トラブル含みの急ぎの仕事で11時半に家を出て都内へ。
この所、都内へも車で行くことが多く、運動不足を反省しているので、今日は電車。
都営新宿線を神保町で乗り換えて渋谷まで約15分。
空いていたので座った。すると前に若いリクルートスーツの女。就職したばかりか?まだ決まってないのか?それとも今から来年の就活か?
どうでもいいが、容姿は並み。スタイルもいい。只しきりに大きな鏡のようなものを見ながら目をいじっている。アイメイクをしているようだ。ひとしきり目をいじったら、次におもむろにバッグから取り出したのは口紅。大きな鏡の向こうの風景なのでその仕草ははっきりと分からなかった。ただ、その鏡を一度膝の方にずらした時の景色に驚いた。まるで昔のおばさんがやるように上唇と下唇を擦り合わせて口紅を延ばしている。今でもあんなことをするのか?いい加減にしろよ、と思ったが、まあ、いまどき電車内の化粧など珍しくも無い。文句があったとて苦情をいう権利も義務もないような気もする。
さて、彼女、もう一度顔を確認して、少し前髪をいじる。そこで、また目が気になったのか、マスカラというのかなんというのか詳しく知らないが、まつ毛に黒い物を塗ったくりはじめた。
この化粧、神保町で見た時はもうその最中であったから、どこから始めたのかは知らないが、渋谷まで一瞬も止むことはなかった。電車で化粧する女がいるのは知っていた。TVで誰かが「そんな女に限ってブス」といっていたが、今日の女はブスではなかったと思う。只、一生懸命化粧していた割には渋谷で降りた時チラッと見たが、化粧が完成しても、すくなくとも美人ではなかったように思う。神保町で鏡の向こうにチラッとのぞいた時の顔と、見た目あまり変わらなかった。
トラブル含みの仕事は案外すんなり片付いた。
食事をしていなかった。駅に着くと14時半。何処かで外食をと思ったが、打ち合わせの結果をまとめないといけないので、すぐ帰りの電車にのった。
渋谷から乗って多分二駅くらいのところで乗って来たさえない格好のアラサー男が私の前のシートに座った。
実を言うとこの男が今日のメインテーマ。驚いた。この男、なんと鼻毛を抜き始めた。しかも堂々と。手で隠したり、下を向いたりというような事を一切しない。前を向いたまま。全くまわりを意に介さない。一向に抜けないらしく、何度も何度も人差し指と親指をグイグイ鼻の穴に押し込んではクイッとひっぱる。押し込むたびにその力は強くなり、はなの穴は裂けるほどに押し広げられる。これをゆっくり繰り返す。勿論目をそらすが、動作が大きいのでどうしても目に入る。
私は決して上品に育ってはいない。母はしっかりした人だったし、躾も厳しかったが、その甲斐なく、疎にして野であるうえ、自ら恥じてはいるが、いささか卑でさえある。でも、まわりの人が不快になるような事はするな程度の躾はされてから世の中に出てきた。だからさすがに人前で鼻毛は抜かない。
でも、こんな場合、今の社会で
「おい!人前で鼻毛なんぞ抜くんじゃない!」
と注意する人が何人いるのだろうか?
私が気弱なせいかもしれないが、やはり、そんな権利も義務もないような気もする。
とにかく、その鼻毛男が不快で我慢できず、すぐに他の車両に移った。
鼻毛男に比べれば、化粧女など可愛いもの、と思いながら・・・・・・