もっと小さな缶ビールはないか?探してみた。260mlというのがあった。まだ大きすぎる。さらにスーパーを何軒か覗いて、すると、あった。135ml。小さい。上から見て丸い部分の直径が約50㎜、高さ80㎜。でもこれは売り物か?新製品発売の時サービス品で配る物ではないのか?何回か貰った覚えがある。それが85円。ウーン高いとは思うが仕方ない。少し、ほんの少しあれば良いのだ。すっきりする。よく眠れる。これ以上小さいものはないようだ。
試に2缶買ってきて、どうしても眠れないときに飲んでみた。たった135ml。なるべく心臓を刺激しないようあまり冷やさない。冷蔵庫から出して両方の掌で包むように持って温める。常温より少し冷たい程度にする。以前なら一口にもならない量を少しずつ、身体の反応をみながら飲む。口に含んで苦みを味わう。ビールの飲み方としては邪道かもしれない。昔、ビールは喉で飲むといわれて、以来そうしてきた。でもこの飲み方も悪くない。苦みのなかに風味がある。不味くはないどころか暫く含んでいると、麦芽というのかホップというのか知らないが、舌に染みた苦みが歯茎から口の内壁を伝って香りになって鼻へぬける。ゴクンっと飲み込むと香りが一層強くなった。同時に心臓の裏側をビールが落ちていくのがわかる。食道は心臓のすぐ後ろを通っているらしい。だから心臓の検査のひとつに食道カメラ検査というのがあって、食道にカメラを入れてそこから心臓の状態を見る。これが結構苦しい。胃カメラなど何回も飲んだことがあって平気だが、この食道カメラというのは辛い。先端が胃カメラよりも大きな塊のようなカメラ、これがなかなか呑み込めない。二度やったが、二度目は医者が気をつかってか優しく入れてくるものだからなかなか入らなくて苦しいだけ。一度出してもらってやり直し。
「良いですから、合図したら可能な限り押し込んでもらって大丈夫ですよ」
と言って、やっと入った。
なんて思い出に浸ってビールを味わっている間に、すでに身体はあつくなって、脈も速くなっている。わずかに動悸も感じる。無理もない。最近は洋酒の入ったチョコレートでも酔っ払う程アルコールに弱くなっている。
ここまで15分。さて、僅かなビールもまだ半分しか飲んでいない。どうしたものかと悩むが、脈の速さも動悸も病的な感じはない。第一美味い。残り半分を捨てるのは忍びない。飲むことにした。
さらに15から20分程度かけて、少しずつ、少しずつ口に含んで、体温まで温まる位口に含んで、それからゆっくり飲み込むようにして、全部飲んだ。
飲み終えたあと、脈はさらに少し早くなっている様だ。動悸はあるが、あの身体がゆれるような動悸ではなく、ごく軽い動悸。すぐにベッドに横になって、何時も聞いている落語のCDを流しながら目を閉じた。
大丈夫かな?大丈夫かな?と何度か思ったが、鼓動も動悸もそれ以上ひどくなることはなく、いつの間にか眠っていた。夜中にトイレに起きることもなかった。よく眠れた。さて、135mlくらいなら気持ちよく飲んでもよさそうだ・・・・・・・多分。
2缶しか買ってなかったので、暫くして、また135mlのビールを買いに行った。ところが、これがない。一番小さいので260ml。これ以下はない。いくら探してもない。やはりあれは試飲用を特別に売っていたのだろうか?少し他の店を探してみよう。でも困った。折角良いビールが見つかったのに。残念。
と思ってネットをみたら普通に売っている。こんな小さな缶ビール需要があるんだ。買ってるのはみんな心臓の悪い人?まさかそんなわけない。