時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

香港の占拠事件(雨傘革命)について

2014-11-10 23:24:31 | 反共左翼
加藤哲郎氏は政治学者としての職業的責務は十分果たしている方だと思う。
実際、彼のホームページを読むと遊ぶ暇なく研究に勤しんでいること、
世界中を飛び回って他の学者と交流し、知見を深めていることは明瞭だ。


だが、政治学者としての社会的責務を考えると、
これはむしろ害悪の部類であって、彼のような人間が逆に
好意的に受け入れられているあたりに、日本の社会運動の致命的な欠陥が伺える。




世界史的観点から見れば、ユーラシアは常にヨーロッパにとって異境であり、
アフリカと同様に侵略と収奪の対象となってきた。中国も例外ではない。


重要なのは、この帝国・植民地主義が現在も維持されているということ、
ロシアと中国のような大国に対しての列強からの圧力は未だにあることだ。



その典型例として、ウクライナ問題と香港の「民主化」運動が挙げられる。


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香港の不法な「セントラル(中環)占拠」を米国メディアは注視し、
米国の一部勢力は「セントラル占拠」を必死に煽り立ててもいる。


外国メディアの報道によると、早くも数か月前には
全米民主主義基金(NED)幹部が「セントラル占拠」の重要人物と会い、
「セントラル占拠」について話し合った。

この幹部とは、アジアおよび西アジア・北アフリカ地域問題担当のルイザ・グリーブ副会長だ。
彼女と「チベット独立」「東トルキスタン」「民主化運動」勢力との結びつきに関する報道は、
長年よく見られ、近年も「アラブの春」や他の地域の「色の革命」関連のシンポジウムなどを
主催したり、これに参加したりしている。

もちろん米国は、他の反中勢力を操っていることを認めないのと同様、
「セントラル占拠」を操っていることも認めない。

彼らは「民主主義、自由、人権」といった価値観を用いて、自らの行動の正当性を主張する。


http://j.people.com.cn/n/2014/1010/c94474-8792813.html

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要するに、香港の占拠は何カ月も前に、
アメリカの人権団体の幹部が現地の市民団体と共同して計画したものだった。


もちろん、その内容が確かなものであれば、別に非難されるものでもない。
欧米、日本と同様、中国もまた完全な民主社会には到達していないのだから。


だが、この運動は実際には中国を欧米化させようとする試みであり、
その改革者たちの言葉を聞く限り、かなり問題があるものだと思われる。


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"香港の民主主義がなぜ重要なのか"と題する対話は一時間にわたり、
NEDの地域副理事長ルイサ・グレーブと共に、指導部の二人は、
"オキュパイ・セントラル"運動の性格、狙い、要求と論点を皆説明した。

特にイギリス支配の下で元特別行政区政務司司長だったアンソン・チャンは、
完璧なイギリス・アクセントで、問題は、中国が1990年代末、香港引き渡しの際、
イギリスと結んだ"協定"を明らかに撤回しつつあることだと繰り返し主張した。


リーは、聴衆メンバーと共に、
香港の役割は中国本土、香港の欧米スタイルの機構、
法律と権益で染まらせることだ
と繰り返し述べた。


リーはまた特にワシントンに、香港におけるアメリカ権益の擁護に、
必ず全力で取り組み続ける
よう繰り返し訴えている。

~中略~

自治と自決を求め、北京の介入を非難する民主化運動が
外国権益から資金供給され、計画自体、外国資本によって
作られているというのは全く度し難い意図的なごまかしだ。




民主主義というものは、実際、自治と自決を想定している。


もしアメリカ国務省が、"オキュパイ・セントラル"の背後にいる政治家や
抗議行動指導者と共謀し、資金援助し、支配しているのであれば、
香港の人々は、何も統治せず、決定していない。


ワシントンとウオール街がそうしているのだ。
マーティン・リーと協力者のアンソン・チャンは、
北京が香港で政策を押しつけていると文句を言いながら、
香港統治を指示する外国権益代表だらけの部屋に、二人して座っているのだ。

http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2014/10/post-87d2.html
(「自決~ごまかしだ」の部分は、読みやすいように意味が変わらない程度に修正した)
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アメリカとイギリスの権益を第一とする運動。

これが香港で行われた民主主義だった。




もともと、香港は1997年にようやくイギリスから返還された都市であり、
イギリスのスコットランドのように武力によって併合させられた土地ではない。

(ちなみに、イギリスはアイルランド・スコットランドの独立には猛反対している)

欧米式のスタイルと言えば聞こえが良いが、要するに
植民地時代の外国勢の政治的経済的利権を取り戻すために、
中国政府からパワーを奪うのが今回の運動の目的だったと言えよう。


そういう意味では、再占領化とか再植民地という言葉がしっくりくる。


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米側がどう否定しようとも、「セントラル占拠」問題に対する
米国の政府、NGO、メディアの処理手法および介入の程度は、
独立国家共同体、中東、北アフリカなどで近年起きた様々な
「色の革命」の背後にある米国の影を容易に連想させる。


米国は一部の国の「色の革命」を後押しすることに、疲れ知らずで熱中していると言える。
米国が「色の革命」を支持するのは、表面的には「民主主義、自由、人権」という
「普遍的価値」の実行であり、確かに少なからぬ米国人やNGOは
「生きとし生けるものを救う」「天賦の使命」が自らにあると厚く信じている。


だが「色の革命」の結末をよく見さえすれば、
本質的に米国は自らの戦略的利益に着眼し、これを利用して
好きでない、言うことを聞かない政権を転覆させてきたことに気づく。



米側の論理を用いて言うなら、「民主主義」的な国や政権は米国の利益に合致するのだ。


米国の中東全体の「民主化」計画は成功しておらず、
「アラブの春」にいたっては「アラブの冬」へと変わり、
ウクライナの「街頭政治」は国家の分裂と流血の衝突へと転じた。


こうした国々が経験したのは真の民主主義ではなく、動揺だ。

だが米国はこうした教訓を前に、見て見ぬふりをしている。

http://j.people.com.cn/n/2014/1010/c94474-8792813-2.html
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アメリカに限らず、侵略国が他の地方を支配するには、
まず現地の有力者を懐柔するところから始まる。



その後、民主化運動と称して、彼らを支援・誘導し、権力を収めさせた後、
自分たちに利益を流すよう取り計らってもらう。ある意味ウィンウィンの関係だ。


こういう面のほかに、 復旦大学の張維教授は

「『セントラル占拠』は香港に対する悪影響が次第に顕在化しており、
  香港の法治を損なっているし、香港の発展の助けにもならない」と指摘している。


実際、香港は現状でも強力な自治権を与えられていて、
その政治も法に則って行われている。法治主義が民主主義と考えれば、
今回のような無理矢理に自分たちの意見を通らせようとする運動は
全く民主的ではないし、ベクトルこそ違えど本質的にはテロと同じだ。


(実際、アメリカはアフガンやニカラグアなどで、
 現地のゲリラを支援・訓練してきた経緯がある)


さて、ここまで詳細にこの事件について考察を練ってきたが、
ここで加藤名誉教授のホームページを読んでみると、今回の占拠を
民主主義のほころびとしてみるのではなく、逆に肯定的に捉えているのがわかる。



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そんな世界の中での、一抹の希望。スコットランド独立をめぐって、
過半数までは届かなかったが自決・自治の力を世界に示した、
イギリスでの住民投票の経験、そして、いま眼前で進む、
普通・平等・自由選挙への、香港市民の願いと運動。

前者は、スペインでのカタルーニャやバスクの住民投票へと飛び火し、
後者は、かつて四半世紀前の天安門前広場を想起させる、
「アンブレラ・レボルーション(雨傘革命)」へと展開しています。

福島や沖縄の人々は、身につまらせる思いで、注目していることでしょう。

自分たちの問題を自分たちで決めること、自分たちの代表は自分たちで選ぶこと。
これが、民主主義の原点です。

(2014年10月1日 http://members.jcom.home.ne.jp/katote/Living.html)

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もちろん、同氏は非常に多忙な方なので、
ろくに調べもしないで印象論でこう語ったのも仕方ないとは思う。


だが、「政治学」という最もこの種の政治的な運動に対して
批判の目を向け、その隠された問題点を暴露しなければならない
であろう学問のエキスパートが、自らが権威ある存在であることを
自覚せず(あるいは自覚して)、いい加減な言葉を述べるべきではない。


私がこうまで加藤教授を厳しく批判するのも、
実際に彼が政治学者として、数々の運動に参加し、その中で
共産党は原発推進派だとか、随分と意図的な虚偽を語っているからだ。
学者としては優秀だが、運動家としては、もはや詐欺師同然だろう。



戦後左翼の大きな問題として、反共主義が呪縛になっていることが挙げられる。
(裏返せば、西欧の価値観(特に民主主義)への異常な信頼とも言える)

北朝鮮や中国を欧米の視点からブッ叩く。
その結果、実は欧米の冷戦時以前からのお得意芸、
現地の人間を懐柔して、自らの利益を達成させる駒を作り、間接的に支配する
という決して見逃してはいけない行為に気付かないでしまう。


結果的に見れば、欧米の侵略を支持している。

忘れてもらっては困るのだが、日本が右傾化しているのは
右翼だけでなく、この手の無自覚な左翼の加担のせいでもある。



日本が右傾化から脱するには、反ヘイトスピーチだけでなく、
現在の左翼の劣化した理性に対してももの申していかなければならないだろう。