ならなしとり

外来生物問題を主に扱います。ときどきその他のことも。このブログでは基本的に名無しさんは相手にしませんのであしからず。

皇居の蛍について(調べ中)

2010-03-13 20:08:21 | 保全生態学
 先日の記事の続きです。皇居周辺には昔ホタルがいたようですが、それははたして在来種で現在のホタル復活はそれらを踏まえた理のあるものなのか不透明でした。
今まで調べた中では、ここ5,60年の皇居周辺のホタルは在来のものがいたという証拠はなさそうです。それどころか人為的に持ち込まれた可能性の方が濃厚です。

献上蛍(ホタル)の追跡
>陛下も皇后陛下とお出かけになった。そして確かに自生しているのを確認された。はじめて池や小溝にシジミ貝を放たれてから10年振りのことである。皇居にはずっと以前は山吹の流れ(乾門の近く)に蛍が自生していたと語り伝えられていた。陛下は皇居の何処かに蛍をいつかせたいと念願しておられた。季節になると京都や岐阜、遠くは九州から献上される蛍があったので毎年御苑に放しておられた。しかし、いつも自滅していた。何とか自生できないかと事務官や侍従にも相談され、そして蛍の幼虫が寄生するというシジミ貝を池や溝に初めて放たれたのは昭和7,8年の頃であった。貝の放流は毎年のように続けられたが一向に成功の様子はなかった。

>ところが調べると赤い背中の中央に十字形の紋があるゲンジボタルではなく帯状の紋を持つヘイケボタルで体調も1センチでした。ゲンジの幼虫とカワニナを放していたのに、なぜヘイケが出たのか誰にもわからぬまま毎年少数のヘイケボタルが御苑に飛んでいたのです。

おそらくヘイケボタルが飛ぶようになったのは皇居にゲンジホタルを搬入する際に混ざったのではないかと思われます。江戸時代以前にさかのぼればともかくとして昭和時代にはすでに皇居周辺に在来のホタルはいなかったのではないでしょうか。こちらの文献のタイトルを見てもそう思います。

皇居にホタル飛ぶ--定着までの試み

定着と言っていますからもともといた可能性は薄いのではないかと。もちろんこの文献の中身を確認しないと説得力は低いですけどね。
 これらを踏まえて考えると、やっぱりあのホタル復活活動は問題ありという可能性の方が高いのではないでしょうか。そもそもホタルに関する問題をしっかりと知っている人なら在来、非在来について調べるはずですし、増殖という手段にも安易には踏み込まないでしょう。ヘイケボタルの繁殖にわざわざカワニナを持ってきていることからもこの方があまりそういったことを考えていない可能性を示唆しています。ヘイケボタルはサカマキガイなどカワニナに限らずそのほかの巻貝も捕食するホタルです。汚水にも適応するサカマキガイなど皇居周辺にいる可能性の高い貝がいるかどうか調べているならまだいいのですが、個人的な感じでは「ホタルの餌=カワニナ」としか考えていないように思えます。
ここまでの僕の考えをまとめると
・皇居周辺のホタルは人が持ち込んだものである可能性が高い
・ホタル復活の人が生態系のことを理解したうえでやっている可能性は低い
・出自の不明なホタルを復活させようとする意義は薄い
同じ種であってもよそから持ってくることの何が問題なのかは今書いている「遺伝的多様性に関する私見」シリーズの中でやろうと思います。

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