行政書士・社会保険労務士 大原事務所

人生も多分半ばを過ぎて始めた士業。ボチボチ、そのくせドタバタ毎日が過ぎていく。

拝啓 検針員様

2016-03-16 15:51:55 | 日記・エッセイ・コラム

 ガスとか電気とか水道とかのメーターをチェックしに来る人、検針員という呼び名が正しいのだろうか?別に文句があるのではない。先日びっくりした話。

 自宅で仕事をしている時、昼休みは概ね12:40分から13:40分の間に決めている。TV東京で外国のTVドラマを見るためだ。それに合わせて昼食をとる。

 「CSIシリーズ」とか「ハワイファイブオー」とか、いつも面白いアメリカのTVドラマシリーズを放送している。レンタルショップに行けば借りられるのかも知れないが、最近ずっと遠ざかっている。借りてくると止められなくなって、急に仕事が入って時間がないときも、ついつい全部見てしまうからだ。TVで見る分には見落とせばそれでおしまい。あきらめがつく。だから録画もしない。TV東京の昼に一本。MXTVで週に一本。たまに無料配信のネット放送で一本。ニュース以外のTV放送は、そのくらいが充分で、丁度いい。

 話はもどって、先日「ハワイファイブオー」のシーズン2の最終放送の日の終盤、あと10分でおしまいという山場の時間。窓の外を黒い影が歩く。砂利を踏むジャッ、ジャッという音もする。

 高い塀は無いが、窓の外は我が家の敷地。つまりその誰かは私有地に不法に侵入していることになる。

 でもあまりびっくりはしない。隣家との境は膝より低い位のブロックで仕切られているだけなので、たまに子供が入って来る。ボールが飛び込んで来たり、鬼ごっこで隠れたり、逃げたりするのだろう。歓迎はしないが、近所の子供、咎めもしない。放っておく。

 でもその陰は違った。横の通路から入って来た影は狭い裏庭に入ってきた。遮光カーテンを通して見ると小柄だが大人のようだ。弱い雨が降っている。黒いカッパを着ている。

 何の目的でチャイムも押さないで人の家の敷地に入ってきているのか?これは尋常じゃないと思った。でも「ハワイファイブオー」は今が佳境。最終回の山場。無視してTVを見ていようか?家の中に入ろうとしたら慌てよう。ドアも窓も鍵はかけてある。少し迷ってやはり裏庭の方の窓を開けた。

 「誰だ?」と声を掛けるつもりだった。

 ところが小さな家。黒いカッパの背中はグルッと角を回って反対側の家との境の通路に消えた。

 そのままには出来ない。玄関から回って外へ出て、黒いカッパが通路から出てくるのを待ち伏せしようとした。ただ、こちら側の通路は狭い上に、出口にエアコンや湯沸かし器の室外機があって出来なくはないが通り抜けは辛い。

 すると、その黒いカッパ、踵を返してまた裏庭の方に消えたのだ。今度もその背中が見えただけ。

 これは怪しい。私は反対側の通路から裏庭にまわろうとして、とりあえず玄関の傘立にさしてあった木刀を握った。黒いカッパの足音がジャッ、ジャッっと裏庭から、もと入ってきた通路に響くのがわかる。泥棒避けに歩くと音の出る防犯砂利というのをしいてある。

 黒いカッパが私の待っている通路に入ってきた。カッパで顔が隠れて人相は分からない。でも背は低い。喧嘩したら勝てそう、と思った。少し緊張する。

 すると、その黒いカッパも私に気が付いたらしく、顔を上げた。悪びれた様子も、緊張した様子もない。

 女。はっきり言って細面の美人。どっちかというと好みのタイプ。

 「すいません。検針の針が見えなかったもので」

 検針員の人だった。いつもは玄関の方からスマホの自撮り棒の先に鏡を付けたような道具で検針器を読み取るのだが、雨で見えなかったらしい。裏から回れば直接見える。

 「あのさ、声くらいかければ・・・・・・びっくりした」

 「アッハッハッハ、そうですね、居ないと思って、すいません」

 顔を上げたので、笑顔が雨に濡れている。美人は得だ。腹もたたない。

 それにしても、驚いた。

 そうだ!ちくしょう!!「ファイブオー」の一番いい所を見逃した。



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