガ・ヘプナロヴァー

Image gallery for I, Olga Hepnarova - FilmAffinity

Ja, Olga Hepnarová

 

 

 

 

 

ネタバレ。

性的なシーンを顔をみせないことで、消費させていない。

 

オルガ・ヘプナロヴァー(1951~1975)
22歳で、チェコの首都プラハの中心地で、路面電車を待つ人の列にトラックで突っ込み、8人を殺害、12人に怪我を負わせた罪で、チェコスロバキア最後の女性死刑囚として1975年絞首刑になった。
虐待などもあったようで、13歳の頃から鬱病に悩まされており、10代で精神安定剤メプロバメートを過剰摂取による自殺を図る。
精神病院に入院し、集団リンチなどの暴行といじめを受ける。
退院後、一人暮らしをし、会社に勤め、資格を取り、トラック運転手になる。
同性愛者であった。恋人に去られ、孤独を強めていった。

事件の前に彼女は新聞社に犯行声明文を送っている。
これから起こす犯行は、受けた虐待に対する復讐であり、社会へ罰を与えるもの、という内容だった。
自分の罪を軽くすることはその意味を低くするからしないでほしいというとも言っていた。

統合失調症であった(装ったのかも)ようで、ウィロニー(?)というもう一つの人格があり、それが犯行を行ったと言い出す描写がある。

 

 

途中、カメラ目線で観客に、手紙の内容の一部を告げるシーンがある。
トリュフォースタイルとも取れる。
そこだけ異物のように入れられているので、作家のメッセージとして、この個人的な病を社会的偽になりそうなのを、あくまで個人の暴走であると、縮小化する狙いがあるのであろう。

 

犯行後の、冷静さが怖い。

 

『ニトラム』もあったね。

 

 

 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 血から逃れるなら。 『同じ... | トップ | つぶやきのまとめ 6/8 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

映画(公開映画)」カテゴリの最新記事