行政書士・社会保険労務士 大原事務所

人生も多分半ばを過ぎて始めた士業。ボチボチ、そのくせドタバタ毎日が過ぎていく。

唾石症の話

2012-04-20 16:12:33 | 健康・病気

今度は口の中に何かできた。

 今度は一体何だ、と思った。このところ、毎年のように新しい病気を背負い、そのうち二つは、もうもとに戻ることはない。つまり治らない、と言われている。まあ、生活に極端な支障はないし、その病気ですぐ命がどうのこうのということはないので、それほど深刻になってもいないが、毎月のように所謂総合病院に通うのはいささか荷であるし、その上にまた新しい病気が増えると、紹介状だの、診察の予約だの、検査だの、うんざりする事この上ない。

 そこで今度は一体何なのだ、ということになる。

 口の中に何か尋常でない物ができている。舌をグッと巻くようにして上の顎につけると、(そうだ、昔英語で習ったRの発音をする時の舌の形だ)舌の裏側中央部と下顎の間に筋のようなものがあるが、その下顎に近い部分から骨だか肉だかわからない物が突き出ている。10ミリ程度はある。さわると硬い。痛くはないが、なんだか骨のような芯のある肉の塊が突き出ている。普通に口を閉じていると舌と下あごのくぼみの中にうまく収まって、少し違和感がある程度だ。食事をしても痛くはない。

 放っておく訳にもいかない。かといって、こういうのはどの病院にかかれば良いのかわからない。内科ではないだろう、耳鼻科も違う、外科は怖い、でもなんか口の中を切りそうだから口腔外科ってやつかな?そこまで考えて、丁度歯茎の治療で通っている歯医者さんで訊くことにした。

 とりあえず、歯茎の治療が終わったあと、舌を上に巻くようにしながら

 「これって、何ですかねえ。何科にかかればいいんでしょねえ?」

 実はドキドキしながら訊いている。変な病気だったらどうしよう。少なくとも舌の裏の筋の所に何かできているのは確か。そんな所を切ったら、舌が動かせなくなって、話せなくなるかもしれない。不安の極み。特に近頃心臓が悪い。不整脈がある。そのせいか、緊張すると脈が大きく速くなる。胸が躍るという表現は、わくわくする時の表現だろうが、本当に胸が躍るほどに動悸がひどくなると、ただ気分が悪いだけだ。何しろ心臓の鼓動に合わせて体が揺れるのだから。

 「痛いですか?」

 指の先で突起を触りながら、医者が訊く。

 「まったく」

と私

 「唾石ですね。」

 と医者があっさりと断言した。

 なんでも、唾液の中のカルシュウムが何かの加減で固まってできる石のような物らしい。耳下腺、顎下腺、舌下腺、と唾液の通るルートにはどこにでもできるということだが、私の場合はそのどこかにできたものが、舌下腺の唾液の出口まで押し出されて、詰まった状態だという。

 「ぽろっと、取れることも多いんですけどね」

 といいながら、人差し指と親指を私の口の中に入れて骨のようなでっぱりをつまんで少し動かすようにした。

 「取れそうもないですね、・・・・・済みませんが、今日は唾石の治療は予定になかったので、特に痛くなければ、次回にしてもらえますか?」

 「いいですけど、腫瘍とか、何か悪い病気の心配はないですか?」

 「まあ、絶対心配ないのかといわれると、絶対とは言えないですが、99.9%ないです」

 一週間後に次の予約を取って帰った。口の中が気になるので、意識しなくても、いつの間にか突起を舌先で触ったり、指で触ったりする。痛くないものだから、触り方がだんだん大胆になっていく。すると、二、三日たったころ頃、突起の先が、ヌルっと少し飛び出したような気がした。指先で突起の先端に触れると、確かに肉とは違う感触がある。試にその僅かに飛び出した所を爪の先でひっかけて少し引いてみた。抵抗はあるがズルっと抜けるような気がした。えーい!ままよ、と力を入れてひいた。途端、スポンっと抜けた。痛くもなんともない。但し、抜けた後の舌下腺というのかなんというか、唾石の抜けた後が袋のようにだぶついている。

 ところで、唾石の方はというと、楊枝の倍くらいの太さで、先はとんがっている。長さは13ミリあった。口の中にあったと思えばでかい。とれてすっきりした。とりあえず一安心。この病気での病院通いはしなくてもよさそうだ。

 何となくすぐ捨てる気になれなくて、唾石はとっておいた。一か月くらいたってみてみると、硬く干からびて、大きさも半分くらいになっていた。