詩と写真 *ミオ*

歩きながらちょっとした考えごとをするのが好きです。
日々に空いたポケットのような。そんな記録。

暑い日々の谷間に

2016年08月10日 | 
暑い日々の谷間に涼しい風が吹く
朝靄のヴェールの奥で発光していた朝顔の色が
ガード下の薄暗い駐輪場に沈んでいくのを感じる

ラムネ
ラムネを噛みたい
のどが渇いているみたい
あの甘さあのすっぱさ

ふくらんだ胸を隠していた制服
友だちの口紅とピアスに
鏡の花でなく
魅せられる日々
自分が女になることにはまだ
わけもわからず抵抗していた日々
卒業アルバムはぜんぶ下を向いていて
あの憂うつがいまはまぶしい

斜めに遮られた青空
同じ空気を呼吸しているのに
太陽のたくましい腕からここは逃れている
似ていると懐かしいの
平気な顔で土を踏んで自転車を押す

未来が重たく軽く
暗く輝く
顔を向けた方角は
そう離れてはいない気がして
年月が伝える隔たりに
あこがれの抜け跡のような涼しい風が吹く


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くしかつ町の交差点

2016年08月07日 | 
くしかつ町の交差点で
信号待ちをしていると
向こうの横断歩道を
3歳ほどの女の子が横切っていった
あとから、おじいさんが慌ててそれを追いかけた
後ろから、産まれたばかりの赤ん坊を抱いた
お母さんがゆっくり歩いていった
ポチが横切っていった
タマが横切っていった
ボールが何度も跳ねながら横切っていった
ボールを追いかけて
ランドセルを背負った男の子が横切っていった
鴨の親子が蛇行を楽しみながら横切っていった
象がゆっくり耳をあおぎながら横切っていった
アリの隊列が動く島のように横切っていった
キリンが何度もおじぎしながら横切っていった
ブレーメンの音楽隊がキリンに負けじと
バランスを取りながら横切っていった
ハーメルンの笛吹きがたくさんのネズミと
子どもたちを連れて横切っていった

みんなどこに向かっているのだろう
という思いが
石ころに躓きながら
横切っていった

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復讐

2016年08月04日 | 
目には目を
歯には歯を
くちびるにはくちびるを
まなざしにまなざしを
ほほえみにはほほえみを
鼓動に鼓動を
闇に光を
心に愛を
手と手を
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健気な生きもの

2016年08月02日 | 
自分というデコボコの枠に
自分を納めておくために
ひとりひとり方法があるのだろう

ため息もときめきもキスも同じ
期待と落胆
理想と現実
バラ科モモ属 巴旦杏

でも顔かたち心のかたちは
まったく違う

うまくはなれないけれど
生まれてからずっと
自分を自分の枠に納めておくため
試行錯誤を繰り返してきた

好きな子にちょっかいを出してみたり
親に反抗してみたり
不良になってみたりもした
ひきこもってもみたし
働いてもみた
自分に似合う服
もしくは自分に閉じこもれる服
見つけて
心を守った
家に帰ってアイスクリームを食べた
甘さはいつもわたしをなぐさめてくれる

ひとのためにできることをいつも探して
自分を忘れたり
いまが楽しければいい
と他でもない
自分に向かって唱えていたり

わたしがわたしである限り
はみ出た自分もぜんぶ
自分という枠に押し込めている
なんて健気な生きものなの
わたしたち、にんげん
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