行政書士・社会保険労務士 大原事務所

人生も多分半ばを過ぎて始めた士業。ボチボチ、そのくせドタバタ毎日が過ぎていく。

駆け込み乗車はお止め下さい

2014-10-26 01:22:57 | 日記・エッセイ・コラム
 この所、近場はバイクか車で行くので、電車に乗ることが少なくなった。
 昨日、久しぶりに電車に乗った。
 自宅の近く、東京の東の端から渋谷まで行く。2時に渋谷で用があったのだが、少し家を出るのが遅れた。改札を抜けてホームに上がるエスカレーターに乗った時、電車が入って来るのが分かった。走った。エスカレーターが長い。ホームが見えた時、まだ発車の気配はなかった。電車の扉は開いている。充分間に合うと思って走るのを止めた。ところがその途端、ピーッと発車の笛がなった。プシューッとドアの閉まる空気音がする。私はあわてて飛び乗ろうとして一瞬ためらった。次の電車でもいいか、と思った。考え直した。時刻は1時過ぎ、余裕はない。この時間は電車の本数が少ない。一本逃すと暫く待つだろう。乗ってしまおう。ところがその一瞬のためらいの為、僅かに電車に飛び込むのが遅れた。ヤバイ、閉まる、と思ってカバンを投げ込むようにして電車に飛び込んだ。もう一度プシューッと音がしてドアが閉まった。肩から上と脚は入ったが腰が扉に挟まれた。身体は半分以上入っている。今さら乗るのをやめる訳には行かない。少し力を入れれば入るだろうと思って肩を張った。ところがこれが入らない。扉の閉まる力は存外に強く身体を締め付ける。私は少し焦って、思いっきり力を込めて体当たりのようにして両方の扉を押す。加えて腰をねじって腕で扉をこじ開けるようにして身体を車内にすべりこませた。
 電車は空いていた。降りる時便利なように少し前方の車両に開いた座席を見つけて座った。仕事の資料を出して、携帯音楽プレーヤーのイヤホンを耳にいれて、その間三、四分。 さっきから車内放送がしつこく同じことを繰り返している。
 「駆け込み乗車はお止め下さい」
一度や二度ではない、手を変え品を変え様々な言葉を付けて駆け込み乗車の注意を繰り返す。曰く、危ないですから、電車が遅れますから、電車が遅れると他のお客様に迷惑ですから、これを録音した女性の声と、車掌さんの肉声で反復する。
 しつこいなあ、と思って気が付いた。
 「そうか、これって多分俺に注意してるんだ」
 確かに駆け込み乗車はいけない。でも、たった一人の客に向かって何度も何度も同じ車内放送を繰り返すと言うのはどうか?変な気もする。気味わるい。
 電車に駆け込もうとして間に合わず扉に挟まれる。以前はこんな時、ドアをもう一度開けてくれる車掌さんが珍しくなかったような気がする。或いは、乗ろうとした電車の扉が閉まってしまう。チックショーなどと小声で言って、中の客に対して乗る気等無かったと言う風に照れ隠しをする。こういう時、昔はもう一度扉をあけてくれなかったろうか?もう一度扉を開けてくれるのだが、そんな事を期待しないで一度乗らない体勢になった身体は、もう一度乗る体勢にかわるのに時間がかかってしまって、乗ろうとするとまた扉は閉まって二重に罰の悪い思いをする。消え入りたいほどに恥ずかしい。電車内の客の何人かはそれに気づいて笑いをこらえている。
 なんか、もう少しそんな余裕があっても良いような気がするのだが。駆け込み乗車はお止め下さい、それは正論。異論はない。でも正論だけの世の中はつまらない。

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