7月上海旅行の時だった。
恒例の上海書城での買出し。
階ごとの支払いとなっているため、いつも6階のCD・DVDフロアから一階ずつ下って買いまくり。
そのため、4階の語学フロアに辿り着く時、いつも、もうすでに大量なCDや本を抱える状態になるーー各階で支払う時、本を紙テープでまとめてくれるだけで、手提げ袋をくれない。それは一階の出口で配られるーー防犯対策だそうだ。
但し、本を大量買う時に、実に不便だ。
今回も同じように、2階の文学フロアに着いた時、もうへとへとで本を探す気力もなかった。帰りの飛行機で読みたいため、エスカレーターの横に置いてある小説を適当に2冊を拾い、レジーへ向かった。
重い本を抱え、列の最後に並んだ。前に若いお母さんと小学生模様の息子との二人がいた。10冊ぐらいの本を抱えて仲よさそうに談笑していた。チラッと本のタイトルを覗いてみたら、歴史物語のようなものが多かった。小学生なのに堅い本を読んでいるね、カッコいいなと思っているうちに、私の番になることに気づいた。
親子組のお母さんはすでに支払いを済ませたが、なぜか私の横に止まって、一言も言わずに一枚のカードを私に差し出した。
目の前のカードに戸惑いながら、彼女の顔を見てみたーー満面の笑顔だった。
もしかして、後ろの人に渡そうとするじゃないかと後ろを振り向いたら、お母さんの声が聞こえた:“給你。会員卡。”(gei3ni3, hui4yuan2ka3)「あなたに、会員カード。」
思わず目を丸くした。言葉が詰まって指で自分の顔を指すことしかできなかった。
“借你用,可以打8折。你放心,我不要你的銭。”(jie4 ni3 yong4, ke3yi3 da3 ba1zhe2. wo3 bu2yao4 ni3 de qian2.)「貸します。20%OFFだよ。そのお金がほしいのではないから安心して。」
“我?……謝謝・・・”(wo3?……xie4xie)「私に?・・・ありがとう・・・」わずか2冊の本なので、割引があっても大した金額が変わらないし、見知らずの人に金銭的好意を受けるのは不安だし、断る勇気がなかったーー中国で見知らぬ人の好意を受けられるのはめったにないから。
状況をうまく捕まらないままの状態で、そのカードを使って支払ったら、頭を下げてありがとうを伝えた。お母さんは何もなかったのように笑顔をしながら、息子と一緒に出口に向かった。
いったい何かあったのはよくわからないまま、私も出口に向かった。
2ヶ月経った現在、いい人に出会ったことだとわかるが、なぜか私なのかはいまだによくわからない。