時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

リビアの破壊が難民ビジネスを生み出した(ISISの人身売買)

2015-09-16 00:23:33 | ベルリンの壁2.1
移動の自由は誰にでもあると豪語していた
西ヨーロッパがドイツ等の一部を除き、難民を前に門を閉じつつある一方で、
ISIS(イスラム国)による人身輸送が人気のビジネスになっている。


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移民輸送と課税で「イスラム国」は年内に10億ドルの利益をあげる

「イスラム国」は違法な移民の輸送によって
 利益をあげ、かつ、欧州の難民危機を助長している。

ノルウェー国際分析センターのクリスチャン・ネルマン所長によれば、
人身売買や各種の関税は、今や石油にかわる「イスラム国」の主要な収入源となっている



以下、ネルマン氏の語ったことの概要をご紹介する。

「イスラム国」は国家を立ち上げるために、
 少なくとも年間5億ドルという、莫大な資金を必要としている。

しかし昨年、資金源が断たれた。
それまで彼らは石油を主な財源としていたが、石油による収入は6~8割も減ってしまった。

しかし、収入源のシフトチェンジの手並みは極めて鮮やかで、
今は関税と人身輸送が主な財源となっている。

人身輸送は今や北アフリカ・中東で最ももうかるビジネスだ。

地域には様々な犯罪組織が乱立しており、暴力による恐喝で金銭を徴収している
こうした徴税制度と人身輸送が、「イスラム国」の収入源として素早く取り入れられた

年内に密航ビジネスの規模は20億ドルを超える見通しで、
「イスラム国」はこの分野でゆるやかにシェアを拡大していくと予想される。

http://jp.sputniknews.com/middle_east/20150915/897353.html
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上の「徴税」は、リビアおよびシナイ地方の交通の要所で行われており、
レバノン・ヨルダン国境にも拡大しつつある。


ISISには国境を開閉する権限があり、移民を任意の箇所へ誘導することが可能になっている。
つまり、現地の人間に暴行を働くことで特定の場所へ追い出し、金をせしめるというわけだ。

これだけを読めば「ISISけしからん」という感想が出るだけで終わってしまうが、
一連の犯罪の背景には中東研究者を含め
多くの人間が民主主義の勝利と絶賛した「アラブの春」が存在する。


次のスプートニクの論評は
そのへんのゴミのようなイスラム国解説本よりも反芻するに値する。


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いま人身輸送を生業にしている人の多くはリビア政変前には別の仕事で生計を立てていた。
カダフィ氏は多額の農業投資を行い、国境地帯の諸都市にも色々な投資を行っていた。


そのカダフィ氏がいなくなると、仕事にあぶれた多くの人が
生計を立てる唯一の道として人身輸送にシフトした。


シリアとイラクにおける紛争に直接向けられた、もっとずっと幅広いメッセージが必要なのだ。
ただ単に難民問題を単独の問題として処理するのでは、
「イスラム国」の増強、そして脅威という問題を解決できない。


極限すれば、欧米は、単に「イスラム国」を爆撃することに加えて、
資金の流れ、リクルート戦術、宣伝工作、テロ組織の温床となっている腐敗した政権、
リビアをはじめとする一部の国の社会的混乱といった、全ての問題を総合的に考慮する必要がある。

テロという問題に長期的展望のもとで対処するにはこうしたことが必要なのだ。

(同記事より)
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John RosenthalのThe Jihadist Plotでは、
NATOがアルカイダと結託してリビアを軍事侵攻したことが書かれている。

彼に限らず、西側諸国が現地の過激派と組み、
リビアという国家を文字通り地上から消滅させたことは周知の事実だろう。


少なくともロシアや中国のような非欧米圏の国家では、
アフガン→イラク→リビア→シリアの順に
NATOの軍事干渉が行われていると認識する政治家・学者は少なくない。


イスラム国というと、サイコな連中がクレイジーなことばかりしていると思われがちだが、
一見、狂信者の集団に群れに見えるこの組織にも生存のために加入する人間が多く存在する。

米英仏侵略トリオは、ISISの支配地域に爆撃を行っているわけだが、
どこぞの国のせいで生きる術を失った人間もテロとして殺すのだろうか?


上の論評でも指摘されているが、
ISIS対策は単にテロ組織を空爆するだけでは解決されない問題であり、
NATO参加国は、自分たちが今まで破壊してきたものに対するツケを払わなければならない。


より大きな包括的な対策(ISISに代わる生存システムの構築)が必要である。
トカゲの尻尾を切るだけでは、根本的な解決には至らない。


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