先日、このような記事を読みました。その記事内の風力発電とバードストライクについての見解が非常に酷いので、バードストライクの説明(注:風車への衝突のみ)もかねて反論させてもらいます。なお、そのほかの部分については判断するだけの十分な知識がないので控えさせてもらいます。
いや、風力発電で起きるバードストライクで一番問題にされるのがワシタカ類の衝突ですから。たとえば、2008年に岩手県で絶滅危惧種であるイヌワシが風車のブレードにぶつかって死亡し、日本野鳥の会が岩手県に対し要望書を出しています。
先に引用した発言は無視して良い問題でないとしながらも、出てきた案が現実とかい離しすぎていて、これだけで碌に調べていないことがわかってしまいます。
風車近くにワシタカが近づく理由の一つに、風車周辺は餌となる小型齧歯類などが集まりやすいということがアメリカではあげられています。また、地形によっても衝突リスクが増大するようです(山の尾根、鞍、縁、急斜面など)。
鳥類だけが問題となるわけではありません。コウモリ類の衝突も問題となっています。コウモリの何が問題だ?と思われる方もいるかもしれません。日本には在来のコウモリは46種いるとされています。そのうち、レッドリストに入っているコウモリは31種(ⅠA~DDまでを含む)。つまり、そのほとんどが絶滅の危険性が高いとみなされているのです。日本の在来哺乳類が約100種ほどで、そのうちの3分の1を占めるコウモリのほとんどは芳しくない状況に置かれているわけですね。
このように、絶滅の危機が高い動物が風車と衝突する可能性が高いわけです。かの記事のブックマークでバードストライクについて指摘するコメントが多いという背景にはこういう理由があったわけですよ(一部尻馬に乗ったのがあるけど)。
さて、ここまで書いてきましたが、根本的なことがまだでしたね。そもそも、どうして鳥やコウモリに配慮しなきゃならんの?という疑問を持つ人もいるでしょう。それに対して梨の答えを書いておきます。僕らの生活というのはすべからく生き物に支えられています。食べ物はもちろん、大気の調節や木材も生き物がいないと成り立ちません。よく使う化石燃料にしても、植物が長い年月をかけてできたものです。それらを支えて作り上げてきたのが生物多様性です。生物多様性がなくなるということは、僕らの選択肢が狭まるということでもあります。極端な話、晩御飯のおかずは肉か魚かという他愛ない選択も多様性がなくなれば今夜はイモのみ一択ということになるんですよね。ワシタカにせよコウモリにせよ、生物多様性を作り上げてきた一員ですから、彼らが絶滅するようなことになれば、長期的に見て確実に僕らの選択肢は減りますよね。
今現在、人類というのは「生物多様性大破壊!どこまで壊しても大丈夫かな!?」というチキンレースをやっていますが、その限界点は誰も把握してないわけでして。ただ、絶滅や減少というのがその限界点により近づくことは明らかですから、できる限り避ける方が賢明ですよね。
引用した部分の問題点はこういうところにもあります。資源やエネルギーについて語っている人が生物資源の保護に対して無頓着ということでもありますから。バードストライクについての突っ込みといのは鳥やコウモリがかわいそう云々ではなくて資源保全どう考えてるの?という突っ込みでもあります。
風力発電について語ることそのものは咎めるつもりは無いのですが、あからさまに間違った現状認識で語られても誰のためにもならないわけですよ。余りにもリスク認識が粗雑なまま語られても困ります。ありていなことを言うなら、“やるなら真面目にやれ”といったところですか。
参考資料
国内における風力発電施設が与えた鳥類への影響の事例
レッドリスト 哺乳類
島田泰夫 2006「風力発電とバードストライク」生物科学第57巻第4号
バードストライク
追記5/15
コウモリについての部分を手直ししました。
訂正5/22
現在の日本のコウモリは亜種含め46種のようです(第三次生物多様性国家戦略参照)。ご指摘いただいたホルモン氏ありがとうございます。
追記6/9
ついに真打が登場しました。
「風車と翼 」
なぜバードストライクが問題視されるのか、その背景である生物多様性を守る意味とは何か非常に丁寧に書かれているので一読をお勧めします。
低周波問題やバードストライクはどうする?
この問題は決して無視して良い問題ではありませんが、原子力維持に伴う夥しい犠牲を無視したがる“現実的な”方々が強調したがるのはウンザリしますね。
中略
バードストライクに関して云えば、天敵である猛禽類の姿や声を流すだけで、近寄らなくなると思いますね。
いや、風力発電で起きるバードストライクで一番問題にされるのがワシタカ類の衝突ですから。たとえば、2008年に岩手県で絶滅危惧種であるイヌワシが風車のブレードにぶつかって死亡し、日本野鳥の会が岩手県に対し要望書を出しています。
先に引用した発言は無視して良い問題でないとしながらも、出てきた案が現実とかい離しすぎていて、これだけで碌に調べていないことがわかってしまいます。
風車近くにワシタカが近づく理由の一つに、風車周辺は餌となる小型齧歯類などが集まりやすいということがアメリカではあげられています。また、地形によっても衝突リスクが増大するようです(山の尾根、鞍、縁、急斜面など)。
鳥類だけが問題となるわけではありません。コウモリ類の衝突も問題となっています。コウモリの何が問題だ?と思われる方もいるかもしれません。日本には在来のコウモリは46種いるとされています。そのうち、レッドリストに入っているコウモリは31種(ⅠA~DDまでを含む)。つまり、そのほとんどが絶滅の危険性が高いとみなされているのです。日本の在来哺乳類が約100種ほどで、そのうちの3分の1を占めるコウモリのほとんどは芳しくない状況に置かれているわけですね。
このように、絶滅の危機が高い動物が風車と衝突する可能性が高いわけです。かの記事のブックマークでバードストライクについて指摘するコメントが多いという背景にはこういう理由があったわけですよ(一部尻馬に乗ったのがあるけど)。
さて、ここまで書いてきましたが、根本的なことがまだでしたね。そもそも、どうして鳥やコウモリに配慮しなきゃならんの?という疑問を持つ人もいるでしょう。それに対して梨の答えを書いておきます。僕らの生活というのはすべからく生き物に支えられています。食べ物はもちろん、大気の調節や木材も生き物がいないと成り立ちません。よく使う化石燃料にしても、植物が長い年月をかけてできたものです。それらを支えて作り上げてきたのが生物多様性です。生物多様性がなくなるということは、僕らの選択肢が狭まるということでもあります。極端な話、晩御飯のおかずは肉か魚かという他愛ない選択も多様性がなくなれば今夜はイモのみ一択ということになるんですよね。ワシタカにせよコウモリにせよ、生物多様性を作り上げてきた一員ですから、彼らが絶滅するようなことになれば、長期的に見て確実に僕らの選択肢は減りますよね。
今現在、人類というのは「生物多様性大破壊!どこまで壊しても大丈夫かな!?」というチキンレースをやっていますが、その限界点は誰も把握してないわけでして。ただ、絶滅や減少というのがその限界点により近づくことは明らかですから、できる限り避ける方が賢明ですよね。
引用した部分の問題点はこういうところにもあります。資源やエネルギーについて語っている人が生物資源の保護に対して無頓着ということでもありますから。バードストライクについての突っ込みといのは鳥やコウモリがかわいそう云々ではなくて資源保全どう考えてるの?という突っ込みでもあります。
風力発電について語ることそのものは咎めるつもりは無いのですが、あからさまに間違った現状認識で語られても誰のためにもならないわけですよ。余りにもリスク認識が粗雑なまま語られても困ります。ありていなことを言うなら、“やるなら真面目にやれ”といったところですか。
参考資料
国内における風力発電施設が与えた鳥類への影響の事例
レッドリスト 哺乳類
島田泰夫 2006「風力発電とバードストライク」生物科学第57巻第4号
バードストライク
追記5/15
コウモリについての部分を手直ししました。
訂正5/22
現在の日本のコウモリは亜種含め46種のようです(第三次生物多様性国家戦略参照)。ご指摘いただいたホルモン氏ありがとうございます。
追記6/9
ついに真打が登場しました。
「風車と翼 」
なぜバードストライクが問題視されるのか、その背景である生物多様性を守る意味とは何か非常に丁寧に書かれているので一読をお勧めします。
風力発電施設が猛禽やその生息環境に与える影響
http://www.d1.dion.ne.jp/~akaki_ch/windfarm.html
モーション・スメア~衝突は鳥の不注意ではない!~
http://www.d1.dion.ne.jp/~akaki_ch/motion.smear.html
モーション・スメアについては、環境省 釧路湿原野生生物保護センター内に自前で猛禽類医学研究所を営んでいる齊藤慶輔獣医師からお話を聞く機会が日本ワシタカ研究センター主催のセミナーでありましたが、バードストライクによるオジロワシの斃死体を検分するとブレードは上から当たっていて、やはり猛禽類にはあの邪魔とも言える巨大なブレードが飛行中に見えていないという結果だそうです。
発電用風車との衝突事故(バードストライク)
http://www14.ocn.ne.jp/~irbj/page009.html
シマフクロウのロードキルの話も興味深かったです。
また、
設置段階ではNEDOからの助成金で収支を合わせてある上、撤去費は考慮されていないのですよね。撤去にかかる環境負荷を考慮すると本当のところどうなのか。
自然公園法の基準改正についての検討会においても、いろいろ検討されていました。
国立・国定公園内における風力発電施設設置のあり方に関する検討会(平成15年度)
http://www.env.go.jp/nature/wind_power/index.html
NEDOの補助金対象外の小型で建物にビルドインのタイプであればまだまだ親和性があるのですが、件のブログの筆者はそんな考えはお持ちではなさそうな感じですね。
では、"ね"
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A2%A8%E5%8A%9B%E7%99%BA%E9%9B%BB#.E9.B3.A5.E3.81.B8.E3.81.AE.E5.BD.B1.E9.9F.BF
「窓ガラスに比べるときわめて低い数字」「ドイツでは1基につき年0.5羽」「英国王立鳥類保護協会が適切に設置すれば問題無いと表明」
これ読むと、現実的に解決できる問題なのでは?と思えてくるのですが、、。
高層ビルの方が断然死んでるとか、他の発電方法のが死んでるという話もあるんですよね。
http://blogs.yahoo.co.jp/zaqwsx_29/18425451.html
http://en.wikipedia.org/wiki/Wind_power#Environmental_effects
飼い猫(?)が殺してるとか。(これはちょっとプロパガンダっぽいページですが)
http://www.currykerlinger.com/birds.htm
特に風力を推すわけでもないのですが、、技術的にもうちょっと頑張れば許容できる問題なのでは、という印象を持っています。鳥を理由に風力発電そのものに反対する、ってほどなのでしょうか。
僕は反対とも賛成とも言っていないのですけれど。本当に言いたいことは最後に書いてありますよ。語ることは構わないけれど、現状認識はちゃんとしておいてねと。それができて初めて順位づけ(優先的~たいしたことないまで)ができますよね?
参考資料のレッドリスト(哺乳類)は亜種レベルで記載されています。たとえば、レッドリストにあるエゾホオヒゲコウモリ、シナノホオヒゲコウモリ、オゼホオヒゲコウモリ、フジホオヒゲコウモリの4つは全てヒメホオヒゲコウモリの亜種です。
なので、35種のうちのレッドリストに指定されている種はもっと少なくなるのではと思います。間違ってたら申し訳ありません。
こちらの記事がということではなく、世の中に流通する情報として、
* 窓ガラスや他の発電方法と比べて、風車による被害はどのくらい多いか。
* 被害の中に絶滅危惧種が含まれる割合はどの程度か。
* 日本は他国と比べて、絶滅危惧種が被害に遭いやすいエリアが多いのか。
* 既存の技術対策の有効性。
といった点が明らかになると「ちゃんとした現状認識」に近づける気がしました。
第三次生物多様性国家戦略(のP30)によると、レッドリストの評価対象種となっているコウモリ類は46種と明記されています。
http://www.env.go.jp/nature/biodic/nbsap3/pdf/mainbody.pdf
これは亜種を含めた数だと思いますが、今回の記事にある35種のうちの31種という数値は明らかに不適切で、46種のうちの31種と記述するべきだと思います。
些細なことをしつこく言って申し訳ありませんが、たまたま国家戦略を目にしたので追記させていただきました。
国家戦略の方でその値なのであれば、そちらの方が的確なのでしょうね。こちらの勉強不足を指摘していただいてありがとうございます。訂正しておきます。
すみませんが、それ、やったらどうなるか本当に考えたことありますか。その近くで4,5年お住みになられることをお勧めします。
あなたの嫌いな、棒T先生の上をいくのではないでしょうか?