クマの食べ物になる植物は多いですが、とりわけ木の実は栄養価が比較的高いという点で重要な食べ物です。クマが食べる木の実には、大きく分けて2種類あります。一つはドングリ類。堅く詰まった実で、堅果と呼ばれます。もう一つは山ブドウのように水分が多くみずみずしい実。これは液果と呼ばれます。あとで述べますが、種子散布者としてクマが役割を果たしているのは液果です。堅果は量が多いためクマの主要な食べ物として重要な位置にあると言われています。
クマはまだ木にある時からドングリを食べます。木に登り、枝を引き寄せ、折り曲げ食べまくります。そのため、しばしば、木の上にクマ棚と呼ばれる大きな鳥の巣のようなものが出来上がります。
ドングリが地面に落ちると、イノシシやシカ、ネズミといった競争相手が増えるので地面にあるドングリはクマの口にそうやすやすと入るものでもありません。クマからみれば、質、量が同じなら木の上にあった方が価値が高いともいえます。
クマは食べたドングリをかみ砕いて消化するので、ドングリの主要な種子散布者とはなりえません。ドングリの種子散布に一役買っているのはネズミや鳥類です。液果の場合は種はかみ砕かれずに腸内を通り、糞として出てきます。液果はそもそも動物に食べられることを前提として実をつけ種を運んでもらうというわけですね。
さて、ここまで特に注意もなく「ドングリ」という言葉を使ってきたわけですが、ドングリというのは堅果類の一般的な総称であって「ドングリ」という種があるわけではありません。ドングリとひと口に言っても様々な種類があります。以下に少し例を紹介します。
ブナ タンパク質が多く栄養価が高い。数年に一度豊作になり、そのほかの年は凶作。
ミズナラ ブナより短いスパン(約2年)で豊凶作を繰り返す。
コナラ 細長い実をつける。古くから人間に利用されてきた木の一つ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5a/f0/f3976540e3b5a46cd1525db184123f2c.jpg)
クヌギ 実は大ぶり。樹液はカブトムシなどが利用する。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0f/d9/922979cf96c32ae5f9638a0e6e816839.jpg)
アベマキ クヌギと似ているが、樹皮がコルク質。
ブナは水量が豊かな地域に主に分布し、コナラやクヌギ、アベマキは里山の雑木林の代表的な樹種です。また、ここで覚えておいてほしいのは、ドングリは豊凶作を繰り返すということです。ここが重要な論点になってきますのでお忘れなきようお願いします。
ここまでドングリの種類について述べましたが、さらに種の中にも違いがあります。いわゆる遺伝的多様性と呼ばれるやつですね。植物みたいな移動手段を持たない生き物は地域間の違いが大きくなります。彼らにとっては数十キロの距離が人間にとっての日本とオーストラリアくらいの距離(実際にはそれ以上)のようなものです。ですから、その地域に生息していないドングリだけでなく生息しているドングリであっても、種が同じだからといってむやみに他所から持ってくるということは長い年月をかけて出来た生物の歴史を乱すことになります。
参考文献
ドングリの戦略 森廣信子著 八坂書房
森の分子生態学 種生物学会編 文一総合出版 第4章 ブナ集団の歴史と遺伝的変異
クマはまだ木にある時からドングリを食べます。木に登り、枝を引き寄せ、折り曲げ食べまくります。そのため、しばしば、木の上にクマ棚と呼ばれる大きな鳥の巣のようなものが出来上がります。
ドングリが地面に落ちると、イノシシやシカ、ネズミといった競争相手が増えるので地面にあるドングリはクマの口にそうやすやすと入るものでもありません。クマからみれば、質、量が同じなら木の上にあった方が価値が高いともいえます。
クマは食べたドングリをかみ砕いて消化するので、ドングリの主要な種子散布者とはなりえません。ドングリの種子散布に一役買っているのはネズミや鳥類です。液果の場合は種はかみ砕かれずに腸内を通り、糞として出てきます。液果はそもそも動物に食べられることを前提として実をつけ種を運んでもらうというわけですね。
さて、ここまで特に注意もなく「ドングリ」という言葉を使ってきたわけですが、ドングリというのは堅果類の一般的な総称であって「ドングリ」という種があるわけではありません。ドングリとひと口に言っても様々な種類があります。以下に少し例を紹介します。
ブナ タンパク質が多く栄養価が高い。数年に一度豊作になり、そのほかの年は凶作。
ミズナラ ブナより短いスパン(約2年)で豊凶作を繰り返す。
コナラ 細長い実をつける。古くから人間に利用されてきた木の一つ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5a/f0/f3976540e3b5a46cd1525db184123f2c.jpg)
クヌギ 実は大ぶり。樹液はカブトムシなどが利用する。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0f/d9/922979cf96c32ae5f9638a0e6e816839.jpg)
アベマキ クヌギと似ているが、樹皮がコルク質。
ブナは水量が豊かな地域に主に分布し、コナラやクヌギ、アベマキは里山の雑木林の代表的な樹種です。また、ここで覚えておいてほしいのは、ドングリは豊凶作を繰り返すということです。ここが重要な論点になってきますのでお忘れなきようお願いします。
ここまでドングリの種類について述べましたが、さらに種の中にも違いがあります。いわゆる遺伝的多様性と呼ばれるやつですね。植物みたいな移動手段を持たない生き物は地域間の違いが大きくなります。彼らにとっては数十キロの距離が人間にとっての日本とオーストラリアくらいの距離(実際にはそれ以上)のようなものです。ですから、その地域に生息していないドングリだけでなく生息しているドングリであっても、種が同じだからといってむやみに他所から持ってくるということは長い年月をかけて出来た生物の歴史を乱すことになります。
参考文献
ドングリの戦略 森廣信子著 八坂書房
森の分子生態学 種生物学会編 文一総合出版 第4章 ブナ集団の歴史と遺伝的変異
ナラ枯れは確かに問題ですが ドングリが 凶作などと ことさら大騒ぎするのは 問題が有りそうです。
熊は 神様だから守らなくちゃならないという文章をどこかで読みましたが 神様は 人間ごときの助けなんて 要らないんじゃないかなあ。
>クマはまだ木にある時からドングリを食べます。木に登り、枝を引き寄せ、折り曲げ食べまくります。そのため、しばしば、木の上にクマ棚と呼ばれる大きな鳥の巣のようなものが出来上がります。
>クマは食べたドングリをかみ砕いて消化するので、ドングリの主要な種子散布者とはなりえません。
>また、ここで覚えておいてほしいのは、ドングリは豊凶作を繰り返すということです。
>植物みたいな移動手段を持たない生き物は地域間の違いが大きくなります。彼らにとっては数十キロの距離が人間にとっての日本とオーストラリアくらいの距離(実際にはそれ以上)のようなものです。
どんぐりを運んではいけないことが、分かりやすく説明されておりありがたく思いました。
あげは さんの「熊は 神様だから守らなくちゃならないという文章をどこかで読みました」
私も熊森賛同者のブログで読みました。
http://blog.livedoor.jp/ikedakayoko/archives/51494187.html
ブナの実は「ドングリ図鑑」にこそ入っていますが、一般的なドングリとはちょっと違うと思います。
専門家たちは「ドングリやブナの実の凶作」と読んでますよ。
あげはさんへ
>ドングリが 凶作などと ことさら大騒ぎするのは 問題が有りそうです
こちらはどうしてそう思われたのでしょうか?
“大騒ぎ”かどうかは別として、ドングリやブナのみの凶作とクマの出没には相関があり、今年は凶作年というのは事実ですよ(解釈はひとそれぞれでしょうが)。
http://www.47news.jp/CN/201010/CN2010102301000071.html
http://web.pref.hyogo.jp/contents/000140140.pdf
(↑兵庫県の例。9ページ図10)
わかりやすいといっていただけて恐縮です。
さすけさん
>ブナの実は「ドングリ図鑑」にこそ入っていますが、一般的なドングリとはちょっと違うと思います
今回の参考文献ではブナもドングリとして扱っていたのでまとめて入れました。
りょーかいしました。
そもそもが俗称なので、どちらでも問題無いと思います。
続編、楽しみにしてますね。
私も大学で植生や生態学を学んでいたことから、今でも興味のある関連書籍を読んだり、近くの森を散歩し季節の変化を観察しながらストレス解消をしているところです。
以前から、熊森のドングリ撒きについては危うい印象を感じていましたが、最近の活動や発言を見ていると独善的かつ攻撃的な団体として成長していることに危機感を持っています。
彼らのドングリ撒きは、研究者などから遺伝子攪乱の行為として批判を受けていましたが、最近の研究では、それ以上に森林を衰弱させてしまう危険な行為であることが明らかになっているようです。各地でブナなど広葉樹植林が進められているようですが、広葉樹の苗木は生産地が少ないことから、もとの環境とは大きく異なる地域に送られたため育ちが悪くちゃんとした森林に育っていない状況があるそうです。さらに悪いことに外部から持ち込まれたブナと、もとから生えているブナの遺伝情報が混ざってしまうと脆弱なブナの森林になってしまうとのこと。これは「外交弱勢」と呼ばれる現象だそうです。
熊森のドングリ撒きは当然として、最近のエコブームで植林ボランティア活動によるブナやミズナラなどの広葉樹植林が進められていますが、これら善意の活動が、結果として自然環境に深刻な影響をもたらす危険な行為であることが指摘されています。行政や専門家は、このことを声を大きくして早急に知らしめるべきと思います。
・ブナ林 植樹で弱る:http://www.yomiuri.co.jp/eco/ryokuka/ryokuka090402_01.htm?from=yoltop
・地域遺伝子資源研究の現状と地域性種苗のあり方:http://www.crrn.net/sympo050723/yumoto.htm
・産地別ブナの成長差異:http://www.pref.niigata.lg.jp/shinrin/rin_nii_200706.html
因みに、林業用苗木について調べてみると、法律で配布区域が制限されているようです。(スギ7地区、ヒノキ3地区、アカマツ3地区、クロマツ3地区)広葉樹苗木の配布についても早く制限を設けてほしいところです。
これはこれで単体で記事を書きたいですね。
1、環境に良いと思って風車を立てた。
2、しかしそこは雷が多く発生する場所であった。(落雷で風車が何度も破壊)
3、風が想定より吹かず、発電しない。(事前の調査がずさんだった)
4、現在はほとんど稼働していない。
5、多額の借金(無駄遣い)と環境破壊が残った。
一応、調査は行っていたようですが、全くずさんだった訳ですね。
一見、環境によい事のように見えても現実(真実)は違っていたということなんですが、熊森がやっている事はこれと同様で、皮肉にも「木を見て森を見ず」ということだと思います。
綿密な調査こそ大切です。それをすることが「実践」ということでしょう。
農作物よりもドングリを優先してくれるのは人間にとっても熊にとっても幸運ですね。
しかし、これが変な活動に繋がってしまうのは残念です。凶作の年でも生きていける数がその森のキャパだと思うんですが。
平成22年秋季のヒグマ出没予想http://www.pref.hokkaido.lg.jp/NR/rdonlyres/B794F50A-00FD-4A3D-85AE-7F16712491EC/0/H22Fall_Bear_forecast2.pdf
>しかし、これが変な活動に繋がってしまうのは残念です。凶作の年でも生きていける数がその森のキャパだと思うんですが。
実際問題、それが本来の彼らの環境収容量だと思うのですけどね・・・。熊森の場合は個体の命優先ですので、あのような捻じれた行動になるのではと考えています。