次にパラメータ分析と利回りの評価を行います。
(2) パラメータ分析と利回りの評価
ローンの有無や年間予測発電量、売電単価による収益への影響を調べます。
ローン:頭金なし、100万円、500万円、1000万円、一括支払(2000万円)
年間予測発電量:51,000kwh, 54,000kwh, 57,000kwh, 60,000kwh
※ (1) で説明したように、初年度から年1%の割合で年間予測発電量は減少していくとします。そのため上記は正確には発電初年度の年間予測発電量です。
販売業者による年間予測発電量は、60,000kwh 程度と予測。悪くても56,000kwhとのこと。
今回、パネル設置予定場所での、NEDOで公開されている年間予測発電量は58,000kwh程度。
20年後の収益(税引き後の収入を毎年積算したもの)は次の通りです。なお、頭金がある場合は、積算した収入から頭金を減額しています。
税引き後の収入とは、売電収入-運用保守費 -(ローン金利+ローン元金)-償却資産税-所得税 です。
頭金 | 年間予測発電量 | |||
---|---|---|---|---|
51,000kwh | 54,000kwh | 57,000kwh |
60,000kwh | |
なし | 617 | 799 | 982 | 1164 |
100万円 | 635 | 817 | 1000 | 1182 |
500万円 | 707 | 889 | 1072 | 1254 |
1000万円 | 797 | 979 | 1162 | 1344 |
一括支払 | 977 | 1159 | 1342 | 1524 |
単位:万円
頭金の違いによる収益の差は、およそローンの金利支払いの差です。
また、頭金の額によらず、予測発電量が1割変わると、収益は180万円くらい変わります。売電単価は、24年度は42円/kwh, 25年度は37円/kwhらしいので、その差は1割強ほど違っています。売電単価と発電量の積が売電収入なので、発電量1割の違いは売電単価1割の違いと同じ効果を生みます。したがって、売電単価の違いによって、収益は200万円くらいの差になります。一括払いの場合、これは収益の 13%から20%程度の差となりますから大きいですね。
次に、この事業の収益を評価します。
収益の評価方法として2通り考えます。
(1) 実質投資額に対する実質利回り
投資資金を一括で払う場合には、実質投資額は実際の投資資金2000万円と一致します。
ローンを組んだ場合には、投資資金の一部もしくはすべてを後で支払うこととなり、最初から投資資金のすべてを用意する必要はありませんが、そのためにローン金利を支払うことになります。ローンの元金および利金の支払いをあと送りすることで、その資金を運用に回せると考えると、最初に必要な投資資金は、ローンの元利金よりも少なく済みます。しかし、その運用での利回りをローンと同じ利回りとするとすると、結局投資実質額は実際の投資資金と一致します。ここでは、話を簡単にするため、ローン利回りとほかの運用の利回りを同じと仮定します。そのため、ローンの頭金によらず、常に実質投資資金は2000万円です。
実質利回りは、1年複利での運用とした場合の、収益額と一致する、利回りとします。
つまり、何%の運用で、実質投資資金の増加分が収益額と一致するか、ということです。
式にすると、実質投資資金をA, 収益額をδAとすると、実質利回り r は
A+δA = A*(1+r)^20
をrについて解くことで得られるとします。
実質投資資金と収益額から、実質利回りを計算すると次のようになりました。
頭金 | 年間予測発電量 | |||
---|---|---|---|---|
51,000kwh | 54,000kwh | 57,000kwh | 60,000kwh | |
なし | 1.4% | 1.7% | 2.0% | 2.3% |
100万円 | 1.4% | 1.7% | 2.0% | 2.4% |
500万円 | 1.5% | 1.9% | 2.2% | 2.5% |
1000万円 | 1.7% | 2.0% | 2.3% | 2.6% |
一括支払 | 2.0% | 2.3% | 2.6% | 2.9% |
ローン金利の支払いがあるため、頭金が少ないほうが実質利回りは低下しますが、大きな差はないですね。
だいたい、2.0-2.5%前後といったところでしょうか。
なお、この値は税引き後です。税引き前だと、2.5-3.0% ぐらいです。
これを多いと見るか、少ないと見るか・・・・。買い取り制度の変更、地震などの自然災害、インフレリスクなどを考えると、個人的には思ったほど高くないかなと。
売電収入は、200万前後で推移しますから、投資資金2000万円であれば、表面利回りは10%程度となりますが、最終的な発電システムの価値は0円となるため、トータルとしてみたときの利回りは、それと比べるとかなり小さいですね。
(2) 自己資金に対する収益率から得られる実質利回り
投資のための借入金であるレバレッジの効果を考える指標として、ROI(自己資金に対する利回り)という指標があります。
ローンを組んだ場合、最初の投資資金が自己資金であり、それによってどれほどの収益を上げられるか、ということです。
しかし、頭金0円の場合、初期投資はありませんから、ROIは無限大になってしまいます。
以下の方法でROIを定義します。
ROIは、1年複利の場合に、頭金を何%で運用すると、収益+投資資金(2000万円)になるか、と定義します。
頭金 | 年間予測発電量 | |||
---|---|---|---|---|
51,000kwh | 54,000kwh | 57,000kwh | 60,000kwh | |
なし | ∞ | ∞ | ∞ | ∞ |
100万円 | 10.5% | 11.7% | 12.7% | 13.6% |
500万円 | 4.5% | 5.2% | 5.9% | 6.5% |
1000万円 | 3.0% | 3.5% | 3.9% | 4.4% |
一括支払 | 2.0% | 2.3% | 2.6% | 2.9% |
上記は税引き後の実質利回りです。
一括支払いの場合は、ローンを組まないため、(1) の実質利回りと同じです。
頭金が少なければ少ないほど、ROIは増え、最後は、無(頭金なし)から収益や投資資金を生むことになるため、実質利回りは無限大(∞)となってしまいます。
借入れをすると自己資金だけの投資より、効率的な資金活用ができる、ということですね。
ただ、これでは、元手が0円の場合には、定量的な比較はできないですね。元手が0円なら、20年後に1円だろうと1000万円だろうと、ROIは無限大です。
万が一事業が失敗した場合、収入はなくても多額のローンを返済し続けなくてはなりません。一括支払いでは支払いは終わっているため、後で支払うお金はほとんどありません。どちらも多額の資金を失うことに変わりはありませんが、一括支払いではリスクを先に取っていますが、ローンはそれを先送りしています。したがって、レバレッジを効かせるなら、事業が失敗した時の手当の仕方を事前に検討しておくことが必要でしょう。
結論としては、投資資金の大部分をローンで借りられるのであれば投資としてのうまみはありますが、全額自己資金とすると、利回りは2.5%前後です。
私の場合、全額ローンで借りられることになったため、今回投資を行うことを決めました。レバレッジを効かせた投資はこれが初めてになります。
次に続く・・・