時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

ポロシェンコの懐柔策

2014-06-19 23:52:03 | リビア・ウクライナ・南米・中東
ポロシェンコが一時的な停戦を申し出たことに対して、
朝日新聞は次のように報じています。


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ウクライナのポロシェンコ大統領は18日、東部で政府軍が続ける
親ロシア派武装勢力に対する制圧作戦を「近く一方的に停止する」と表明した。

ただし、停戦は「短期間」としており、その間に親ロシア派に
武装放棄と撤退を呼びかけている。東部の「和平計画」の具体策として、
首都キエフで記者団に明らかにした。


東部では政府軍が大規模な制圧作戦を実施。
一方、ロシア国境を越えて武装集団や戦車が流入し、
親ロシア派も49人が乗った軍輸送機を撃墜するなど反撃を続けている。

ウクライナ政府は一時停戦を持ちかけて、親ロシア派に妥協を促すと同時に、
ロシア国境を完全に管理下に置くことを目指しているとみられる。


だが、大統領は7日の就任直後にも1週間以内の停戦を掲げたが、実現していない。
東部ドネツクの親ロシア派幹部のデニス・プシーリン氏は18日、
ロシアのメディアに「(大統領の)提案を断る」と語った。

http://www.asahi.com/articles/ASG6L54WRG6LUHBI01V.html
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この記事だけを読むと、あたかもポロシェンコが穏健派で
プーシリン氏が強硬派のように受け取られますが、実際は逆です。

次の記事を読んでみましょう。

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19日、ウクライナの軍及び治安維持諸機関は、
同国南東部ドネツク州クラスヌィ・リマン地区で、義勇軍に対する軍事作戦を開始した。
ウクライナの軍事作戦担当報道官ヴラヂスラフ・セレズニョフ氏が、記者団に伝えた。


セレズニョフ報道官によれば、19日未明、
ウクライナ軍は義勇軍に対し投降するよう求める最後通牒が書かれたビラを撒いたが、
誰もそれに応じなかったため「敵を封鎖する」行動を実施している。

一方ドネツク義勇軍参謀本部は、19日ドネツク州アルチョモフスク市周辺で
集中的な戦闘が始まったと伝えた。セヴェルスク市、ザコトノエ村も砲撃にさらされた。
義勇兵らはこれに反撃し、現在激しい戦闘が続いている。
なおウクライナ軍部隊は、重火器を使用している。

続きを読む: http://japanese.ruvr.ru/news/2014_06_19/273706168/
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つまり、攻撃の手を緩めてはいないのです。決して。


なお、ウクライナ軍が使用している重火器の中には、地雷と同等の非人道的な
兵器として禁止条約も設けられている(日本では福田内閣の時に調印した)
クラスター爆弾も使用されており、また白リン弾も投擲され、
客観的に判断しても、ジェノサイド(集団虐殺行為)に相当する行為です。

http://japanese.ruvr.ru/news/2014_06_18/273660996/


こういう最中、自警団の武装解除を条件とする停戦がどういうものか
想像するのは容易なことで、要するに、予想以上に自警団が粘るので
懐柔策を持ち出したと見るのが妥当でしょう。こういう動きは
以前にも二度ありましたが、結果的には実現しませんでした。


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18日もウクライナ軍は義勇軍に対し、
ルガンスク地区での戦いで死亡した人々の遺体を交換・収容するため、一時停戦を提案した。
南部・東部では、この要請は、前向きに受け止められた。

そして確かにある期間、砲撃は鎮まったが、ウクライナ軍は、この間を自己流に利用した。
双方が遺体を収容している間に彼らは、自分達の装甲車両縦隊を
義勇軍が掌握している住民居住区の方へと移動させ、
その後、休戦終了の合図もなく、突如砲撃を開始したのだ。



こうした行動は、ウクライナ側が約束を果たして本当に守るのかどうかとの疑念を呼び起こし、
包括的休戦確立というキエフ当局の提案の現実性を疑わしいものにしている。

ロシアのラヴロフ外相は「キエフ指導部が実際に、国内危機を
平和的手段で調整したいと考えているのであれば、その場合に限り、
ポロシェンコ大統領のプランは良いものであると言える」と強調し、次のように述べている―


「もしこのイニシアチブが、停戦が包括的なものとなるような方向に
向けられているなら、停戦後に南部・東部の代表者達を交渉のテーブルに
招く事につながるものであるなら、それはまさに、我々皆がポロシェンコ大統領に期待している
一歩と言ってよい。もし、この一方的な一定期間の停戦が、まず義勇軍に武器を置かせ、
その後、彼ら皆を終身刑にして刑務所に入れるための策略でなければ、期待すべきものだ。

 しかしウクライナ当局の中には、そうした一時的な停戦は、
不満分子をウクライナ領内から追い出すために必要なのだという声がある。

当局が住民に国から出て行くよう公然と口にし、
彼らの合法的要求を考慮したくないというなら、これはもう、民族浄化政策と言ってよい。



ウクライナ南部・東部での軍事衝突は、すでに数か月にわたり続いている。
4月半ば、キエフ当局は、新しいウクライナ指導部の合法性を認めず、
ドネツク及びルガンスク両州の独立を支持する住民達を弾圧するため、特別軍事作戦を開始した。

ロシア政府は、一般住民を含め、すでに多くの犠牲者をもたらしたこの特別作戦を、
懲罰作戦に他ならないとし、キエフ当局にそれを止めるよう再三申し入れてきた。


続きを読む: http://japanese.ruvr.ru/2014_06_19/273718230/
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ロシア政府だけでなく、現地住民もまた以前から軍の撤退を訴えていました。
http://rt.com/news/164940-dont-kill-us-refugees-ukraine/


また、上の記事で言及されているように、停戦を上手く攻撃のために
利用する、まるで大坂夏の陣の徳川軍のような行為もされているわけで、
これでは警戒を解くわけにはいかないでしょう。


停戦は重要だし、一刻も早く行われるべきことですが、条件は必要です。
その点を無視するあたり、さすが朝日だなとは思いましたが、
少なくとも現地軍の武装の維持は必要だと思います。

彼らを守るべき軍隊が彼らを攻撃している以上は。


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