ならなしとり

外来生物問題を主に扱います。ときどきその他のことも。このブログでは基本的に名無しさんは相手にしませんのであしからず。

比喩なのにわかりにくい 訂正あり

2012-03-04 11:33:50 | 議論
 2月末にこのような記事が反響を呼びました。

「正しく怖れよ」な人には水を引っかけちゃいな

この記事の比喩に対して不適切という声が多数ありましたが、僕が気になったのはそこじゃないんですね。比喩というのは、“わかりやすく”するために出すもので、適切かどうかはさほど重要でない。
それよりも問題なのは“比喩なのにわかりにくい”ということ。まず「指の入ったラーメンを出した店員」は現実において誰なのか?ということ。放射性物質をまき散らしたのは国と東電に責任があることはいまさら議論の必要があるとは思えません。そういう意味では店員=国や東電であるならば一応理解できます。しかし、正しく怖がれと言っている人は国や東電ではないですよね?僕が記憶している中では、「正しく怖がれ」というフレーズを使いだしたのは菊池誠氏あたりが去年の夏ごろから使い始めたと記憶しています。しかし、菊池氏は原発推進に加担していたわけでもないし(だからエア御用なんて言われる)、被災地への補償はちゃんとやれと言っています。

つまり、言及先で水をぶっかけろというのは、実際にいるかいないかよくわからない領域(←追記にて訂正)の人であるわけですよ。それ以外の「正しく怖がれと言っている人」に対してまで水をかけろ(うちのこの記事では非難しろ、まともに取り合うなの意)というのであればそれは状況を加味しない理不尽な行為なわけです。
言及先では店員=正しく怖がれと言っている人な図式ですが、正しく怖がれと言っている人があの震災で放射性物質をまき散らしたことに加担していた事例でもあるのでしょうか?複数の立場がごちゃ混ぜにされていて実にわかりにくい。具体例の一つもあれば理解が進んだろうにと思います。
そして何よりも重大だと僕が思うのは「指の入ったラーメンとは果たして何を指しているのか?」ということです。指の入ったラーメンとはガレキを指すのか農作物なのかそれとも“被災地の人間”なのか。この比喩が現実に示す範囲も言及先では明らかにされていません。実際には被災地の人間が避難者であることを理由に遊ばせるなと言われたり保育園への入園を断られる事例が発生しているわけで。
「原発」理由で入園を断る、山梨

子供にとって遊ぶことや保育園などで人間関係を構築していくのって将来に向けての重要なステップですよね。それすら受けられないのは“指の入ったラーメン”だからで片づけることは可能なんですかね?
そして最後に。お客様であるのはいったいどこまでなのか?ということですね。これが被災地の人=お客様で彼らが国や東電に対して補償を求めるのは当たり前。でもね、実際に大きな声、それも復興への害になる声を上げているのは必ずしも被災地ではないわけで。そういったものに対するカウンター言説としての「正しく怖がれ」をベースにした情報提供なども駄目なんですかね?
このように、言及先の比喩を現実にあてはめようとすると良く言っても大雑把な切り分けしかされていないため“比喩なのにわかりにくい”ということになるんですよね。まぁ、そこらへんは言及先の次の記事で明らかにされるのでしょう。

おまけ

“正しく怖れよ”だの“「放射脳」”だの、放射性物質汚染被害を小さくみせたい人たちには、とりあえず水鉄砲で顔に水引っかけてやるのがいいんじゃないかな?


この発言を文字通り解釈すると菊池氏にも水をかけるのもこの人は肯定するのでしょうが、過去にバードストライク問題で文献ひとつ碌に読まず文字通り風車に突っ込んだ御仁が批判や異論にもきちんと耳を傾ける菊池氏より被害を正しく把握しているとは過去に相対した身からはとてもとても。あとは正しく怖がれに同意していても放射脳には賛意を示さない人もいるからそういう部分でも切り分けが大雑把ですよね。
社会生物学論争でのずぶ濡れウィルソンを思い出しました。
参考
風力発電とバードストライク 追記あり

幻想に揺蕩う

追記
TAKESANさんのご助力で検索してみたところ、このようなものを見つけました。

ケース解説 [放射線を正しく怖がっていますか?]

このようにどちらかと言えば国側でこのように発言しているケースもありますね。というわけでいるかいないかわからないというのは訂正します。それを割り引いてもなお、言葉の範囲が明確でないという部分は変わりませんが。

追記3/16
「正しく怖がる」というフレーズのもとは国立循環器病研究センターの説明によれば物理学者で随筆家の寺田寅彦氏だそうです。また、菊池氏でもないようです。僕の記憶違いで失礼しました。

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2 コメント

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質問です (やまめ)
2012-03-15 15:53:57
お題違いで申し訳ありません。
今話題になっている動画
宮脇 昭さんの震災の瓦礫を利用した「いのちを守る300キロの森づくり」についてお伺いします。多様な広葉樹を植林する宮脇方式なんですが、里山ではどうかな?と疑問に思っていました。
防災林の植林として多様な広葉樹を植栽すると生物に与える影響はどうなるのでしょう
返信する
やまめさん (梨(管理人))
2012-03-15 23:46:43
「いのちを守る300キロの森づくり」ですか。
一応、動画に目を通しましたが、ちょっとわからないことが多いですね。調べてからまたお答えするという形になりそうです。
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