行政書士・社会保険労務士 大原事務所

人生も多分半ばを過ぎて始めた士業。ボチボチ、そのくせドタバタ毎日が過ぎていく。

癌病棟とカップ麺

2013-11-26 14:27:23 | 日記・エッセイ・コラム

 以前大塚にあった癌の専門病院に友人が入院した。

 

 入院当初から

 

 「大丈夫治りますよ」

 

 と言われていたので、落ち着いてはいたが、必ず治るのかと問えば、絶対はないと答えるのだから、本人は不安だったに違いない。

 

 私は病院の近くに取引先があったので、そこに行くついでに時々見舞った。病室のベッドサイドに居た時、ふとしたきっかけで隣の患者さんが、知人に話かけてきた。

 

 「どんな病状なの?私は折角手術が終わったのに、リンパ節転移があったからこの前から抗がん剤を入れてるんだ。一週間でワンクール、あと四回しなくてはいけなっくてねえ。やった人によると2回めの終わりくらいから副作用が強くなるって話でねえ。貴方はどんな具合なの?」

 

 知人は少し困ったような顔をして、暫く黙っていたが

 

 「私、病気の話はしないことにしてるから」

 

 と答えた。

 

 「そうだね。話したく無い人もいるよね」

 

 病室で話をしていると他の患者さんに迷惑だと言うので、友人と一緒に屋上に上がった。梅雨前の暖かい日だった。

 

 「お前、病気の話しないのは勝手だけど、それにしても、もう少し愛想のある言い方すればいいのに、同じ病室で毎日顔を合わせるんだから」

 

 と、私はさっきの隣のベッドの人との会話のことを話した。

 

 「他の患者さんと病気の話をする。その人が自分より軽症だと、なんで俺だけが、とガックリする。相手が自分より重症だと、何となくホッとする。どうしてもそうなる。それがたまらなく厭なんだよ」

 

 私は煙草に火をつけた。いい奴だなあ、と思った。

 

 「おい!カップラーメンが食いたい。付き合えよ」

 

 と、友人が言った。

 

 「それは身体によくないだろう」

 

 と、私は止めた。

 

 「死ぬかも知れない病気になって、少しくらい好きなもの食っても罰は当たらないだろう。もし今我慢してカップめんを食わないで死んだら死にきれん」

 

 一階の売店でカップ麺を二つ。食堂でお湯を貰って三分待って食った。私はスープを残したが、友人は一滴残らず飲み干した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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