太陽光発電が投資対象としてみたときにどれほどのうまみがあるのか
定量的に調べました。
インターネットでは、太陽光発電は8年から10年くらいで元が取れ、後はすべて
利益となるため、絶対得だ! とか 経産省では利益が6-7%程度出るように
売電価格が設定されているため、やれば必ずもうかる、といった記事が
あちこちにありますね。
また、実際、太陽光発電パネルと土地をセットにした分譲タイプの太陽光発電システムや、
太陽光発電ファンドなどもいくつかあります。
しかし、利益が出なければ最初から投資対象として検討しないわけで、
予想収益がプラスになるのは必須条件です。
太陽光発電への投資の是非は、存在する様々なリスクを考慮しつつ
太陽光発電の予想利回りと他の投資商品とを比べることで初めて結論が
導けると思います。
以下では、次の手順に従って、太陽光発電ビジネスを分析します。
(1) モデル構築
条件を設定し基本モデルを構築します。そして、1例について収益を計算します。
(2) パラメータ分析と実質利回りの評価
ローンの有無や年間予測発電量、売電単価による収益への影響を調べ、それらの実質利回りを計算します。
(3) 他の投資商品との比較
太陽光発電ビジネスは投資対象としてすぐれているのかいないのかを、実質利回りとの
比較から検証します。
(1) モデル構築
[制約条件]
■投資物件
・太陽光発電事業
太陽光発電パネル(49kw)と土地(200坪)を1区画として販売。
販売価格:2,000万円(税込)
■ソーラーローン
・対象:太陽光発電パネル一式(2,000万円) ※運用管理費は含めず
・15年固定金利 2.65%
・元利均等返済
・頭金の額は複数のパターンを設定
■運用保守費
・パワーコンディショナー(9台):10年目に修理。50万円。(内訳:5万円/台*9台+作業費(5万円))
・予備費(補償対象外機器の修理やパネル洗浄):5年、10年、15年に各10万円計上
・メンテナンス費用(異常検知や現地調査):12万円/年
・システム物損補償延長:10年目に20万円
■保証
・モジュール保証:25年(10年で90%、20年で80%の保証)
・システム保証:10年(対象は、パワーコンディショナ、接続箱、ケーブルなど)
・システム物損補償:20年(10年目に延長)
* 火災、落雷、破裂、爆風、風、霰、雪災
* 高潮・洪水・土砂崩れなどの水災
* 建物外部からの物体の飛来・衝突(いたずらによる投石なども含む)
※ 地震・噴火による損害は含まれない
■20年後の撤去費用
・100万円(土地・発電パネルを無償譲渡し、発電パネルなどの撤去などの原状回復費用込み)
■売電単価・売電期間および事業実施期間
・期間:20年
・売電単価:42円/kwh
■設置
・広大な敷地に太陽パネルが敷き詰められた状態
■償却資産
・減価償却:定率法
太陽光パネルの償却期間は17年なので減価率は0.127
・前年中の新規取得資産:半年償却
・評価額の最低限度額:取得価額の5%
・課税標準特定の適用:取得後3年分に対して 2/3
市役所からもらった償却資産申告の手引きなどを確認すると、
「固定資産税は、土地や家屋のほかに償却資産(事業用資産)についても課税の対象となります。」
とあり、窓口で太陽光発電事業を説明して確認しても、固定資産税がかかるといった説明でした。
ここで言っている「事業用資産」とは、法人や個人事業主だけを対象としているわけではなく、何らかの
収益(この場合は売電による雑所得)を得ることを目的とした資産という意味であり、個人であっても
対象となります。
ある太陽光パネル販売会社は、固定資産税はかからないが、償却資産税はかかるといっています。
どうも、固定資産税という言葉を市役所のように広くとらえるか、償却資産と区別するのかによって
言い方が変わっているだけかもしれません。いずれにしても、今回の例のように、土地の上に架台を設置し、
その上にパネルを乗せるといった場合には税金がかかってくることは確かです。
なお、建築後に後付けで屋根に取り付けるタイプの太陽光発電については、固定資産税はかからない、と
いった記事もよく見かけます。それは、本当に税金がかからないのか、やはり償却資産税はかかるのか、については
よくわかりませんが、業者の言うことをうのみにせず、市役所などで個別に確認することが必要と思います。
よく太陽光発電の収益シミュレーションで、メンテナンス費用や固定資産税を考慮していないものが
ありますが、危険ですね。あとから後悔しないようにしないと…。
[前提条件]
■投資者
個人(法人や個人事業主ではない)とします。所得税の税率が20%となる課税所得者とします。
■所得税
・売電収入から必要経費(ローン金利や償却額、運用保守費)を差し引いた所得に
対して一律20%を適用
■太陽光発電パネルの性能低下率
・性能低下率:1%/年 → 年間予測発電量が年1%の割合で減少していく、ということ。
[パラメータ]
■年間予測発電量
・年間予測発電量:
51,000kwh, 54,000kwh, 57,000kwh, 60,000kwh
・ローン頭金
なし、100万円、500万円、1,000万円、2,000万円(ローンなし)
以上の条件を元に、20年後までの収支をできる限り正確にシミュレートしました。
以下の試算では、次のパラメータとしています。
・年間予測発電量57,000kwh
・頭金 0円
※ すべて1万円未満は切り捨てとしているため、最後の桁は計算が合いません。
売電収入:4333
発電システム一式:▲2000
運用保守費:▲450
ローン金利返済:▲449
償却資産税:▲169
所得税:▲281
------------
収益:982
単位:万円
つまり、頭金0円でも20年後には982万円が手元に残る、ということになります。
年ごとの収支をみても、多くの場合は、ローンや所得税による支払よりも収入が上回ります。
したがって、頭金 0 円であれば、契約手続きを結ぶと、後は、毎年お金がたまっていくことに
なります。
毎年の収支を積算したグラフは以下です。
横軸:運用年数
縦軸:積算収支
・ローンを払いつつも最終的な収支はほとんどプラスなので右肩上がりです。
・しかし、太陽光発電パネルの性能劣化により、やや伸びが鈍化しています。
・10年目はパワコンやシステム物損補償延長の加入などの運用保守費用が他の年よりも多いため
収支はマイナスとなり、積算収支は減少します。
・10年から15年までは収支はほぼ0ですが、それ以降はローンが完済するため、急激に伸びます。
・20年目は太陽光発電システムの撤去費用の支払いのため、積算収支の勾配はやや減少します。
なお、想定されるリスクとしては以下があります。
・補償対象外の災害(地震・噴火、戦争、暴動に起因する故障
・補償対象外の付属機器の故障
・大規模な気候変動による日照時間の低下
・売電単価は20年間保証されているが、全量買取は本当に20年間継続されるのか
・補償対象修理に伴う一時的な発電停止などによる稼働率の低下
また、以下の疑問が生まれます。
疑問:なぜ、頭金が 0 円(何もお金を出さない)のに、お金が増えていくのか。
答え:運用利回りがローン金利よりも高いためです。 売電収入から税金や運用保守費を除いた額が、ローンの支払いよりも多いため。
疑問:なぜ、ローン金利は比較的低いのか。
答え:ソーラーローンは一般に通常のローン金利よりも低金利です。太陽光発電は儲かるので、
お金を貸すほうも安心して貸せるから、金利が低いのでしょう。
また、売電収入が高いのは、売電単価が高いからです。これは、太陽光発電を普及するために
あえて高めに設定し、事業者が儲かるように配慮しているためです。
したがって、損はしないでしょう。しかし、問題は、得をするといってもどれほど得をするのか、
他の投資商品と比べて本当に得なのかはもっと検証が必要です。
次に続く・・・