第一回目では極右政党である国民戦線の圧勝だったフランス地方議会選挙。
決選投票である第二回では、ほとんどの県で共和党・社会党が第一党となった。
これをもって国民戦線の敗北と称する動きもあるが、あまり頂けない。
国民戦線は今回の選挙をもって議席を大幅に増やした。その数、実に3倍である。
加えて、ほぼ全てのフランス地方議会で国民戦線は野党第一党になっている。
同党の代表、マリーヌ・ルペンは今回の結果は敗北ではなく強化だと述べたが、
それは確かにその通りであり、文字通りの大躍進と見て差し支えないだろう。
今回の選挙では、約20年間、社会党が第1党だったパリで共和党が勝利した。
これは、パリ市民がテロ事件を契機に急激に右傾化したことを意味するよりは、
社会党が共和党と大差ないレベルなので、より無難なほうを選択したと見るべきだ。
もともと、社会党は3党ある左派政党の中でも最も右よりの政党で、
81年の全盛期において、すでに政策を右旋回し、同党に失望する左翼も少なくなかった。
歴史的に見れば、それまで最大勢力であったフランス共産党を駆逐するようにして
社会党が台頭し、結果的にはフランス共産党を押さえつける役割を担うことで成長してきた。
私は日本の右傾化は左翼の右傾化であり、そもそも戦後日本の主流左翼は反共左翼で、
冷戦下、国内の共産党勢力をけん制するために保守派に利用されてきた存在だったと主張するが、
これと同様に、フランスでも反共的な左翼・中道・保守を吸収して社会党が成長してきたと言えよう。
そういう意味では、極めて保守派と通じるものがあり、本来なら共和党と対決すべき立場なのに、
国民戦線を封じるために共和党と馴れ合うような愚行を平然とやってのけてしまう。
共和党は「中道右派」と言われているが、
その党首であるサルコジ自体はフランス版石原慎太郎と言うべき人物だ。
パリ郊外の移民を「社会のクズ」と呼んだ男である。
大統領時代には新自由主義と排外主義を標榜しており、
その徹底した移民排斥で都市部の保守派の支持を集めてきた。
今から9年前の2006年に出版された『沸騰するフランス』(花伝社)によると、
2005年の移民暴動の際にとった彼の弾圧的政策を、国内の極右の97%が支持した。
この点からも、サルコジが国民戦線とは違うとアピールしながらも、
実際には保守層を支持基盤とし権力を維持・拡大していることがわかるのではないだろうか?
こういう人物が率いる「中道右派」と協力して極右勢力を撃退したということは、結局のところ、
二大政党制となったフランスにおいて、既得権益を侵されないように両党が協力し合って野党を排除したことに他ならない。
とするならば、今回の選挙、別に嬉しいことなど何一つなく、
国民戦線の躍進を「敗北」とレッテル貼りすることは、
フランスにおいて未だに人権が尊重されているかのように勘違いさせることにつながるだろう。
前にも書いたが、第一回目の時点では、
フランス版維新の党>自民党>民主党という結果だった。
今回のフランスの選挙は、100%右>80%右>50%右からどれか選べといったもので、
肝心の本来の意味における左派政党は、文字通りの敗北を喫したと言っても過言ではない。
メディアは国民戦線の「敗北」よりも左派政党の「敗北」を気にすべきだろう。
なお、去年、なぜか大ブームになったトマ・ピケティ氏だが、
以前、彼が社会党の経済政策のブレーンを勤めていたことをご存知だろうか?
社会党が日本で言うところの民主党だということさえ知っていれば、
同氏の主張は社会全体が右よりになっているから左に見えるだけで、
実際には左向きでも何でもないことは簡単に看破できたものだと思える。
現にフランス国内においては当時から彼の著作は批判されていたし、
例えば、ル・モンド(月刊版)ではフレデリック・ロルドン経済学教授が
「メディアの満場一致の礼賛それ自体が
この著作がまったく無害なものであることを裏返しのかたちで示している」と述べている。
(http://www.diplo.jp/articles15/1504piketty.htmlを参照)
そうであるはずなのだが、なぜか日本では文句を言うべき左翼まで(というより主に左翼が)
「ピケティすげー!」とはしゃいでいたわけで…日本の知識水準もここまで下がったかと
改めて驚き呆れた次第であるが、当時は経済学者でも何でもない筆者が理論的に
ピケティを批判するだけの武器を持っていなかったので、何もコメントしていなかったと思う。
ところが、これまた理由は不明だが最近、法政大学の屋嘉宗彦教授や
立教大学の北川和彦名誉教授がピケティ批判を論じ始めており、
ブームが過ぎ去った今、冷静にピケティを読み直す意味が出てきたのではないかと感じる。
(なお、両氏の評論は『経済』12月号・1月号で読むことが可能だ)
決選投票である第二回では、ほとんどの県で共和党・社会党が第一党となった。
これをもって国民戦線の敗北と称する動きもあるが、あまり頂けない。
国民戦線は今回の選挙をもって議席を大幅に増やした。その数、実に3倍である。
加えて、ほぼ全てのフランス地方議会で国民戦線は野党第一党になっている。
同党の代表、マリーヌ・ルペンは今回の結果は敗北ではなく強化だと述べたが、
それは確かにその通りであり、文字通りの大躍進と見て差し支えないだろう。
今回の選挙では、約20年間、社会党が第1党だったパリで共和党が勝利した。
これは、パリ市民がテロ事件を契機に急激に右傾化したことを意味するよりは、
社会党が共和党と大差ないレベルなので、より無難なほうを選択したと見るべきだ。
もともと、社会党は3党ある左派政党の中でも最も右よりの政党で、
81年の全盛期において、すでに政策を右旋回し、同党に失望する左翼も少なくなかった。
歴史的に見れば、それまで最大勢力であったフランス共産党を駆逐するようにして
社会党が台頭し、結果的にはフランス共産党を押さえつける役割を担うことで成長してきた。
私は日本の右傾化は左翼の右傾化であり、そもそも戦後日本の主流左翼は反共左翼で、
冷戦下、国内の共産党勢力をけん制するために保守派に利用されてきた存在だったと主張するが、
これと同様に、フランスでも反共的な左翼・中道・保守を吸収して社会党が成長してきたと言えよう。
そういう意味では、極めて保守派と通じるものがあり、本来なら共和党と対決すべき立場なのに、
国民戦線を封じるために共和党と馴れ合うような愚行を平然とやってのけてしまう。
共和党は「中道右派」と言われているが、
その党首であるサルコジ自体はフランス版石原慎太郎と言うべき人物だ。
パリ郊外の移民を「社会のクズ」と呼んだ男である。
大統領時代には新自由主義と排外主義を標榜しており、
その徹底した移民排斥で都市部の保守派の支持を集めてきた。
今から9年前の2006年に出版された『沸騰するフランス』(花伝社)によると、
2005年の移民暴動の際にとった彼の弾圧的政策を、国内の極右の97%が支持した。
この点からも、サルコジが国民戦線とは違うとアピールしながらも、
実際には保守層を支持基盤とし権力を維持・拡大していることがわかるのではないだろうか?
こういう人物が率いる「中道右派」と協力して極右勢力を撃退したということは、結局のところ、
二大政党制となったフランスにおいて、既得権益を侵されないように両党が協力し合って野党を排除したことに他ならない。
とするならば、今回の選挙、別に嬉しいことなど何一つなく、
国民戦線の躍進を「敗北」とレッテル貼りすることは、
フランスにおいて未だに人権が尊重されているかのように勘違いさせることにつながるだろう。
前にも書いたが、第一回目の時点では、
フランス版維新の党>自民党>民主党という結果だった。
今回のフランスの選挙は、100%右>80%右>50%右からどれか選べといったもので、
肝心の本来の意味における左派政党は、文字通りの敗北を喫したと言っても過言ではない。
メディアは国民戦線の「敗北」よりも左派政党の「敗北」を気にすべきだろう。
なお、去年、なぜか大ブームになったトマ・ピケティ氏だが、
以前、彼が社会党の経済政策のブレーンを勤めていたことをご存知だろうか?
社会党が日本で言うところの民主党だということさえ知っていれば、
同氏の主張は社会全体が右よりになっているから左に見えるだけで、
実際には左向きでも何でもないことは簡単に看破できたものだと思える。
現にフランス国内においては当時から彼の著作は批判されていたし、
例えば、ル・モンド(月刊版)ではフレデリック・ロルドン経済学教授が
「メディアの満場一致の礼賛それ自体が
この著作がまったく無害なものであることを裏返しのかたちで示している」と述べている。
(http://www.diplo.jp/articles15/1504piketty.htmlを参照)
そうであるはずなのだが、なぜか日本では文句を言うべき左翼まで(というより主に左翼が)
「ピケティすげー!」とはしゃいでいたわけで…日本の知識水準もここまで下がったかと
改めて驚き呆れた次第であるが、当時は経済学者でも何でもない筆者が理論的に
ピケティを批判するだけの武器を持っていなかったので、何もコメントしていなかったと思う。
ところが、これまた理由は不明だが最近、法政大学の屋嘉宗彦教授や
立教大学の北川和彦名誉教授がピケティ批判を論じ始めており、
ブームが過ぎ去った今、冷静にピケティを読み直す意味が出てきたのではないかと感じる。
(なお、両氏の評論は『経済』12月号・1月号で読むことが可能だ)