行政書士・社会保険労務士 大原事務所

人生も多分半ばを過ぎて始めた士業。ボチボチ、そのくせドタバタ毎日が過ぎていく。

新入社員の季節

2013-04-02 15:04:16 | 資格・転職・就職

 昨日から、街で新しいスーツを着た若い男女を見ることが多くなった。新入社員だ。

 会社勤めをしていた頃、4月になると新入社員で電車が混むのに、5月の連休明けくらいからいつもの状態に戻るのが不思議だった。みんな辞めてしまうのかとも思ったがそうでもないだろう。もっとも私の友人の一人は、就職して一週間で毎朝満員電車に乗るのは自分には不可能だ、と言ってサラリーマンを辞めた。

 そういえば私は1976年大学卒業だが、私たちが新人類と言われ始めた世代のはしりだと思う。

 会社より私生活優先

 会社の飲み会は基本的には断る

 残業はしない。(サービス残業なんてもってのほか)

 社員旅行や社内運動会なんてバカバカしい

 というようなことを公然と言い出した世代だ。もっともその後時代はまた少し後戻りして、会社人間が増えていったようにも思う。

 ところで、私の息子も今年就職。私が息子に言ったサラリーマンとしての心得。

 とりあえず10年は文句を言わないで勤めろ

 どんな仕事も10年くらいしないと一人前にはならないし、仕事の面白さもわからない。

 その間会社はお前に給料を払う。お前は仕事を教えて貰いながらお金までもらえる。

そう思うと文句はないだろう。

 仕事に慣れると不満は必ず出てくる。他の会社の方が働きやすそうだ、給料もよさそうだ、その他。でもそれは隣の芝生は云々というやつだ。他の会社は良く見える。ところが、実際に転職してみたところで中に入って少し慣れるとそれなりに悪いところが目立つ。そして、給料は確実に減ることが多い。だから余程の勝算がなければ会社を辞めるな。我慢して、今いる場所でキャリアを積め。お前が本当に優秀なビジネスマンになったとしたら、転職したいと思わなくても他の会社から声がかかる。

 会社の悪口は言うな。言う同僚や先輩が居ても、一緒になって言うな。古い会社なら何十年も勤めている人もいる。会社に誇りを持っている人もいる。そういう人にとっては会社の悪口を言われるのは、自分の人生を否定されるに等しい。

 どんな会社にもあてはまる心得だとは思わない。殆ど詐欺のようないわゆるブラック企業もある。そんな所に何年も居たところで身に付くものは少ない。だから、目をつぶって兎に角働けといいうつもりはない。ただ劣悪な労働条件ではなく、社会保険と労働保険に加入していて、仕事の内容が我慢できるものなら(念のために言うと、自分の好きな仕事で生活できる人など殆どいない)、我慢して続ければキャリアが積める仕事なら、我慢して働けということだ。それで生きがいがないというのなら、仕事は生活の手段だと割り切って、生きがいは仕事の外に見つけることだ。今の仕事をまじめにやっていれば、その仕事の外に生きがいを見つけることもそんなに大変ではなくなると思う。

これは今は自営業の私が、長いサラリーマン生活で知人や先輩から学んだ教訓だ。

 黙って聞いてはいたが、息子がどう理解したのかは分からない。自分に置き換えてみると、二十歳を過ぎたころの私は一人で大きくなったような顔をして、親の言うことなど聞く耳持たなかった。

 まあ、私の言ったことが、息子の心に残ってくれれば良いが、そうでなくても、それはそれでいいような気もする。二十歳を過ぎた人間の生き方の責任を取るのは自分以外にはないのだから。

 最後に社会保険労務士として一言。今の世の中、20年から30年前に比べ、労働環境は格段に厳しくなっている。

私が就職した1980年前後、終身雇用が崩れ始めていたとはいえ、出来れば安定した職場でという考え方がなお支配的な時代だった。それでも転職する人は沢山いたが、正社員から別の会社の正社員へ転職するというのは当たり前だった。職場は変えても職種はかえるなとは言われたが、一度会社を辞めたら、もう一度正社員として雇用されるのが大変だということはなかった。  

だが、今は学校を卒業して、就職して(就職するのすら大変な時代だが)、黙って勤めていればまだいいが、一回このレールから外れると、戻るのが大変な社会になってしまった。  

次の仕事も決まらないで安易に会社を辞めると、もう一度正社員になる道は殆ど閉ざされてしまって、契約社員やフリーターになるしかなくなってしまう。厚生年金には入れず、国民年金や国民健康保険は全額自己負担。それが出来なくて、年金未納や無保険になる人が多い。そうなるとなかなか抜け出せない。だから、今の世の中、正社員として雇用された会社を安易に辞めてはいけない。

 こんな労働環境になった理由の一つは、経済社会が、利益を上げるために、なるべく保証をする必要のない使い捨て労働力を求めているからだろう。

会社にとって、社会保険や労働保険の事業主負担は高額になる。できれば払いたくない。また、一度正社員として雇用すると、辞めてもらうのは大変だ。できれば請負、そうでなくても契約社員やフリーターで労働力を確保できることに越したことはない。

 息子が中学生の時、授業で職場体験というのがあった。中学生が何人かに分かれて、協力してくれる色々な事業所に仕事を体験しに行く。息子は、二、三日、同級生3人で、ある特定郵便局へ行った。実際に特定郵便局の仕事を体験するわけだ。もっとも邪魔になっただけだとは思うが。

その郵便局の局長が中学生たちに言った言葉。

 「いいかい君たち、サラリーマンにとって給料とはなんだと思う?」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 「我慢代だよ!」