時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

共産党による小保方事件の解説は正しい

2014-09-09 23:45:40 | 浅学なる道(コラム)
ウクライナ内戦や北朝鮮外交、領土問題などで異なる……というより、
問題のある意見を持ちながら、なお、共産党を支持するのは、
同党の内政に対する政策に共感しているからだと思う。


一番大事なのは内政であり、生活である。
生活よりも軍事や歴史改ざんに力を入れるような政治家は要らない。


安倍・麻生の右翼コンビがこの1年でやったことと言えば、
軍拡とそれに伴う歴史改ざん、靖国参拝、財界優先の経済政策、
物価(特に輸入品価格)の上昇、酪農家の廃業(輸入していた飼料が高くなったため)、
消費税増税と法人税減税(大企業に減税する分を全国民に負担させる)、
集団的自衛権の容認、東京カジノ化計画等々…生活の向上に直結するものが何一つない。

これに比べて、共産党は生活レベルの問題から物事を考えているので、
読んでいても、首肯できる部分が多いのである。


今月の「経済」(共産党が発行している政治・経済雑誌)に、
偶然、前記事で扱った若手研究者へ対する現状に言及する論文があった。


言いたいことをほぼ言ってくれた……と正直、ちょっと感動してもいる。

特に、小保方論文の問題化の背景には、結果のみを追求する大学側の姿勢と
ポスドク問題(人文・社会・理系基礎などの研究者の就労問題)があることを
明快に論じてみせた功績は大きいと思う。


大げさに言ったが、要するに小保方問題については私と意見を同じくしている。
恐らくだが、実際に院生の状況をきちんと調べた上で書いているのだろう。
(池上彰に見習わせてやりたいぐらいだ)


ここ数年で肌で感じるほど、状況は悪化したと思う。
人員はいっそう減らす一方で、院生への負担は大きい。


正直に告白すると、学部生への卒論の指導などを
院生が教授の代わりに行っているところもある。

理系のほうが非道いらしいが、院生は学費を払いながら下働きをしている。
それでも、なんとかその後の面倒を見てもらえるならいいが、
実際には、わりと無責任で、基本的に自分で努力しなければならない。


要するに、院生への要求(教授レベルの論文、学部生の面倒、論文雑誌の編集)
が高いわりには、リターンが極端に少ないのである。



それでも、今まではハイリスク・ハイリターンだったのだが、
だんだんとハイリスク・ローリターンへと変化していき、
今ではハイリスク・ノーリターンじゃないかと思うレベルにすらなっている。


こういう状況に対して院生はあまりにも無力なので、
大学の姿勢が自発的に改善されない以上、政治の力に頼るしかない。

そういう意味でも、共産党を支持するのは自分の生活に直接
影響の及ぼす分野を働く人間の目線で考えてくれるからに他ならない。


これは、逆を言えば外交には弱いことの表れなのだが、
それでもなお、支持するに値するだろう。
他の政党が事実上の自民党の衛星国家あるいは保護国になっている以上は。

学会の論文投稿システムの問題点と小保方事件、古市氏について

2014-09-09 00:16:17 | 浅学なる道(コラム)
論文の内容はそのままでタイトルを変えたら査読を通った。
あるいは、書かれている文章の順番を変えたら査読を通った。


ありえない話だと思うかもしれないが実際にあったことである。



私自身は、まだまだ新米なので査読など夢のまた夢の話なのだが、
自分自身の経験と照らしてみても、本当に論文を読んだのか?
と言いたくなるコメントを返されることは多い。

上の二例は、その代表的なもので、
審査員の中にはタイトルや初めの部分だけを読んで、
その印象で採用の有無を決めてしまう人がいるような気がする。

もちろん、確かな学会では複数の人間に頼んでいるのだが、
時たま、どの先生も適当に読んでいないかと思うこともあるにはある。


常識的に考えて、論文の内容が掲載するに値するならば、
タイトルだけ変えてくれという話になるはずなのだが、そういうケースは稀で、
実際には、論文の内容には頷けるが、タイトルが悪いので不採用となっている。


そんな馬鹿な!という話なのだが……

(私がよく読んでいないんじゃないかと思うのも、
 タイトル信仰など、存在するわけないと思いたいからでもある。)


順番を変えたら通ったというのも、すごい話で、
研究動向の紹介や、その問題点の指摘を本論で行っているのに、
「先行研究の紹介・論文執筆の意義が記されていない!」という
 ありえない総評を返されたことがある。

「いやいや、書いてるだろう!?」と思ったのだが、
 よくよく考えると、序論には書いていなかった。

ということは、序論(最初の2ページ)だけ読んだのか?という疑念が消えない。



このように、論文の採用には、どうも純粋な内容よりも、テクニック
(適切なタイトルか、文章に誤りがないか、論理構成が妥当か)が重視されているようである。


書いていて本当に嫌になるが、
内容はそのままなのに、書き方を変えるだけで通ることがあるのだ。


その一方で、学会の論文には、編集部からオファーが来る場合もある。

つまり、必死に執筆して送ってもタイトルや序論だけチョロっと読まれて
判断されてしまう一方で、向こうから頼まれて書くこともあるのだ。


そして、実はこのオファー、コネクションが重要だったりする

もちろん、最低限度の実力があるから頼まれるのだが、
正直、研究者の間にそこまで明確な実力の差があるわけではない。


そういうわけだから、自殺した師匠に面倒をみてもらうまで、
小保方氏の学説が箸にも棒にも引っかからなかったのは凄く納得がいく。


そういうコネクションやネームバリューに左右されたり、
不真面目な審査を行っているから、
小保方氏のようなケースが発生するのだ。



私は文系なので、理系とは違うのだが、恐らく事情は同じだと思う。

本当、こういう嫌~~なシステムの中、末端の人間はひたすら論文を執筆し、
送らなければならないというのは非常につらいものではあるが、
まぁ、そうしないと結果的に実績を積めないので仕方ない。


とはいえ、俳優や歌手、作家などにも言えることだが、
向こうは生活手段を約束してくれないので、
こういう若手には厳格な制度では、逆に、右翼陣に仲間入りして、
いい加減な言説を流して小遣いをもらう人間だって出てくるのではないだろうか?

実際に、古市氏などは好例だが、若手の有名研究者は、
研究内容よりも、政治的な立ち位置を評価されている者が多い。

まぁ、断言はできないのだが、少なくとも論壇ではそうだ。

もちろん、若手でも正真正銘の真面目な青年研究者はいるのだが、
あまり目立たない上に、ほんの一部分であり、やはり多数の若手は、
相当、厳しい条件で戦っていると思う(教授たちのように学校側からの
金銭の支援を受けることなく、自腹で研究活動を行っている)


そういう若者に冷たい封建的な業界だから、
逆に小保方氏や古市氏のような事例が出てこざるを得ないのでは?
と私は思えてならない。

正しいようで間違っている池上彰氏の慰安婦の説明

2014-09-09 00:15:14 | マスコミ批判
池上彰氏の朝日の慰安婦検証への批判については、前の記事で述べたが、
氏の説明の中には、重大な誤りがあり、本記事ではその点を詳説しようと思う。



問題の個所は次の部分でもある。
(他にも色々あるが、特に気になったのはこの部分)


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検証記事は、「慰安婦」と「挺身隊(ていしんたい)」との混同についても書いています。
「女子挺身隊」は、戦時下で女性を労働力として動員するためのもの。

慰安婦とは別物です。


91年の朝日新聞記事は、女子挺身隊と慰安婦を混同して報じたものだと認めました。


これについて「読者のみなさまへ」というコーナーでは
「当時は、慰安婦問題に関する研究が進んでおらず、
記者が参考にした資料などにも慰安婦と挺身隊の混同がみられたことから、
誤用しました」と書いています。


ところが、検証記事の本文では
「朝日新聞は93年以降、両者を混同しないよう努めてきた」とも書いています。

ということは、93年時点で混同に気づいていたということです。
その時点で、どうして訂正を出さなかったのか。それについての検証もありません。

http://www.asahi.com/articles/DA3S11332230.html
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結論から述べると、
最近の研究では、「慰安婦」と「挺身隊」は
明確に区分されていたものではないことが判明している。



挺身とは「身を捧げる」という意味で、強制連行の一種なのだが、
日本とは違い、朝鮮半島では必ずしも慰安婦と別のものではなく、
実際には挺身隊の一環として動員された事例も見られる。

また、当の慰安婦本人や連行した軍人が、挺身隊として
被害者を連れて行かれた・連れて行ったと認識しており、
挺身隊は女性動員の代名詞として使用されていた点も見逃せない。


簡単に説明すると、国語普及挺身隊、報道挺身隊、仁術挺身隊など、
多くの強制的な動員の総称および通称が挺身隊であり、慰安婦も含まれるわけだ。


例えれば、日本人の全てが神奈川県民ではないが、神奈川県民は日本人であるように
挺身隊すべてが慰安婦ではないが、慰安婦は挺身隊の一種として数えられる。

この点については、論創社から『日本軍の性奴隷制』という学術書が出版されており、
その中で詳しく説明されている。関心がある方は図書館なり書店なりで読んでもらいたい。



さて、池上氏のコラムを読むと、挺身隊は女子を労働力として動員するものであり、
慰安婦とは別物と明記されている。これは明らかな間違いだ。



本来は、
「最新の研究では、慰安婦と挺身隊は必ずしも明確に区分されていた制度ではなく、
 しばしば混同が見られている。朝日は、検証と言いながら基本資料すら読んでいない。
 歴史問題をめぐって日韓関係が荒れる状況で、無責任な言及は控えるべきだ」


とでも書くべきだったのだが、逆に朝日がちょっとズレている反省をしたこと
を利用して、ネトウヨと一緒に朝日はもっと謝るべきと主張している。


過ちは潔く認め、謝罪する。これは国と国との関係であっても、
 新聞記者のモラルとしても、同じこと
」とまで述べているが、
 どうも自分は間違いを指摘されていないので謝罪しなくてもよいようだ。


また、肝心な点だが、問題の吉田清治氏の証言に信憑性がないことを理由に、
済州島で慰安婦が強制連行されていないとは言えない。

実際、歴史学者は吉田氏の意見をあまり重要視しないで、
その上でなお、強制連行の事実があったことを認めている。

以前は、就業詐欺の事例のほうが多いと言われていたのだが、
先述の挺身隊のように、最近では事実上あるいは正真正銘の
強制連行もかなり多いことが確認されており
、一概にどちらが多いとも言えない。

また、村長に女性を提供させたり、拉致して連れてくる事例も
中国や東南アジアを中心に多く見られており、慰安婦=韓国という
認識を改める必要も出てきている
(私自身はアジア女性全体が被害者だと思う)。

http://wam-peace.org/ianfu-mondai/qa/


これも池上氏が言及しなかった点である。


以上、池上氏のコラムを読むと、氏があまり勉強をしないで、
この問題について、とりあえず朝日を批判してやろうと考えていることがわかる。


もちろん、朝日の反省の仕方および内容がおかしいのがそもそもの間違いなのだが、
それを考慮しても、いくら夕刊のコラム記事とはいえ、
間違った印象を読者に与えてしまうのではないだろうか?


今に始まったことではないが、池上氏のこの一見、批判しているようで
実は、毒にも薬にもならない言葉を並べて大勢に味方している姿勢は問題があるだろう。


確かに、看板役者だからといって安易に彼を起用してしまう朝日はおかしい。
田母神批判の記事で五十歩百歩の秦郁彦氏に話を聞いてしまうのが今の朝日だ。

正直言って、今回のは内ゲバだったと思う。
だが、それにも関らず、私はやはり公共の場でいい加減な文章を書き、
それによって生計を立てている池上氏の責任は朝日以上に重いと思う。