時事解説「ディストピア」

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シャルリエブド紙のルソフォビア(ロシア嫌悪)

2015-11-07 00:21:14 | 国際政治
今年のはじめにあったシャルリエブド紙へのテロ事件。テロ事件は非難すべきものだが、
継続してムスリム嫌悪を煽っていたあの醜悪な雑誌をあたかも自由の殉教者のようにみなすこと、
つまり、「私はシャルリー」と書かれたカードを持ち佇む行為には以前から辟易していた。

そのシャルリエブド紙が今度は、ロシア旅客機事故をネタにまた同じことを繰り返している。


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フランスの諷刺誌シャルリ・エブドが、ロシアのA321型機がシナイ半島に墜落し、
224人が死亡した事故を諷刺した絵を発表した。リア・ノーヴォスチが伝えた。

一枚目の絵には事故機の乗客と同機の残骸がテロリストの頭上に落ちてくる様子が描かれ、
「ロシア軍、空爆を強化」と添え書きされている。


二枚目の絵には事故機の残骸を背景に頭蓋骨が描かれている。
その吹き出しには、「ロシアの格安航空会社は危険がいっぱい」とある。

ロシアのRen-TVはこれを取り上げたなかで、
「これは犠牲者に対する不敬であり冒涜である」と語る
ロシア議会上院国際問題委員会委員イーゴリ・モロゾフ氏のコメントを紹介している。


「これはこの事故の犠牲者に対する不敬であり冒涜である、と考える。
 どのような形態の、何を専門とするいかなる雑誌、またいかなるメディアといえども、
 このようなことをしてはならない。シナイで起こった事故をあざ笑うことは許容できない。
 シャルリ・エブドのオリジナリティ志向にはショックを受ける。
 今年1月、同誌で起こった悲劇を思い出さずにはいられない。
 記者たち自らが暴力行為を誘発したのではないか、という感じがする

モロゾフ議員は以上のように述べた。

続きを読む http://jp.sputniknews.com/politics/20151106/1128020.html#ixzz3qiu0phkk

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1枚目の風刺については、特にきつく言うつもりはない。
シャルリエブド紙がフランスのシリアへの軍事干渉を風刺している限りならば。

もっとも、シリアの要請を受けて出動したロシア軍を非難する一方で、
アサド政権の崩壊を目論み、反体制派に武器を与えたり軍事教練を施したり、
空爆をしかける欧米の軍にはこれといって非難されない全体の現状を思えば、
単に社会に蔓延するルソフォビア(ロシア嫌悪症)を煽っているだけにも見える。


2枚目の絵に関しては、呆れるほかない。
仮にロシアの空爆に反感を抱いたとしても、ロシアの民間会社を非難するのは間違いだ。
事件とは無関係の航空会社にまで「危険がいっぱい」とレッテルを貼る権利はシャルリエブドにはない。

今回の事件は、セウォル号のような事件とは違って、搭乗員が乗客を置き去りにしていない。
それどころか、現時点でも原因がわからず調査中なのである。

たった一件の事故をもって「ロシアの飛行機は事故を起こしてばかりだ」
というメッセージを送るシャルリエブドは風刺というより、
セウォル号の事故を韓国をあざ笑うネタとして利用するネトウヨのまとめサイトと
同じ単なるゼノフォビア(外国人嫌悪)ではないだろうか?


つまり、嫌韓流ならぬ嫌露流とでも言うべき侮蔑行為を
この週刊誌は行っているように見えるし、そのようなヘイト行為は
モロゾフ議員が言うように、徒に両者の偏見や暴力を助長させるだけに終わるだろう。


・追記

本文にも書いたが、ヨーロッパには歴史的に露西亜に対する偏見がある。
これはそれこそナポレオンの時代からあるもので、ルソフォビアと呼ばれている。


ナチス・ドイツやイタリア・ファシスト党が好き放題に暴れ回ることが出来たのも
ソ連に対する当て馬として米英仏が利用したことが原因として挙げられる。


第二次世界大戦時の束の間の雪解けを経て、両者は互いに鉄のカーテンを下ろした。
「鉄のカーテン」とは共産社会の閉鎖性をチャーチルが比ゆしたものだが、
 イギリスもまたロシアに向けて再び鉄よりも重く堅い壁を築いていた。
「雪解け」という表現はあくまで西ヨーロッパ中心の言葉だと私は思う。
 実際にはロシアの雪は解ける一方で、西洋の雪が止むことはなかった。
 その雪は未だにシリアやウクライナで降り続けていて、解ける気配が一向にない。

なるほど、あの悲劇的事件を経て、シャルリエブドはヒーローになった。
しかし、それは非西洋世界においては悪漢以外の何者でもなかろう。


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