時事解説「ディストピア」

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リビア問題からわかる日本左翼の欠陥2(再掲)

2016-03-23 23:09:10 | リビア・ウクライナ・南米・中東
貧困の撲滅をうたうデモ行進、ウォール街デモは
アメリカの著名な知識人も支持していることもあり、
現代世界の代表的な社会運動の1つとして数えられているように思われる。

同運動は、非暴力抵抗運動の世界的権威、ジーン・シャープの
『独裁体制から民主主義へ』を教科書としたものだ。同書は紹介文によると、


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史上数々の独裁体制を緻密に分析・研究した成果を踏まえ、
非暴力の反体制運動の全体像を示し、誰もが展開できる
具体的な小さな戦略を粘り強く続ける実践的な方法論を解き明かす。
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とあり、ウォール街デモは理論を実践したものだと言えよう。


結論から言うと、私はこのデモはあまり意味がないと思っている。


民主主義の原則は選挙と立法だ。
主義を同じくした人間が結党し、選挙を通じて国民から信託を得て
議会を通じて法案を成立、制定する。これが基本的なルールである。

これを無視して、デモを行っても、これはしょせんは権力者に対して
「どうか願いを聞き届けたまえー」と騒いでいるだけのこと。

言ってみれば裏技なのだ。本当にルールを変えたいのであれば、
自分たちの手に権力を集中させるよう政党活動をするべきである。

実際、野党の議席数が少数であったために去年の秋に戦争法案は強制採決されてしまった


他にも疑わしい点はある。

前述のジーン・シャープの著作は、「アラブの春」の時にも参考にされたが、
結果的に同運動は(特にシリアやリビアでは)地域の治安と秩序を破壊し、
性情をますます不安定化させ、ダーイシュ(ISIS)を誕生させ大量の難民を発生させている。

池上彰のような小賢しい合法詐欺師は、当初は民主主義運動だったのだが…と語っているが、
当初からリビアの侵攻はNATO軍と現地の過激派(アルカイダ系列)が協力して展開されていた。

エジプトの革命だって、ムバラク政権下、
過激派として弾圧されていたムスリム同胞団も運動の主体になっていた。

少なくともエジプトの革命()は、現地の過激な宗教主義者と妥協されて行われたもので、
案の定、その後の政治はムスリム同胞団が主導権を握り、結果的に更なる困難が待っていたわけである。


同運動の支持者はリビアとシリアを名指しで悪の巣窟と語っていた。
これはアメリカと全く同じ立場である。

こういう究極的にはアメリカの国益に従って
行動している正義がはたして民衆を救えるのだろうか。


アラブの春は、その答えを示した運動でもあったと言えよう。


ウォール街の占拠運動は、国際ハッカー集団、アノニマスが企画したものでもある。

この集団は北朝鮮系の在日団体、総連の広報機関である
朝鮮新報のサイトをハッキング、しばらくの停止へと追い込んだことがある。

北朝鮮では人権が侵害されていると言って、シー・シェパードも
真っ青の強引な手段をもって攻撃するこの集団に理性があるとは思えない。

そして、彼らがデモを企画したというのであれば、そのデモも
十分、一見非暴力的に見えてその実、非常に暴力的な行動ではないかと感じる。


前回紹介した翻訳記事は、以上の私が抱いた不信感に対して
見事に解を与えてくれる内容だった。その一部をここに抜粋しよう。

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この運動で私が気になっているのは、
アノニマスやアドバスターズの様な組織や、
彼らの主要ウェブサイトには、隠された部分があるという点です。

誰が背後にいるのでしょう? 誰が資金支援をしているのでしょう?

運動が立ち上がってすぐ、
数名の著名人がウォール街占拠支持を名乗り出たのを覚えています。

しかも、それはウォーレン・バフェット、ハワード・バフェット、
ベン・バーナンキやアル・ゴアのような連中でした。

現在こうした連中は、私から見れば、危機に対する解決策ではなく、その原因です。
彼等はこの危機の背後の当事者なのです

ウォーレン・バフェットは地球上三番目の金持ちなのですから、
運動に対する彼の共感は多少疑惑をもって見るべきなのです。私はそう見ています。

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もう一つ、お話しすべき組織に、OTPOR!があります。

OTPOR!は、2000年に、セルビアの出来事に関与した組織です。
民主化推進の組織ではなく、実際は、ミロシェビッチと共に
次点候補だったコシュトニツァが、どのみち勝っていたはずの
2000年の選挙を押し退けた組織なのです。
ところが、彼等は、第2回投票の実現を妨害したのです。
そうして、彼等は基本的に政権転覆の条件を確立したのです。

それがカラー革命でした。

そして後に、OTPOR!は、CANVASと呼ばれるコンサルタント会社になりました。
多数の国々で実行されている非暴力的な形の活動をしているのです。
CANVASのロゴは握り拳です。また、彼等はグルジアに関与しました。
彼等は様々な旧ソ連共和国に関与しました。彼等はイランに関与しました。
彼等はエジプトに関与しましたし、チュニジアにも。

彼等は、いわゆる革命家集団にコンサルティング・サービスを提供しています。
けれども、彼等は、一方で、フリーダム・ハウスや、国務省や、
アメリカ議会やアメリカ諜報機関と密接につながっているアメリカの財団、
全米民主主義基金に支援されています。

つまり実質的に、CANVASは実際は、
CANVASの研修プログラムを支援している
アメリカ諜報機関のコンサルティング部門として機能しているのです。

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我々は今、いわゆるアラブの春の抗議運動のエジプト人指導者達が、
ベオグラードで訓練されたことを知っています。彼等はOTPOR!に訓練されたのです。

また、握り拳の印がエジプトでも使用されたのも驚くべきことではありません。
しかも、この印は多くの国で使用されています

グルジアの抵抗運動の名前の意味が“たくさんだ”というのは興味深いことです。
そしてエジプトのキファヤ運動も、アラビア語で“たくさんだ”という意味です。

ですから実際、いくつかの国で、同じ名前、同じロゴ、
同じキャッチ・フレーズを目にすることになる
のです。


しかし、CANVASは、様々な国で運動を支援する職業的コンサルタントとして
機能しているのですから、これは決して偶然ではありません。

これが何を示唆しているかですが、この運動、
少なくともこの運動の草の根は、熱心な人々です。それは認めなければなりません。
こうした人々を我々は支援しなければなりません。路上生活者、失業者、
学費の払えない学生、社会変革に全力で取り組んでいる人々 -
我々は彼等を支えなければなりません。

けれども、彼等は、権力の座とのつながりに基づいていますから、
そもそも最初から悪質な枠組みによって、操られているのです

言い換えれば、もし全米民主主義基金、
あるいはフリーダム・ハウスやCIAとつながっていれば、
ウォール街に対して異議申立をする際に、自立した立場はとれません。

そこで、“この事業には、一体誰が資金提供しているのか?”という疑問がおきます。
ウォール街に旅費を払えと請求しながら、ウォール街に挑戦することはできません。
ところがこれは、ニューヨーク市やアメリカ合州国中の
こうしたイベントに限定される様なものではありません。


これは進歩派の運動を実に実に長い間特徴付けてきたものなのです。
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話し手のミシェル・チョスドスキーはカナダ・オタワ大学の経済学教授。
アメリカの外交政策および通商政策の分析のエキスパートだ。

各国で同一のスローガンとマークの民主化運動が展開されている。
しかも、それはアメリカの権力と繋がりのある集団に支援されたものだ。

この不気味さをどう表現すれば良いだろう。


私は以前から、
日本の左翼は戦前からの国是である
反共主義を克服することができなかった
と主張している。



共産主義の脅威がある冷戦の最中、社会党や丸山真男をはじめとする進歩派知識人は
国内の共産主義者を攻撃するために機能し、政府が統御可能な民衆運動を主導してきた。


戦後まもなくの時代、共産党は非合法化され弾圧を受けたのに対して、
社会党は、なぜかその存在を認められ、最大野党として90年代まで君臨し続けた。

学生運動も過激な運動が展開されていたにも関わらず、社会党とマスメディアは共産党と対立する
この新左翼を支持し、組織によっては右翼から活動を資金を得るところさえあった。

この意味をよく考えてほしい。
(彼ら反共左翼、特に社会党は冷戦終結後、簡単に権力者に切り捨てられ、弱体化する。)


権力者による監督下の運動。
真の抵抗勢力の芽生えを抑制するための抵抗。

この構図はウォール街デモのそれと全く同一のものである。





次の文もご覧いただきたい。

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エジプトの場合で気がついたことですが、
キファヤ、4月6日運動や、ムスリム同胞団で構成されている主要団体は、
決して、湾岸戦争の真っただ中、1991年からエジプトに押しつけられた
IMFと世界銀行のマクロ経済改革、新自由主義的な思惑には、
実際決して異議を申し立てません


私は偶然、まさにその瞬間にエジプトにいました。
財務大臣の事務所にいたのです。そして改革が押しつけられました。
そして、20年間にわたる期間、エジプトが、
こうした破壊的なマクロ経済改革にさらされ、
農業の破壊や公共部門の大量失業がおきました。


しかも、その枠組みは現在もそのままです。変わってはいません

実質的に、タハリール広場事件後、エジプト経済は、
特に海外債務のレベルが上がって、困難な状況に陥ったので実際は悪化しています。
ですから、IMFと世界銀行の握り拳は、そのままエジプトに残っているのです。

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そして、ウォール街占拠は極めてよく似た状況にあります。
そもそもエジプトとチュニジアを手本にしています。

両国は手本ではありません。両国は失敗なのです。

いずれも草の根を操るカラー革命で、こうした国々を袋小路に
現状維持に追い込むのです。ですから、抗議運動の上がりは現状維持なのです。

うわべは民主化ですが、実際に起きているのは政府の権力の地位にいる人々の
アメリカや他の国々の債権者達の為に、事実上同じ役割を演じる他の連中による置き換えです



ウォール街占拠の人々の声明の中の一つが、私には非常に気になるのです。

とりわけ、ナオミ・クライン、ノーム・チョムスキーやヴァンダナ・シヴァ等を含む
多数の名士による声明があったのを覚えています。声明の一部は良いのです。

けれども、“世界中のアル-アサド、世界中のカダフィ”に反対して
戦わなければならず、これらの独裁者はIMFと世界銀行の化身なのだと
彼等は言っている
のです。この思惑の背後にはIMFと世界銀行がいて、
そうした組織は、カダフィやアル-アサドが自国民を扱うのと同じやり方で
我々を扱っているのだと彼等は言っています。

それ自体が経済的悪魔であるIMFと世界銀行に焦点を合わせるのではなく、
政治上の人物のイメージを通して、IMFと世界銀行を悪魔化しているので、
そのような例えは全く人を惑わすものです。
[実際、この誤解を招く比較の狙いは、アサドとカダフィを悪魔化することにある]

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抵抗運動の形をとったアメリカの敵国批判。

チョスドスキー博士は
抵抗運動が権力者によって操作されていると語っているが、まさにそのとおりで、
こういう良心的な団体のお墨付きを得て現実の侵略政策は進行していくのである。



抽象的な意味での戦争や侵略には彼らはもちろん反対する。

だが、得てして侵略とは情勢の不安定な地域をターゲットにして行われるのである。


要するに、反共左翼は平和を切望するわりには、中東やアジアのような非欧米圏
(特に旧・現社会主義国家)に対する欧米の侵略やレッテル貼りには、非道く寛容で、積極的に支援する。


こういう行為が侵略者にとって最大のエールであることは言うまでもない。


そして、こういう行為をするように誘導されている連中が叫ぶ
貧困撲滅、自由、人権の浅薄さは被侵略国の惨状をみれば明白だ。


どうも私はウォール街デモのこういう点を直観的に感じ取っていたらしい。
次回では、リビアに対するチョスドスキー氏の意見を取り上げていこう。


~2016年3月23日追記~

ほぼ毎日、海外の貴重な記事を翻訳している「マスコミに載らない海外記事」様からTBが送られてきた。
それも受け、今回、内容を修正・追記したが、

ウォール街占拠運動やアラブの春運動、
そして日本国内の民主主義運動には致命的な欠陥があり、
それを無視して安易な平和主義を語ることはかえって危険だ


という私の主張自体に変わりはない。
なお、改めて読み直したら、肝心の参照URLを載せていなかった。

この場を借りて、お詫びを申し上げたい。
本記事で取り上げた記事は、いずれも次のページから引用したものである。

http://www.strategic-culture.org/news/2016/03/20/soros-disruption-american-style.html



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