時事解説「ディストピア」

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偽装難民とは何か

2015-10-19 00:54:51 | リビア・ウクライナ・南米・中東

誇り高き日本人が描いたイラストが海外で差別を肯定する内容だと非難を受けている。


難民の少女を揶揄するイラストで世界中から非難を浴びた漫画家が
今度は「在日」攻撃イラスト投稿! 根底にあるヘイトとデマ体質


リテラの記事は大変意義があるものと思うが、他方で説明不足の部分もある。

そこで、この記事では難民or偽装難民とは何かということについて話したいと思う。



まず、問題のイラストでは次のようなキャプションが書かれている。

「安全に暮らしたい 清潔な暮らしを送りたい 美味しいものが食べたい 
 自由に遊びに行きたい おしゃれがしたい 贅沢がしたい 
 何の苦労もなく生きたいように生きていきたい 他人の金で。
 そうだ、難民しよう。」



あたかも難民として認定されれば遊んで暮らせるかのようだ。実際にはどうだろうか?

結論から述べると、難民に認定されるとは、
その国で生活することを許可されただけ
にすぎない。



ここで日本を例に説明すると、
難民と認定された人間でも、生活を送るためには働かなければならない。
勘違いされがちだが、難民にも納税の義務がある



http://www.rhq.gr.jp/japanese/profile/business.htm

↑のページは政府公認の難民支援団体のものだが、
ここのサービスは職業訓練や日本語などの技能を身につかせるもので、
大金をポンと手渡すようなものではない。このことを知らない人間は多いと思う。


難民で問題になっているドイツでも、
申請期間中は仮設住宅に住み、食事や医療を受けるサービスがあるが、
他方で就労が許されず、施設から離れることもできない。

時給1,05ユーロ(1ユーロ=135円)で軽い手伝いぐらいは出来るが、
これを逆手にとって申請者に低賃金労働をさせる悪徳業者も存在する。

難民と認められれば日本と同様、
職業訓練を受けたり語学を学びながら仕事を覚え、労働者として働くことになる。

実のところ、ドイツに難民が殺到するのは、この仕事を探せるという点が大きい。

ドイツはなぜ大勢の難民が受け入れられるのか
シリア難民はなぜドイツを目指すのか?


ドイツでは労働者が不足しており、外国人労働者を求めている。

「清潔な暮らしを送りたい 美味しいものが食べたい 
 自由に遊びに行きたい おしゃれがしたい 贅沢がしたい
 何の苦労もなく生きたいように生きていきたい 他人の金で」とはいかないのである。




このイラストを描いた「はすみとしこ」氏は、Facebookで以下の発言をしている。

「このイラストは全ての難民を否定するものではありません。
 本当に救われるべき難民に紛れてやってくる偽装難民を揶揄したものです」


はすみ氏もリテラも「偽装難民」とは何なのかについて書いていない。
読者の中にもよくわかっていない人間は多いのではないだろうか?


簡潔に説明すると、偽装難民とは不法就労者の一種である。

外国人がその国で働くには就労ビザというものが必要になるが、
このビザは就職先が決まっていない限り取得することが出来ない。

就ける職業自体も制限されており、そのため貧困が理由で
途上国出身の出稼ぎ労働者には、なかなかハードルが高い。

そのため、観光ビザで入国して働いたり、
在留期間が経過した後も現地に留まり働き続ける不法就労者が増加している。

不法就労者は発見次第、強制送還されるので、病院で治療を受けることもできない。
また、奴隷労働を強いられても訴えることが出来ないデメリットがある。

そこで、難民として認められることで、きちんと治療が受けられる、
まっとうな職場で働けるなどのメリットを得ようとする人間が出てくる。これが偽装難民だ。

ここで私は「メリット」と書いたが、
難民は単に「そこに住むことを許された外国人」にすぎない。

どうも、はすみ氏を初めとした差別主義者は
無条件で生活費をもらえると勘違いしているようだが、それは大きな間違いだ。

また、リテラは
「細かな状況を把握しない者が「偽装」の側面を強調したイラストを描くことは、
 難民に対する偏見のばらまきでなくて何なのだろうか。」と書いているが、
当のリテラが、まるで偽装難民が不労所得を求める外国人であるかのように認識している。

「偽装」の意味を理解していない。これは問題だろう。



最後に、難民に対して左翼にも言えるだろう誤解について触れたいと思う。

ほとんどの難民は途上国が受け入れたり、国内の比較的、平和な地域に避難しているため、
十分なサービスを受けることが出来ず、そのため難民=貧しいというイメージがあると思う。


だが、先進国の難民に至っては、その限りでない
そもそも本当に貧しい難民は外国に行くだけのお金がない。

シリアの難民のほとんどが国内難民だったり、
隣国のレバノン・ヨルダン・イラクに逃れるのはそのためだ。

はすみ氏がトレースした写真にしても、レバノンの難民が被写体である。

もちろん、先進国の難民も苦労して到着したわけだし、
その詳細は例えば『難民を追いつめる国』(緑風出版、2005年)を読むとよくわかる。

しかし、そうであるからこそ、難民には先進国に対する忠誠心が求められるし、
戦禍というよりは政治犯の容疑者であるために逃れてきた反体制派もいるわけで、
その点を考えずに彼らの意見=難民の総意であるように伝えるのは浅はかだと思う。

例えば、さる難民支援のNPOは、シリア難民にインタビューし、
アサド政権に嫌疑をかけられて逃れてきたこと、アサド体制の崩壊を望むことなどを
語らせているが、他方で反体制派も捕虜や市民を虐殺していることに一切触れようとしない。

現在、アメリカとイギリスが「アサド政権がシリアで人権侵害をしている」と非難する
根拠となっているのがシリア人権監視団というイギリスの団体のレポートなのだが、
この団体は亡命シリア人のラミ・アブドル・ラーマンという人物が設立した組織で、
会員はラーマン一人しかいない。
(実際に、誤報も指摘されている)

このエピソードに顕著に表れているように、難民を利用して(或いは難民の立場を利用して)
特定の国家の消滅を主張する人権団体が散在しているのである。


もちろん、反政府軍といえど、実際は市民がなっているのだから、
シリア軍だって住民虐殺を行っていることは容易に想像できるが、
非難の矛先がシリア軍9.5、反政府軍0.5ぐらいになっている。

国際人権団体アムネスティ・インターナショナルも、
ほとんどのシリア関連のニュースは政府軍の糾弾であり、
あたかもIS(イスラム国)など存在しないかのようである。

イスラム国の犯罪自体は、いくらでもニュースで報道されているわけだから
その気になれば、いくらでも記事を書けるはずだが、なぜか書かない。

ISもその他の反政府軍(ヌスラ戦線など)もやってることは同じなのだが、
あたかもISは邪教徒の群れだがヌスラ戦線は正義の味方であるかのようだ。

本当に平和を望んでいるのなら、特定の政権の崩壊ではなく、
両者の協議による内戦の終結を希望するのではないか?


現実的に考えても、イラクもアフガンもリビアも政権が崩壊することで
無政府状態になり、かえって内戦が激化して難民が増えてしまった。


こういう点を考えても、人権団体というものが
実際には何を求めているのかが何となくわかるのではないだろうか?

もちろん、メンバーやサポーター一人ひとりは良心的な人間だとは思う。
だが、彼らの思想や行動には致命的な欠陥があることは確かであるように感じるのだ。


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